緋色、献上願望
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
吸血シーンあるので、R15です。
古城の一室、赤と橙に包まれた部屋。真上には古風なシャンデリア、壁には主の肖像画が飾られている。今は城の主と夕食を囲んでいる最中だった。
眼前の長細いテーブルの上には、分厚いローストビーフ、丸こいパン、ボルドーのワインが所狭しと並べられている。コースとは一体何なのか。これはマナー違反では無いのか。等々、余計な事を考えながら、肉を口に運ぶ。
声を掛けたのは城の主。上質な衣装を身に纏い、艶のある長髪の毛先をリボンで止めている。血がざわめく程の美人だった。だがここまで気持ちが掻き乱されるのは、何もそのご尊顔のせいでは無い。その顔に嵌った深紅の双眸にあった。並んだ料理に目もくれず、淡々と食事をする私を延々と眺めている。
「美味しい? お嬢さん」
「えぇ、とても。でも一杯ですわ」
胃の中も、貴方の視線も。もう十分過ぎる程。
私は口に運んだフォークを皿の上に置き、ワインを一口。渋くて苦くて、全然合わない。やはり得意じゃない。
顔を顰めないように気をつけて、視線を逸らさない彼と目を合わせる。双眸の輝きは先程よりも増していた。
「貴方は戴かないの?」
「口に合わないから」
そう言うと立ち上がり、私の元へ。さり気なく背後を取ると、徐に顔を近付ける。開かれたデコルテに顔を近付けて、口を寄せに掛かる。
慣れないワインのせいであろうか? それとも、城の主との距離感が近いからだろうか? クラクラする。食事時だと言うのに行儀悪く瞼が重くなって、そのまま眠ってしまいそうだ。彼はそれを咎める真似はせず、ただただ優しく髪を撫でる。何かを言ってる。でも……頭が回らない。
「私の食事はこれからだよ」
催眠が効き始めたのだろう。淑女は椅子に凭れたまま、寝息を立てていた。その無防備な姿と言ったら……。全く愚かで可愛らしい。
私は口を開く。人よりも遥かに大きく長い犬歯が、シャンデリアの光に当てられて、真珠色に煌めいた。それを躊躇う事無く首筋に突き立てると、そのまま隙間なく埋め込んだ。一度引き抜く。とろとろと溢れ出た血を啜る。
「んっ……んん……ぐ」
久しぶりの食事。獲物が動かぬ様、二の腕を抑える指に力が籠る。あぁ、逃がしてはあげない。
私が二の腕に不自然な内出血を発見したのは、夢から醒めて風呂に入った時の事。くっきりした線を描いた斑模様。だから眠る前に願掛けの様に呟くのだ。
「また、お会いしとう御座いますわ……。蕩ける光の中でディナーを共にし、逃げられないように抑え付けられ、吸血されとう御座いますわ」
知らぬ内に怪我してるんですよ。
ビビりますよ。自覚ない怪我って。
痛いの嫌だから、痛くない怪我なら許せる。
とか昔言ってた人間。普通に怖いからな!? 過去の私。
まぁそんな私の腕の内出血から始まりました。自覚なし。
BGM聴くと、こんな空間の空気吸いたいなー。と思って書き始める人間です。
故にふわっとした空気だけの話になりました。
好みだといいですね。吸血されるなら。
好みじゃないと暴れますよ。私。