第三章 第六話
ちょっと話が長いです。
「……そんでお前らは、晴れて冒険者の仲間入りを果たしたってぇーわけだが……ここいらで一回、仕切り直しておくぞ?……今さらだが、俺はトラン支部のギルドマスターをやってる『アルベルト』っつーもんだ。もう昔の話だが、俺はあちこちで活動してきた、元A級冒険者だ。まぁ、その冒険者時代に、良くも悪くもいろいろあってなぁ……今では縁も所縁も全くなかった、この"トラン"で冒険者ギルドのギルマスっていう、ガラにもねぇーことを何故かしてるってわけだ。そんでここからが本題なんだが、俺は立場上、ギルマスとして新米のお前らに冒険者の心得みたいな事を言わなきゃなんねぇーんだ。だがよぉ、"さっきのドタバタ"のせいで、それ以外にお前らに言う事がちょいと増えちまってよぉ、勘弁してほしいぜ、まったく。……おっと、その前にお前らに"肝心な事"を聞くぞ?…………まずはお前ら……名を名乗れや!……なんだぁ?坊主だの、黒髪の嬢ちゃんだの、白髪の嬢ちゃんだの……面倒くせぇーったらありゃしねぇーだろぉが!!」
……うお!?いきなり会話の終わりの方で、声張んないでくれる!?ビックリするじゃん!
それになんだよその"面倒くせぇーったらありゃしねぇー"ってのはさ!
そんなん急に言われても、あんたが勝手に"そう"呼んでただけでしょ?としか、言えないよ!?
つーか、俺達の名前はさっきの履歴書みたいなヤツにも書いたし、今まで何回もお互いの名前を呼び合ってたんだけど、もしかしてあんた"それ"が聞こえてなかったのかよ!?
あ、そうか!じじい寄りのおっさんだから耳が遠いのかぁ!!
ーーーバシンッ!ーーー
「い、痛あぁぁぁーーっ!?」
「きゅーー!」
……こんっにゃろぉー!!元気になったとたんにこれかよ!?
なんで腹ん中で悪態ついてただけなのに、毎度毎度顔面にフルスイングされなきゃいけないんだよ!?油断してたせいで、痛恨のクリティカルヒットを食らっちゃったじゃねーか!!……マジで痛いんだけど!……はぁ。
つーか、なんでお前、ギルマス擁護派になってんの!?どう考えても俺はまだ幼気な子供で、相手は立派なヤ◯ザだぞ!?少し冷静に考えれば、どっちに攻撃すればいいかわかりそーなもんなんだけどな!?
……まぁ、よかったな?また元気百倍でパワハラ出来てさ!!
「……優記くん、昨日の事とか、本当に反省してる……の?」
……え!?こわっ!……も、もしかして俺、また顔に出てたの?
「……ユウキって、たまに……ぼ、ボクと同い年とは思えないくらいの"悪い顔"をするよな!?」
……え!?悪い顔!?いやいや、どんな顔だよ!?
「そうだなぁ、"顔は口ほど物を言う"ってのは聞いたことがあるがよぉ……坊主は"顔も口も"、まぁ、うるせぇーよなぁ!?」
……え?なにその"顔は口ほど物を言う"って!?絶対にそれ、今作った造語だよね!?
……その造語でふと思い出したけどさ、なんかこの世界って、俺らの世界と似たような"ことわざや格言"みたいのがちょこちょこない?
それってお互いの世界に元々ある、ことわざや格言に合わせて自動翻訳されてるってこと?
……ん?どういうことだ?"そういう"のも俺達の世界に元々有るものに合わせてくれればいいのに、なんか微妙に違かったり、全く一緒だったりで、なんだか紛らわしーよなぁ?……例えば、"一石二鳥"はいまいち伝わらないのに"一蓮托生"は通じるみたいな……あ、また思考が隣のホームまで脱線してもーた!
……ってかそんなことより、"顔も口もうるさい"ってマジでなんなの!?
なんかそれ、言葉の響き的に、すげーイヤなんだけど!!
