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伝説の始まり

なんだかんだあって3歳になった。俺はかねてからやろうと思っていた、剣と魔法の練習をさせてもらおうと思い、パパに提案する。


「パパ。アリス、剣と魔法したい。教えて」

「いいぞ、いくらでもやると良い。ほら、禁書の魔法大全だぞ。今までの勇者の魔法とかも載ってるから見てみると良い」

この人大丈夫だろうか。いま、魔法で一瞬のうちにこの禁書取り出して来たけど。あと、パパは何を考えて禁書を3歳に与えているのだろう。バカだろうか。


でも、魔法を知れるのは嬉しいので「ありがとう、パパ」と甘えておく。父上がだいぶ親バカであることがわかった。魔法見てたらパパがママにめちゃくちゃ怒られるのが見えた。


取り上げられる前に前の方のページからめくっていく。難しい単語もあるけど、魔法は絵本でも読んだのである程度わかる。なんで、挿絵付きなんだろう。もしや、パパまた何かした?


実は、この前にも凄いものを渡された。この国の地勢と今までの名君と言われた人々の治め方が書かれた本を挿絵付きにして渡してきたのだ。おかげでかなり難しい言葉を(よわい)3つにして覚えることになった。


そして、魔法も覚えたけど、ママからスキルなるものがある事を聞いた。パパが禁煙できたのも、ママが怒ってスキルを使ったかららしい。ママのスキルは『禁煙』といって煙を消す事ができ、無効化も可能、更に対象者に煙草を吸わせないという効果もある。


パパの場合は3つ目だね。この世界の子は成熟が早いのか、それともパパが早期教育したいからなのか、私のスキル解析をする祭りがある。他の人もするらしいけど。


最近騎士団の人と仲良くなってきたからよくお話をしてる。そのお祭りが今日あるんだけど、私まだ3歳だよ。って思った。


お祭りではパパがスキルを解析して、それを発表するみたいな感じらしい。パパ『持続可能な開発目標』というスキルを持っている。ちなみに読み方はサステナブルディベロップメントゴールズらしい。いや、絶対転生者。


どんなスキルだよ。17の目標と結構な数のターゲットで構成されそうなスキル名だ。おかしいなぁ。もちろん、私はパパがもう1つスキルを持っていることを知っている。


騎士団の方が教えてくれた。それが、『喫煙所』らしい。この世界を考えた神様は何を考えてこんなスキルを?と愚痴を言いたくなってしまう。


私の前にいた男の子は『料理』だった。周りから、男の癖に『料理』かよ。と偏見に満ちた声が聞こえる。私は、その子に「気にしなくていいよ。お料理できるのって生きて行く上で大事だからね。いいスキルだよ」と話しかける。


その子は「そ、そうなんだね。俺頑張るよ」とやる気に満ちあふれていた。その子のほっぺが少し赤かったのは暑かったのかな?冬だけど。


いよいよ私の順番が来た。私は緊張したけど、パパが「心配しなくても、きっといいスキルだよ」と言ってくれて緊張が解れた。


で、肝心のスキルが『禁煙』だった。それを見たパパの反応は「絶対勝てない奴だー」みたいな反応をしてて、だいぶショックを受けていた。『剣神』とか『魔法神』とかのスキルならパパが蹂躙できるけど、私のスキルはパパ特効だ。私の可愛さとスキルを持ってするとパパもイチコロだ。 


仲良くなった騎士団の人達も反応が2つに綺麗に分かれていた。タバコ吸う人からは「やめてくれよ」みたいな反応だったし、吸わない人からは「いいぞ、もっとやれ」だった。


あと、『持続可能な開発目標』も持っていた。いや、あの、スキルってもっと、こう、『剣神』だったり、『魔法マスター』だったり、聞くところだいたい似たようなスキルだったのに、私と『料理』の子だけ、変なスキルだなぁとこの時は思っていた。


次の子は女の子だった。さすがにもう変なもん来ないだろうと思っていたら、『裁縫』と『洗濯』だったため、その子も「女らしくていいな」とか「女は家で裁縫してればいいんだよ」とかすごく偏見に満ちた事を言われていた。


私は「冒険に大事な服のことを任せられるから凄く重宝するスキルだよ」と慰めておく。ちなみに、パパが忙しいのは最近よく、勇者なるものが遊びに来るかららしい。で、その時に勝った魔王であるパパが装備をもらっているらしい。物置いっぱいだったのってそういうことだったの?


