第三章 第十六話
えぇーーー!?
狐様から、想像の斜め上の返答がキターーーーー!!
アリスの先祖が狐様の分体!?
……ってことは、狐様はアリスのご先祖様ってこと!? ここに来て更に変な設定が増えて、頭がパンクしそうだわ……ってか、狐様って一体何者なんだよ、まったく。
「「…………」」
「何を黙っておる、優記よ」
いやいや、それはあなたのせいですよね?
アリスなんて、狐様の言ったことの内容が頭で理解出来ないって顔をしてるぞ? あ、こりゃしばらく復帰出来そうもないな。だって明後日の方向見て口パクパクさせてるもん。
「……いや、なんかいろいろ有りすぎで、頭がオーバーヒートしてたよ。それにしても狐様って、あっちでもこっちでも、ちょっとやらかし過ぎじゃない?」
「売女みたいなものの言い方をするでない。なに、どれを取っても妾は、無駄な事は何一つしておらぬわ」
……ほんとかなぁ?
それにしても、狐様が言う分体ってマジで何なんだろう?
たしか狐様が言うには、分体ってのは自分の分身みたいなものだけど、意識や経験はその分体自身のもの……って感じだったよな? 結局、近しい身内みたいな感じなんかな? 双子とかの関係に近いとか? ……うーん、よくわからん。
あれ? それにしても、うちの家系の呪いについての分体の事は、前に少し語ってくれてたからなんとなくわかるけど、アリスの先祖が狐様の分体ってのはなんでなんだ?
「……なんで?」
「疑問の全文を端折るではない。まぁ、その小娘の先祖が妾の分体だったのは、たまたまじゃ」
いやーん、凄い超能力者でこわーい!
……って、たまたまってなんだよ!? イントネーション間違えたら、かなり卑猥な言葉だよ?
「いやいや、たまたまで片付けるにしては偶然が多すぎやしないか? だってアリスはこっちに来てからの初めての仲間だし、それに異国の公爵令嬢だし、極めつけは聖女候補なんだぞ!?」
「ふん。たまたまはたまたまじゃ。まぁ、お主らとその小娘に縁が出来るとは偶然にしては出来すぎかもしれんが、恭太郎との出会いから遡れば今さらじゃがの」
え? そこで恭太郎が出てくる話の内容なの?
なんか、これって言葉にするとどういう単語だったっけな……そうそう、
「運命ってこと?」
「くすっ。そうじゃな、今思い返してみても、さしずめ運命的なものに妾と恭太郎は結ばれていたのかもしれんな。なかなか、乙な事を言うではないか、優記」
狐様に初めて誉められたかも!
「恭太郎……俺のご先祖様も絡むんなら事の成り行きを少し聞いても良い?」
そろそろ、自分に関わることは全部聞いておきたいよな。いつまでも曖昧なままにしてていい内容じゃないし、いい加減うちの家系の事や、狐様が一体何者なのかも知っときたいし、最終的に狐様が何をしたいのかも知る必要がある気がする。
「いつにもなく、真面目な顔をしおってからに。そういう緩急の付け方は本当にあやつに似ておる。そうじゃのぉ、今回の時間はその事について語るとするか?」
……ついにうちの家系の事の発端が聞けるのか!? ってか、今、俺と狐様だけしか会話してないけど他の三人は一体何を……って、アリスもカイダさんもいまだに呆然としてるやん! カイダさんに関してはアリスとは違うベクトルの精神的なショックのせいだろうけど。グリスさんはいつの間にかその二人を庇うように盾を構えているし……狐様に向かってね! いやいや、グリスさん。このお方は敵ではありませんよ、多分ね!
「うん! お願い!」
「……あいわかった。七海の意識が戻るまでに全てを語れるかは分からぬが、お主に……いや、お主達一族にまつわる核たるものじゃ、絡まる糸をほどくつもりで語るとするか。……そうじゃのぅ、恭太郎との最初の出会いは、お主らの世界であやつがまだ今のお主よりも幾分か幼かった時の事じゃ……」
ーーーそういう語り口で、狐様は淡々と言葉を紡いでいったーーー