「……いや七海さん、ホントに昨日のことは、海よりも深く反省しています!それに、口が悪いとか、うるさいってのも、これから少しずつ頑張って直していきますんで、どうか今回は(も)許してくれると嬉しいです、はい。……それでえっと、なんでしたっけ?あ、そうそう"顔がうるさい"っていうことでしたよね?……その件に関してなんですが、少しくらい大目に見てくれてもよくないですか?……だって、それの意味がよくわからないし、顔のうるささなんて、自分で…………こ、コントロールなんて出来るわけないじゃんかよおぉぉーー!!」
……あちゃ!ついつい我慢出来ずに、俺も最後の方で声を張ってしまったよ。……はぁ。
……以上、ム◯クの叫び……じゃなくて、優記の叫びでした。
「がははっ!おめぇ、本当におもしれぇー坊主だなぁ!」
「もう!優記くんったら!……くすっ」
「あはは!ボク、ユウキみたいな変なヤツに、生まれて初めて遭遇したよ!」
……いつもはウケを狙いに行くと、ドン引きされたり、逆に怒られたりするのに、ホントに辛い時の心の叫びは……なんで大爆笑なんだよ!?サイコパス予備軍の人達なの?……はぁ、マジで解せん。
……それにアリスよ、ちなみに"それ"はただの悪口だからね?どさくさに紛れて言えばバレないと思ったら大間違いだからね?
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「……はぁ。えっと、俺の名前は優記っす。よろしくっす……」
「ゆ、優記くん、拗ねちゃダメだよ?……わたしの名前は七海です。アルベルトさん、これからお世話になります!」
「ぼ、ボクはアリス……です。よ、よろしくです!」
「おう、これからビシバシこき使ってやるから、お前ら覚悟しとけよ?特にユウキ、お前のことだかんな?それで、ナナミ。ここにいる間は、俺のことはギルマスって呼べ!"アルベルトさん"なんて呼ばれた日にゃー、背中が痒くなってたまらねぇからなぁ?あとは、アリス。お前は無理な敬語はやめて、ふつーにしろ!いいな?……よしっ、お前ら全員、わかったかぁー!?」
「「「は、はい!」」」
……その感じだと、いちいち自己紹介なんかさせないでも、実は俺達の名前覚えてたっしょ?
「そんでまずは、一般的な新米が覚えなきゃいけねぇーことをこれから話すぞ?わかんねぇーことはすぐに聞け!今回は特別に受け付けてやるから、感謝しろ!」
「「「はい!」」」
……えーと、スマイルスマイル……
「まずは、冒険者の一番の役割について話すぞ?……冒険者ってぇーのは、平たく言えば"危険代行請負業者"だ。例えば、お偉いさんから危険な害獣や魔物の討伐依頼があったとするだろ、それに見合った報酬額を下の受付フロアの掲示板や受付嬢の方から冒険者側に提示して、そこで折り合いが付けば、依頼を受けた冒険者が"そいつらの代わりに討伐をする"、ってぇーのが一連の流れだ。他には、一般人には危険な場所で自生している貴重な植物の採取だったり、危険な魔物の素材や魔石の調達、それに、商人や貴族の護衛任務とかだな。まぁ、それ以外にもあるっちゃーあるが、とにかく体裁上、"依頼主の代わりに"ってのが大事なんだ。新米のお前らは、まだそこら辺の大人の事情は知らなくていいからよ……ここまではわかったか?」
……意外と丁寧に教えてくれるのね?このクソ……イケてるおじ様はさ!
今の話で大体冒険者の役割がわかったぞ?……つまり、
「簡単に言うと、"町の便利屋さん"みたいな感じってこと?」
「あぁん?おめぇーよぉ、かしこまってその物言いっつーなら、目もあてらんねぇーなぁ?俺らみたいな"根無し草"にだって、プライドっつーもんはあんだぞぉ!?ガキの使いじゃねぇーんだ、誰にでも出来る様な"おつかい"を、わざわざ冒険者がやるわけねぇーだろぉ!?」
……おいおい、わからないことは"すぐに聞け!"って言ったから聞いただけじゃん!?
毎回そんな剣幕じゃ、おっかなくて気軽に質問も出来ないよ!?
