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第三章 第十五話

 くそっ、俺のラッキースケベはともかく、七海(クラマ)がどのくらいこの場に留まって居られるか分からないから、前回の(てつ)は踏まずに簡略化して、今、疑問に思っていることを淡々と聞いていこう!

 と、その前に……


「アリスは気を失ってるみたいだけど、大丈夫なの?」


「うぬを(はた)いた鉄扇の音で目覚めておるわ」


 あぁ、それなら良かった。


「あと、七海の意識は今のところ眠ってる感じなの?」


 確か、一つの体では、二人の意識が両立は出来ないんだったよな? ……多分。


「妾の中でうぬの事を軽蔑しておる」


 え!? いやいや、それならあんた、出てこれないんじゃなかったの!? 絶対うそですやん、それ! ってか、そうでないと七海にさっきの言い訳に困りますよ、僕……


「うぐっ……こ、今回はどのくらいの御滞在で?」


 と、とりあえず話題をかえないとね!


「七海の意識がそろそろ戻りそうじゃし、妾も余力を残しておかないと、この間の様にうぬらを悩ましてしまうでな、あと少しと言っておくかの」


 ほら、やっぱり七海の意識、戻ってないじゃん。狐様(クラマ)って、息を吐くようにSっ気出してくるやん。こわいよ、僕……

 それに、前回の子狐のクラマがグッタリした一件は、確かに大変だったし、すげー心配もしたけど、その事があったからアリスとも仲良くなれたし、ギルマスとの縁も出来たから不幸中の幸いってとこかな?

 

 ってか、それより今一番聞きたいことはこれ!


「じゃあ、完全復活まではどのくらいになりそう? 俺達、そこそこ魔物や獣を倒して、クラマにエネルギー? ……的なものを、結構お布施してたと思うけど……」


 魔物はともかく、倒した獣にクラマにとって復活に必要なエネルギーがあったとはあんまし思えないけど、それでも『きゅーーー!!』とかいって何やら吸いとってはいたみたいだけどさ。


「まぁ、うぬらがチマチマと小物を狩っていたお陰であのままいっておれば、後、半年ぐらいだったのかもな」


 おいおい、いくら狩ったのが小物ばっかりだったとしても、結構俺ら狩りましたよ!? ってことは、完全復活にはかなりのお布施が必要なんすね!? 昔のアメ車ぐらい燃料が必要やん!? まぁ、知らんけど。

 うん? それに、『半年ぐらいだったの()()()』って、過去形じゃね?


「え? ってことは?」


 もしかして……


「今回の一件のせいで、また振り出しよな」


 あぁ、やっぱり。


「ガックシ……」


「……とは言うても、半年にもう一月足した様なものじゃ、大してかわらん」


 確かにまだ俺達は、一月(ひとつき)ぐらいしかパーティーとして行動してなかったわ。まぁ、微々たるものか。まぁ、俺達なりには頑張ってたんだけどね。

 あれ? それより今のやり取りで少し疑問が沸いてきたぞ?


「確かにそうだけどさぁ……あ、そういえば、子狐の時の意識とか記憶ってやっぱりあったりとかするの?」


 そういや俺、狐様(クラマ)が子狐になってからも、かなりのDVを受けて来たからね? 覚えてませんじゃ警察はいりませんよ?


「今、思えば……というやつじゃな。人で言えば幼子の頭の出来じゃ。この状態になって初めて()()出来る、といった感覚じゃな」


 相変わらず言い回しがムズいんだよなぁ、この狐様。でも、やっぱり今までのことは、把握済みってことで理解していいのか? ……うーん。それはそれで、これからの自分の態度や失態を想像すると気が重い。


「そ、それと……」


 こういう時はどんどん話題を変えるに限るぜ!


「……無理して間髪入れて会話をするではない。別に妾や七海はうぬの醜態を怒ってはおらぬ」


 さ、さっきのは醜態とまでの事じゃなくね!? ただ、少し空気が相変わらず読めなかっただけというか、なんというか……もごもご。


「あぅ……」


「ふん。いまさらじゃしのう」


「ぐふっ!」


 やっぱり、狐様には相変わらず、誤魔化しが効きせませんでした。やっぱりこれから説教なのか……トホホ


「ね、ねぇ! ちょっと話の途中で悪いんだけど、その子は君んとこのパーティーの子よね!? 前にチラッと見た時とかなり印象が違うんだけど、一体全体、どういう事なの!?」


 おぉ! ここでセクシー魔女、カイダさんからの助け舟きたあぁぁーー!!


 ーーギロッ


「黙れ、肉壺」


「ひ、ひぃぃ~~」


 こ、こっわ! っつうか、舟が一発で撃沈やん! ってか、狐様、やっぱりさっきのラッキースケベの事、いまだに怒ってますやん!? それも矛先が俺にじゃなくてカイダさんに向かってチラチラさせてるやん!? それに、七海のかわいいお口から、そんなとんでもない蔑称を聞きたくなかったんですけど! ってか、肉壺ってなに!?


「……な、ナナミなの……か? いや、ナナミはそんな人を傷付けるようなことは……絶対にいわない! お、おまえは一体何者なんだ! ボクの、ボク達のナナミを何処にやったんだ! 返してくれ! ナナミはボクの大切な友達なんだ!」


 おぉ! アリスよ本当に目覚めていたのか!

 いやいや、それよりもアリスのその気持ちは痛いほど分かるけど、世の中にはTPOってものがあるじゃん? それが途轍もなく"今"なんですけど!


「ほぅ、小娘。妾に楯突くというのか?」


 あぁ、ほらね? この後俺はどうしたらいいんでしょうか? ここは、()繋がりでグリスさんの後ろに隠れちゃおっかなぁ……


「あぁ! ナナミの為になら、ボクはこの身滅びようともあなたになんか屈しなんかしない!!」


 もう、聖女飛び越えて勇者やん!

 なんかアリスの勇姿に涙が出そうだよ、俺……


「くすっ」


 え? そこって笑うところですか? まぁ、かわいいんだけども。


「な、ナナミみたいに笑ったからって、ご、誤魔化されないんだからな、ボクは!」


 ちょっと、(ほだ)されてる気がするけどな。


「やはりあやつの血筋じゃのぉ。妾の身から顕現したとはいえ、余りにも妾と性格が似ても似つかなかったからのぅ。面白いものが見れたわ」


 え? 今なんか、さらっとトンデモ発言してませんでしたか!?


「えっと、どういうこと?」


 聞きたいような聞きたくないような……まぁ、聞いちゃったけどさ。




「なに、この小娘の先祖が、妾の分体だったと言うことよ」




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