アリスのいない魔王城では
一方アリスが旅立った後の魔王城では。
「アリスから手紙が来ん。アリスは元気なのか?風邪とか引いてないか?心配だ」と酒を片手に政務を行う魔王を見て、ブレイズが「アリスって愛されてるよなぁ」と言うと、「まぁ、この数年で『お嬢』と呼ばれるようになるくらいだもんね」とソラも返す。
その政務の間にアリスの母が来た。
「ら、ライト何しに来た?酒なら持っておらんし、タバコも吸っておらんぞ」
「あら、魔王様。では左手に持ってるのは何かしら?お水かしら」と言いながら少しずつ近付いて来るライトに動揺して「そ、そうだ。水だ。飲むか?」と返す魔王。
この場にライトに逆らえる者は居なかった。
「今日、1月16日って何の日か知ってます?」とのライトの問いに答えられなかった魔王。
「『禁酒の日』らしいですわよ?人間界ではお酒やめる日らしいですよ?『禁酒』しておきます?」
「やめてくれ、アリスに会えん寂しさを酒で紛らわしてたんだ。白状する酒だ。だから、酒を断つなんて薄情なことはやめてくれ」
「そう。なら、お手紙でも書けばいいじゃない。酒である必要ある?」とピキピキと音がなりそうな形相で近寄るライトに魔王はタジタジだった。
天下の魔王様でも逆らえないものがある。それが妻であるライトである。
「そういえば、政務のほうはお進みですか?魔界領の税金の去年度収支の公表まだできてないようですが?」
ライトは厳しいのである。
「あ、そういえば、給料日まであと1週間ぐらいですよね?もう計算終わってます?」とソラも返す。
魔王城では何故か女の人の権力が強い。というよりも、同じ土俵に立つと、なんとなく遠慮してしまうほど、男連中も優しいのだ。
「あ、終わってるぞ。もうできるからな。さて、アリスに手紙でも書くか」
魔王様は優秀である。すぐに終わらせることができるから。さて、そんな優秀な魔王様でも頭を悩ませる事がある。それこそが、アリスへの手紙である。
「とりあえず、こんな文面でいいか。いや、「心配だ」より「顔見せてくれ」の方がいいか?いや、「友達できたか?」の方がいいか?どうしよう。転移で会いに行きたいけど、アリスの邪魔はしたくない。でも、心配だし、アイツが強いのは知ってる。でも、やっぱり寂しいし、会いたい」
「天下の魔王様もアリスお嬢とライト奥方様には勝てないんですね」とソラが面白がっている。
「『禁酒』」
ライトが空間にスキル『禁酒』を付与した。
「あ、ちょ、やめ。解除してくれ。せめて酒でも」と懇願する魔王様に「だめです。ここ数日ずっと飲んでるでしょ?アリスに嫌われますよ」と返すライト。
そう言われてしまっては、さすがの魔王様でも困ってしまうのである。