……ま、しょうがないか、ヤ◯ザの親分だし……
「へい、すいやせんでした!」
「あぁん?おめぇ、俺を盗賊の頭かなんかと勘違いしてねぇーかぁ?……まぁ、いいか。そんでお前らは、今話した内容の事を、基本的にこれからやっていかなきゃなんねぇーんだから、覚悟しとけよ?……ただし、ここからが"他の奴らとは違う内容"の話だ。……そうだなぁ、わかってるか、わかってねぇーかは知らねぇけど、お前らはどー見ても"普通じゃーねぇ"。ハッキリ言って何をやらかすか全く見当つかねぇーし、近い将来、間違いなく他の奴らやギルドに迷惑をかけるだろーしな……特に俺になぁ!?だから今日から俺が、お前らのお目付け役になることにした!だから依頼達成報告の時は、受付で済ました後に必ず俺んとこに来いよぉ?下だけで済まそうとすんなよぉ?わかったか、ユウキ!!」
「は、はい!……ってなんで俺だけなんだよ!?」
「はっ、そこがわかんねぇーようだから、仲間からも"空気が読めない痛いヤツ"って思われてんだろぉーが、お前はよぉ!」
ーーーグサッ!ーーー
「う、胸になんか刺さった!」
「おうおう、今のうちにいっぱい刺しとけ!じゃねぇーと、お前は何も凝りねぇーからなぁ!」
……うっ、このオジタマ、酷いよぉー
「そんで最後の話だ!今あるお前らの能力と、人には言えない隠し事をここで言え!」
……は?なんで一連の業務連絡の流れのついでに、いきなり俺達の手の内を見せなきゃいけないんだよ!?
っつーか、隠し事って、隠しておきたいから隠し事って言うんじゃないの!?
俺達のことを洗いざらい全部教えちゃったら、いざって時にあんたに"下克上"できなくなるじゃん!?
「やい!ギルマス!ぷ、プライバシーの問題だぞ!そ、それに、さっきの水晶でほとんど俺達のことはわかっただろ!?」
「おめぇーは……ふぅ、もういい。……何が言いたいかってぇーとなぁ、普通なら冒険者の能力や隠しておきたい事なんてもんは、俺を始め、他の奴らもお互いに直接聞いたりとかはしねぇーんだ。俺らの業界じゃそれは御法度だし、さっきもちょいと言ったが、俺らは国に管理されていない"根無し草"がほとんどだから、自分の身の内を晒すのを嫌がる傾向の多い人種ってわけだ。だがそうは言っても、一応そこそこの事はギルドで管理しなきゃなんねぇー決まりだから、受付に置いてある"鑑定石"で、所属冒険者の魔力の有無や、スキルの有無ぐらいは調べなきゃなんねぇーんだよ。それにどうせ無理して聞き出さなくてもここの冒険者の事なら、いずれ俺の耳には"入ってくる"からよぉ!……そうじゃなくて、お前らの場合、そこら辺を先に聞いとかなきゃ、おちおちここで居眠りも出来ねぇーだろ?この俺がよぉー!?」
……あぁ、そういうことか。だったら脅迫紛いな回りくどいことしないで、最初からそう言ってくれれば、俺だって納得したのにさ!……っていうか、居眠りなんてする暇があるなら、ちゃんと仕事しろよ!
そういや、確かスパイクさんが言っていた"鑑定石"ってやつ、魔力の属性や量、スキルの内容まではわからない物だったんだね?
そんでさっきの水晶は魔力関係に特化した鑑定道具だったってわけか……
「うーん。能力って言えるほどのものが、今の俺達にあるのかはわからないし、隠し事に関してはタフィーさんから大まかな事は聞いてると思うけど……まぁ、別に大したことじゃないから教えてもいいけどさ、絶対他の人には内緒にしてくれるって約束出来る?」
……まぁ、他の人よりも、"目の前の組長"に教えるのが、一番なんか怖いんだけどね?
だって、『秘密をバラされたくなかったら、俺の言うことを聞けやぁ!?』とか、言いそうじゃん。
「お前、俺のこと、少し舐めてんだろぉ?口の軽い中途半端な野郎が、ギルマスなんていう組織の頭を張れるわけねぇーだろぉ?それになぁ、自慢じゃねぇーが俺はこの王国一の"鑑定スキル持ち"だぜ?本当なら誰にも気付かれずに相手を"丸裸"にするのなんて朝飯前なんだからなぁ?……とにかく心配しなくたって、誰にも言わねぇーから、安心して全部吐き出せ、わかったなぁ?」
……こわいよぉー、この組長、堅気の人に威圧してくるよぉー!
まぁ、しょーがないか……"今わかってる事ぐらい"なら教えても問題ないかな?
……だって勝手に丸裸にされるのイヤじゃん。
「わかった!じゃー、おもいきって俺から言うけど……俺は"異世界人"です。だからハッキリ言ってこっちの世界の常識にはとても疎いです。だからギルマスは気を遣って俺に優しくしてください。あと、俺の能力ですが亜空間……"アイテムボックス持ち"です。あとは、能力とは関係ないかもだけど、切れ味の良い刀を一振と、この瓢箪を持っています。以後宜しくどうぞ!」
……どうだった?俺の名演説。拍手してもいいんだよ?