そして、もう一つ気付いたことがある。提出物遅れまくっていた私が、計画的に勉強したり、遊んだりできたのは『持続可能な開発目標』というスキルのおかげだったようだ。開発って能力の開発も入っているのか。


もしかしたら読み方でサステナブルディベロップメントゴールズだから、ディベロップの別の意味である発展も含まれるのかもしれない。無理なく続けられているのもそういう事かもしれない。


ちなみに今の目標はなるべく早くパパより強くなりたいという目標だ。だから、毎日木刀を振ってるし、ごく小規模の魔法と超大規模魔法の両方を練習している。


ごく小規模の方はパパの『喫煙所』スキルの外側から騎士団の人の電子タバコを起動させること、超大規模の方は、一つの街の計画停電だ。


改めて思う。3歳でこれしてるのおかしくない?始めての時は自分の部屋の電気を消すのも難しくてできないかった。でも、毎日少しずつ電気を消す部屋を増やしていくとできるようになってきた。


今では、毎日5時になると全部のシステムを落とさなきゃいけないってなって、その仕事は私の仕事だから最近は片手間でできるぐらいにはなっている。パパ呼んでいわく、『強制定時退社システム』らしい。


ちなみによくパパのところに勇者と呼ばれるものが来るけど5時に強制退社システムを私が行っているので、勇者が来ても、電気はほとんどついてないので夕方に来たやつの叫びがたまに聞こえる。

  

電気がついてなくても戦えるけど、勇者からしても暗闇の中で戦うことはリスクにしかならない。ちなみにパパは夜でも戦えるようにと魔力を感じる方法とか、気配で攻撃できる方法とかを簡単な遊びの感覚で練習させてくれた。ちなみにママもスキルの使い方を教えてくれている。ママに火の初級魔法ファイアーボールを打つと、たばこ1本で無効化された。意味が分からない。そもそもママはタバコ吸わないのになんで持ってるんだろう。ちなみにママから積極的に攻撃はしてこなかったけど、攻撃を当てるのさえ難しいほど早かった。


4歳になった。お友達と遊びなさいと、魔界幼稚園に入れられた。パパとママから離れるのは嫌だったけど、お友達と遊ぶのも楽しみになってきた。ちなみに離れるのが嫌な理由は私が届かない次元にいる親の指導を受ける時間が減るからだ。でも、遊びの中で社会性や道徳などを学んでいくこともあるので、遊ぶことも重要なのだ。


遊びは想像力と創造力も育んでくれる。ピアジェの前操作期にいる私と同年代の子は、自分のイメージを使って物事を認識できるようになってきた段階だろう。俺はどちらかと言うと保育士さんの目線で、魔法を教えてあげようと思った。


せっかくなので、小さな3つの山と小さな人形を土魔法で作り、位置を変えながら「どう見えると思う?」と問いかける。まだ難しいのか、「見えない」とか「わからない」と言いながら実際に動いて見ている。


ちなみにその遊びを一緒にしているのは、この前『料理』スキルを見出された男の子と、『裁縫』スキルと『洗濯』スキルを見出された女の子と私だ。男の子の名前はブレイズ=ボイルドフィラーで火の四天王ファイアの息子で、女の子の名前はソラ=サファイアランドリーで水の四天王アクアの娘らしい。


「アリスってきれいな髪してるよな。ものすごくきれいな金髪だ。目も緑でものすごく可愛い」

「ねえ、ブレイズ。私は?」

そういってソラが詰め寄る。ブレイズは困った顔をしながら「水色の目も髪もきれいだよ」と返していた。周りの子たちは私たちのことを仲良し3人組と呼んでいるらしかった。


私はそんなに目立ってないと思う。ちなみにお家に帰るとすぐにママとパパによる恐ろしい勉強の嵐である。基本的に2週間たつ頃にテストがある。だから、習った事を何度も復習する。4歳では全然わからなかっただろう。ここでも前世で勉強したことが生きている。やっていることは前世のテスト勉強と変わらないのに、なぜだろう、全然しんどくない。多分ママは今の実際の国費のデータを使って、足し算や引き算、自分ならどこを削るかを考えさせたり、その削ったところを何に回すかを考えさせたりしてくる。