「……はぁ。面倒だから今は何も聞かねぇぞ?……次は七海だ!」
……え?まさかのノーリアクションとかありえる?ちゃんと異世界物の本とか読んで勉強した方がいいよ?
「あ……は、はい!わ、わたしも優記くんと同じ世界の異世界人で、能力も優記くんと同じ"アイテムボックス持ち"です!それで、えーとえーと……ほ、他には、この可愛い九ちゃんと、大まかな意思疎通がとれます!今のところは以上です!宜しくお願いします!」
……パチパチパチ!うん!良く頑張ったね、七海!僕は空気が読めるから、心の中だけなのが悔しいけど、君に最高のスタンディングオベーションを贈るよ!
「……"アイテムボックス持ち"がここに二人もいるのかよぉ……どんな異世界から来たんだよ、お前らは……はぁ。……最後はアリスだ!」
……ん?アリスで最後なの?クラマにも聞いてあげないと可哀想じゃね?俺はクラマからパワハラ被害を日常的に受けてはいるけど、別に嫌いなわけじゃないからさ。そこは仲間外れにしたらダメだよ?
「クラマのことはいいの?七海が通訳してくれるけど?」
「……あぁん?うっせーぞユウキ!?俺は"そいつの事"に関しては、今のところは"なーんも知りたくねぇー"んだよ!知ったが最後、俺なんかを飛び越して、ランティス王国の中枢が動き出すに決まってるからなぁ!?……それはいいからアリス、早くしろ!」
……まさかの現実逃避を決め込んでたの!?ギルマスなのに?
「は、はい!ぼ、ボクは光……聖属性の使い手です!か、かなり幼少期から仕込まれたので、そこそこは使いこなせると思います!……そ、それで、"隠し事"の件なんですが……それを、お、お話したら、確実に迷惑をかけちゃいますけど……本当に聞きたいですか……?」
「……おいおい、お前もなんかあんのかよぉ!?こいつらと違って異世界人でもねぇーのにか!?……もういい。話せ!迷惑はとっくの昔からかけてんだ、全部言っちまえ!」
……いやいや、ギルマス。なんか自暴自棄になってませんか?
それに"とっくの昔"って言うけど、俺達、昨日初対面したばかりですよ?
ちなみにアリスは、ギルマスに何の迷惑もかけてませんよ?
「わ、わかりました。ぼ、ボクはその……聖レムリアス皇国出身のとある公爵令嬢です……でした。それでボクは、幼少期の教会での洗礼の際に、数百年振りの魔力量を持った聖属性の持ち主だった……と、いうことがわかったので、幼い頃から教会側から、それこそ数百年振りの"聖女の再来"として担がれてしまって、いろいろと……そう、いろいろと本当に大変でした。それで"長年に続いたそれ"に見かねたわたくしの……こほん。……ぼ、ボクのお父様が『私からは教皇様には、この旅の途中でお前は"流行り病で死んだ"ということにする。その遺体は風土病だったために、その旅先の土地の"風習に習って埋葬した"と、そう伝える。だが、あの教会のことだ、いずれはその嘘に勘付くだろう。なので、それまでに力を蓄えて教会に屈しない立派な大人になり、どうか無事に生き延びてほしい……今までとても辛い思いをしてきたお前に対して、何も出来なかった私を、どうか赦しておくれ、アリエル……』そう、お父様は仰ってくれました。この"トラン"に流れ着くまでにも、いろいろとありましたが、何とか身を隠して、今、ここに居ます。……ぼ、ボクの隠し事は、そ、そんなところでしょうか……?」
「「「…………」」」
……いやいや、言葉に詰まるぞ!?だってアリスの話が、信じらんないくらいに重いんだもん!?
あとさぁ、"とある公爵令嬢"って、すぐに誰かわかっちゃうよね?だって"公爵"って、王族に連なる階級でしょ?それに『アリエル』ってアリスのこと?ってか、なんで聞いてもいないのに本名までバラしたのさ!?それって全部、他の人間に話してもいい内容の話じゃ、絶対になかったよね!?
……えっと、ざっと確認するとアリスは、"元公爵令嬢"で"聖女の再来"、そして自分の故郷には死んだと思わせておいて、身分を偽りこの町の冒険者としての、新しい生活と安定を求めて命からがら故郷から逃げて来た。って話だったよな?それでいて、ロリで、ボクっ娘とか……
……いやいや、異世界作品の詰め合わせみたいなヤツだなお前は!