パパはそれが実行可能か、それとも不可能なのかを教えてくれる。もちろん市井(しせい)に買い物にも行ったり、そこで実際に計算させたりさせてくる。そんなこんなをしながら、難しい本を図書室で読んだり、パパとママに鍛えられたりした。


なんだかんだ数年経って、12歳になった。わかっていたことだけど、全然体が違ってきた。胸はちょっと大きくなってきたし、ホルモンバランスが崩れてイライラする日も増えた。小さい頃はパパとお風呂に入ってたけど、ちょっと恥ずかしくなってきた。


3歳の時から続けていた定期的な計画停電は指先1つで無詠唱が可能になっていた。10歳になると、剣術だけで四天王最強のママに勝てるようになった。だから、「旅に出たい」と言ったらパパが「危ないから、やめておきなさい」と反対して来た。私はパパの考え方に理解を示しつつ反論する。


「それって私と言う跡取りがいなくなるから困るだけなんでしょ?」

「そうじゃない。まだ早いと言っているんだ」

「私、ママに勝てるんだよ?ママより強い人いるの?」

「パパがいる。それにまだ心が育っていないだろ。騙されたらどうする?」

「私は賢いでしょ?騙されるわけなんてないから」

「収入に騙される人だっているんだぞ?魔界で闇バイトが問題になっているのを知らないのか?」

「しってるよ。もういい。今日はパパとご飯一緒に食べたくない」


そういって自室にこもる。言いすぎてしまった。心は成熟しているはずだ。それでも更年期に近づいた俺の心は自分とは異なる正義を許せなくなってきていた。しかもメンタルが体から影響を受けて思春期の心も来ているのだ。転生して、もう十数年。天才児ともてはやされているのに無双するチャンスがなかなか来ない。早く冒険がしたい。どうしたらいいかわからなくて同い年のブレイズにどうしたらいいだろうと話す。


ブレイズは無口だけど、まくし立てる私に「そうか。辛いよな」とただ寄り添ってくれた。燃え盛りそうな名前をしているのに静かでかっこよかった。魔法はもちろん最強になってきた。どうしよう。強くなりすぎた。このままでは私は負けないかもしれない。まあいいや。最近ソラのおっぱいが大きい気がして、成長速度が違うことだけが私の心を不安にさせてくる。


ソラがブレイズと一緒にいると少しもやもやする。胸のコンプレックスだろうか。他のところで負けている気はしない。でも、ブレイズがもし恋愛的な意味で好きなのだとしたら、友達の幸せと自分の気持ちのどちらを選ぶのか整理しなくちゃいけなくなる。


ソラには沢山の男の子が寄ってきている。きれいな水色の髪に水色の瞳、たわわに実った果実が魅力的なのだろう。小さいころからずっとそばで「アリスってかわいいね。勉強もできるし、魔法も剣も強いし。私じゃ勝てないかも」と言ってくれていたのに。ブレイズはどっちが好きなんだろう。


パパと喧嘩して言い過ぎたと思った私は「お父さん、ごめんなさい。3年ぐらいしたら旅に出ていいかな?私も外の世界を知らなきゃいけないと思うの」と提案する。


パパは「わかった。こっちもすまんかった。男にはわからんこともある。ブレイズと行違ってしまうこともあるだろう。その時は深呼吸をして一回離れなさい。冷静でない時に言った言葉が取り返しのつかない傷になることもあるからな。俺が鍛えてやる。3年間みっちり修行を付けてやるから覚悟しろよ」と張り切っている。


あれから怒涛の日々が始まった。学校で勉強して帰って来て勉強をして魔法の練習をして、ママと一緒にスキルの使い方を学ぶ。パパが適当に出した煙草に対して、スキル『禁煙』を掛けて吸えなくしようとする。ママがやるとパパの『喫煙所』を無効化できていた。私は、まだできない。でも、私はスキル『持続可能な(サステナブル)開発(ディベロップメント)目標(ゴールズ)』で最適な魔力の使い方を導き出しながら戦う。


でも、パパも同じスキルを持っているため、単純な技量の差で負ける。そんなことを繰り返して、2年後にはパパに勝てることも増えてきた。いよいよ、俺の無双物語が始まるのだ。


楽しみだ。



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