「………………」
……ん?珍しくギルマスが長考してるみたいだけど……アリスの話を聞いて、面倒くさそーだと思って、まさかアリスを見放そうとしてるんじゃないだろーな?
もしそうだとしたら、マジで下克上するからな?
場合によっては、先祖代々クラマの瓢箪を咥えながら天魔を振り回してきたという天音家の、一子相伝秘術『ほぼ無敵チート無双』をお見舞いしてやるからな?
そんな妄想をしていたら、ギルマスがやっとその重い口を開いた。
「……まぁ、自慢じゃねぇーが、俺は冒険者時代に北の魔大陸以外のほとんどの国や大陸には行った事があるんだがよぉ、まさかアリスがレムリアスの貴族令嬢……それも公爵家令嬢だったとはなぁ……それにあそこは貴族側と教会側の表面上の友好関係とは違い、裏でのお互いの暗躍がひでぇーとこだからなぁ……政治と宗教に挟まれた公爵令嬢で、それがまた何のいたずらか、聖女の再来ときちゃー、想像を絶っする生活環境だっただろうなぁ、そりゃーよぉ……」
そこで俺はまだ考えが纏まってなさそうなギルマスに、キッパリなんか言ってやろう!と思ったのだが、それに気付いた七海が『優記くん、わたしに言わせて?』と小声で囁いてきたので俺は(もちろん)身を引いて、七海に託した。
「ギルマスさん、少しいいですか?」
「……あぁん?……よくはねぇが、まぁいい。話してみろ!」
「はい。ありがとうございます。ギルマスさんがこれからどんな発言をアリスちゃんにされるのかわからないですが、それがどんな発言だったとしても、わたし達の意見は変わらないので、失礼ですが先に言わせてもらいます。アリスちゃんはこの世界で初めて出来た友達で、初めての冒険者パーティーの仲間です。出会って間もないわたし達ですが、そんな少しの間でもアリスちゃんの人の良さや、そんな辛い環境の中で育ってきたのに、真っ直ぐな気持ちでわたし達を心配してくれたアリスちゃんのことが、わたし達は大好きなんです!なので、どんな事がこの先で起きようとも、アリスちゃんのことはわたし達が必ず守ります!」
……か、カッコ良すぎじゃね?なんかそれを聞いたアリスが『な、ナナミぃ~……』とか言いながら、目をウルウルさせながら七海に抱きついてるしな。
なんか七海が主人公で、アリスがヒロインの物語みたいになってきたんじゃね?
えっ?じゃー、お前は何なんだって?そりゃー、ただの賑やかしに決まってんじゃん。
その七海の発言を黙って聞いていたギルマスだったが、言うことが決まったのだろう、真剣な眼差しで七海に、
「……大層立派な意見だなぁ、ナナミ。まだ一回も依頼をこなしたこともねぇー、新米冒険者のくせによぉ……まぁ、何度も言うが、俺はこの冒険者ギルド、トラン支部のギルマスだ。さっき言ったよなぁ、『俺らみたいな"根無し草"にだって、プライドっつーもんはあんだぞぉ!?』ってよぉ。だから、お前達がここから逃げ出さねぇー限り、俺はお前らの頭であり、親みたいなもんだ。……いいか?一度しか言わねぇーから耳の穴かっぽじってよく聞けよ?……これからどんな事がお前らの身に起きようが、俺がお前達の頭であり続けている間は、何がなんでもそれらから必ず守ってやる!……だから心配することなんて何もねぇーよ。……以上だ!それでなんか文句あるか!?」
……おぉ!さすがはトラン支部の組長さんだ!言うことに貫禄と信頼が溢れ出ているじゃんか!
ただ、おっさんのクセにツンデレっぽいのが玉に瑕だけどね!
「じゃー決まりだね!俺と七海とアリスは、これからパーティーでここの冒険者として頑張って行くから宜しくね、組長!」
……あ、やべ。組長って言っちゃった!でもどうせ意味は伝わらないから別にいっか。
「あぁん!?ユウキおめぇー、どうしても俺のことをマフィアのボスにしてぇーみてぇーだなぁー?それならそれで、お前にはそういう態度で接するが、その覚悟は出来てんだろぉーなぁー!?」
……やばっ!?組長って言葉は、"マフィアのボス"って意味に変換されんのかい!!そんなのわかるわけないやん!
「ぎ、ギルマスさん!……優記くんは、そういう病気なんで、今回だけは許してもらえませんか……?」
「なんかユウキを見てると、ボクの悩みなんてちっぽけに思えてくるよ……」
……あ!七海がついに俺のことを完全に病人だと思ってるやん!
それとアリスよ。お前の悩みは、『この世界の人が選ぶ、辛い事ランキング、トップ10!』に軽くランキングされるくらいの悩みだぞ?だから俺の病気と一緒にするなよ?
「いや、冗談です、ギルマス!七海も言ってるように今回だけは許してください、ギルマス!」
……この人はギルマス、そうは全く見えないけど何故かギルマス……こうやって自分に暗示をかけていけば、目の前の怖いおっさんがギルマスだと思える日がいつかはくるよね?
「ギルマスギルマス、うっせーぞ!!……もーいい!お前の相手をしてると頭が馬鹿になる!とにかく俺の話しはこれでしまいだ!早く"これ"持って、なんでもいーから、下で依頼を受けてこい!モタモタしてないで早く行けっ!!」
「「「は、はい!」」」
俺達はギルマスから"カードらしき物"を受け取り、逃げるように、ギルマスの部屋を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ。疲れたな?」
「うん。でも、半分以上は優記くんのせいだからね?」
「え?それは違うぞナナミ!この疲労感の正体は、全部ユウキのせいだとボクは断言出来るよ?」
「おいおいアリス、お前は自分のことを棚に上げすぎだろ!?」
「た、確かにそうだけど……でもユウキほど高くはないぞ!君の棚は誰にも手が届かないからな!」
「……それであなた達は……一体何をしに来たのかしら?痴話喧嘩なら余所でやってもらえる?」
「「「ご、ごめんなさい!」」」
俺達は今、鉄壁のモブ姉さんの元へやって来ていた。
早速依頼を受けようと思っての行動だったのだが、今の一連のやり取りのせいで、また怒られてしまった。
……このお姉さん、マジでブレないよな?っつーか、いまだに名前も知らなかったわ。
これからお世話になる所の人だから、早めに聞いとこうかな?
「あの、ごめんなさいついでに、お姉さんの名前を教えてください!」
「なんのついでなのか、よくわからないけど……私の名前はメイデよ。それで、用件はなんなのかしら?」
……メイデ?……アイ◯ンメイデン的な?
まさか、いくら鉄壁だからって、鋼鉄の◯女とかじゃ……
あ!……考えるのを止めます。く、クラマに睨まれたので……
ちなみにメイデさんのスペックはこちら!
赤みが強い茶系の目と髪の色で、髪は頭の上に巻いてまとめてある。特に特徴的なところは、そのかけている縁なし眼鏡もそうだが、その眼鏡越しに見えるキリッとした切れ長な目が、その見た目の知的さを倍増さしている。それに、綺麗な顔立ちなのに、どこかトゲがある雰囲気をいつも漂わせているので、綺麗な花にはなんちゃらです!
「ギルマスに『早く"これ"持って、なんでもいーから、下で依頼を受けてこい!』って言われたから、依頼を受けにメイデさんのとこに来ました!」
「……そうなのね。それにギルマスから"直接"ギルドカードを受け取った……ということね?では、少しそのカードを見せてもらってもいいかしら?」
そう、メイデさんから言われ、俺は七海とアリスからギルドカードを受け取り、俺のを含む、まとめて三人分のギルドカードをメイデさんに手渡した。
「いいよ?……どぞ!」
「では、拝見しますね。……名前は、ユウキ君、ナナミさん、アリスさん……ね。年齢は三人とも成人したての15才。出身地は……みんな冒険者ギルドの寄合所なのね?……それで職業が、ユウキくんはサムライ、ナナミさんはモンスターテイマー、アリスさんはヒーラー……魔力の有無は三人とも◯、スキルの有無はアリスさん以外は◯、冒険者ランクはF……わかりました。確かに受付を飛ばして"ギルマス案件"なのには納得しました。それでナナミさんのモンスターはどこにいますか?」
……なんかこめかみに片手を添えてるけど、今の内容に頭が痛くなりそーなのなんかあった?とぼけでもなんでもなくて真面目によ?
それに『ギルマス案件』ってなに?
あと、うちのモンスターは、ボールの中じゃなくて、いつも七海の頭の上でくつろいでますけど?
「は、はい!えっと、わたしの頭の上にいます!」
「えっ?……そう、派手な帽子じゃなかったのね……一応ナナミさんのギルドカードの備考欄に『噛みついたり浮いたりする』と、記入されていたので、姿を確認したかっただけなのでもう大丈夫です。はぁ……」
……え?なにその適当な備考欄は?浮くのはあってるけど、噛みつくのは俺に対してだけだよ?
それに今メイデさん、タメ息ついたでしょ?なんでぇ?
「じゃーメイデさんに納得してもらったところで、早速、俺達依頼を受けたいんだけど!」
「……逸る気持ちはわかりますが、その前に、冒険者のランク制度や、依頼などに関して、あなた達はギルマスから何かお聞きしましたか?」
「いや、ぜんぜん聞いてないよ?」
「いえ、まったく」
「うん、聞いてないよ」
「…………だと思いました。取り敢えずこの紙を差し上げますので参考にしてください」
そう、メイデさんから一枚の紙を手渡された。
かなりぎっしりと文章が詰め込まれていたが、要約するとその紙の内容は以下の通りだ。
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[冒険者ランクについて]
冒険者ランクとは、上から順にS、A、B、C、D、E、Fの7段階で構成される、冒険者の能力や実績を加味した分類上の階級である。新人は必ずFランクからスタートする。例外は認められない。
[冒険者ランクの昇級について]
冒険者ランクの昇級とは、基本的には依頼達成時に加算されるポイントの合算した規定数値で昇級が決まる。が、そのポイント自体は冒険者側からは確認出来ない様になっている。希にギルドマスターの権限により、ポイントを無視した昇級、又は飛び級が決まる事もある。
[冒険者の依頼受注条件、冒険者ランクの意義、又は恩恵について]
依頼書や指定された個別依頼等に示されているランク(危険度)と、その依頼を受ける冒険者自体のランク(能力)が同等、もしくは前後1ランクまでが依頼を受注出来る条件として定められている。ランクによって依頼達成報酬、恩恵等が違うのはその為である。ただ、Fランクに関しては、Fランク用の依頼しか受注出来ない。Fランク用の依頼とは、新人養成、新人育成を重視した、ギルド側の意義、配慮の為、低難易度依頼だけで纏められたものを採用している。その他には、余程の特殊依頼や強制集団任務等の事態が起こらない限りは、依頼受注条件に関しての例外は無いものとする。
[冒険者パーティーの登録、解散について]
冒険者パーティーの登録、解散は、基本的に自由で、短期(当日~七日以内)パーティーの場合は登録、解散の手続きの必要はない。冒険者ギルドは依頼者からの依頼達成が主要な組織なので、メンバーの交代や報酬の分配等は冒険者自体に任せることとする。ただ、依頼内容によってはギルド側からパーティー参加、又は発足を促す場合がある。(冒険者単体での依頼達成が、困難を極める等の場合のみ適用)
固定(八日~)パーティーを結成したい場合のみ、ギルドカードの備考欄に、パーティー名とパーティーメンバー名が記載される。
固定パーティーの解散については、受付窓口にて報告すれば、承認後、解散という流れになる。その時にギルドカードの備考欄に解散したパーティー名が記載される。
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以上が、この紙に記載されていた内容だった。
……言っとくけど、これでもかなり掻い摘んで簡単にした内容なんだからね?
マジで六法全書を、一枚の紙にまとめたぐらいのボリュームだたったんだからさ!……まぁ、六法全書を見るどころか、見かけたこともないけど。
「とても参考になりました!それじゃー依頼を受けてもいい?」
……パーティー登録は後でいっか!だって結成期間が一週間以内なら登録しなくてもいいってことでしょ?パーティー名もまだ決めてないし、登録はそん時でもいいでしょ!
「……本当に参考になったかは、その発言でよくわかったわ。では、後ろの中央の柱に貼り付けてある、どれでも好きな依頼書を一枚、持ってきてください。勿論、あなた達はFランクなので、Fランク用の依頼書だけにしてくださいね?」
「「「はい!」」」
そうして俺達は、中央のとても大きな柱の元へと足を運んだ。
「うん?今日は回りの冒険者をまったく意識してなかったけど、けっこう空いてるな?」
朝のピーク時を越えたのか、大きな依頼書掲示板と化している中央の柱には、片手で数えれるくらいのパーティーしか残っていなかった。
一通り依頼書を見てみようと、柱を回り込んでいた途中で、丁度柱の裏側にいた、他パーティーの内の一人が、俺達に話しかけてきた。
「あらん、あなたたち、新人さんかしらん?」
「ん?……そうですけど、あなたは……だれ?」
……ポリコレ配慮の方ですか?
「あたいは、Dランクパーティー『巨人の黄昏』のリーダーをしている"ゲイル"よ!よろしくねん、坊や達!」
俺達に気さくに話しかけてきた、そのゲイルという人物は、見るからに筋肉質でヘビー級プロレスラーぐらいの体格だった。髪型はパイナップルみたいで、格好は今から重量挙げでもしそうなタンクトップにピチピチの短パンを履いていた。イメージで例えるなら、見たまんま、ド◯ゴンボールの◯ッパだ。ただし、"色白お肌のオネエたん"という、属性が付与されるが。
……あー、キャラが濃すぎて、胸やけしそーだよー
それに名前が"ゲイル"だし、見たまんまだよー
パーティー名も、どっかの野球チームが負け越してる時みたいな名前だよー
なるべくならお近づきになりたくないタイプの人だよー
「俺はゲイリー!よろしく!」
「私はゲイラよ。私達は兄妹で冒険者をやってるの。よろしくね!」
……え!?まだいたの?
あぁ、思ったよりも見た目は普通で安心したよ、この二人に関しては。ただ、共通して名前に"ゲイ"が入るのと、兄妹揃って筋肉質ってとこはすごいけどね。
「よ、よろしくお願いします!わたしは七海といいます!」
「ぼ、ボクはアリス!よ、よろしくです!」
……二人でめっちゃ"どもる"やん。
確かにこんな筋肉ブラザーズを前にしたら、俺らみたいな子供はそうなっちゃうのも仕方ないけどさ。
「優記くん、ご挨拶しよ?」
……え?俺が一番、子供扱いされてない!?
まぁ、七海さんの頼みとあれば、仰せのままに致しますよ!
「俺は優記。『筋肉の元彼』の皆さん、これから宜しくどうぞ」
ーーーバシン!ーーー
「い、痛ったぁーー!?」
「きゅーー!」
……はいはい、ごめねごめんねぇーー!
「優記くん!皆さんに、ごめんなさいしないとダメだよ!?」
「や、やめろよユウキ!……ユウキが病気なのはわかってるけど、少しは治療に専念してくれないと、こっちの身が持たないよ!」
「うふん。元気な坊やに可愛らしい狐さんね?」
「ユウキの度胸には目を見張るものがあるな?」
「ぷーくすっ!ユウキ、それってわざとでしょ?普通はそんな間違え方、ひっくり返っても出来ないわよ?」
……おぅおぅ……みんなでしゃべらないでよ!?
「すいません!皆さんのたくましさについつい嫉妬して、変な冗談を言ってしまいました!僕達、今から初めての依頼を受けたいんですが、何かご教授出来ますでしょーか!」
「もう!」
「ボク、もしかして、パーティーを組む相手間違えちゃった!?」
「あらん、ユウキくんはお茶目なのに、礼儀もしっかりしてるのね?いいわ、あたいが代表して教えて、ア、ゲ、ル……!」
「「「………」」」
……うおぉぉぉーーー!……と、と、鳥肌MAX!!
とんでもない精神攻撃の使い手だぞ!?このゲイルさん!!
「あらん?聞きたくないのかしらん?」
「「「お、お願いします……」」」
「うふん。可愛いわねぇーん、あなたたち。と、く、に、ユウキくん!……まぁ、冗談……ではないけど、話しはこれくらいにして、初依頼に関して簡単に教えてあげるわ?この柱に大量の依頼書が貼り付けてあるでしょ?その中であなたたちは、Fランクの依頼書を選ぶのだけれど、なるべく最初の内は、討伐系の依頼を受けた方がいいわよん?」
「え?なんで?普通は採取系とか危険の少ない依頼を受けたりするんじゃないの?」
「あはん。いいわ、その遠慮なしにこられる感じ……ゾクゾクしちゃうわ……」
……ゾクゾクしてるのは俺の方が先だからね!?
ってか、いきなり討伐依頼とかって、あんまり異世界物のテンプレ的にあまりないよな?
「……いいわ、その質問に答えてあげるわね?採取系は確かに簡単よ?でもね、不測の事態が起きやすいのも採取系依頼の特徴よ?ほらん、考えてみて?討伐依頼なら討伐用の準備をするでしょ?でも、採取依頼はどう?」
「確かに採取メインなら、身軽な格好で行っちゃうかも」
「でしょん?Eランク以上の冒険者や、そこそこのベテラン冒険者はそんな油断は一切しないんだけど、新人さんにはそれがありがちなのよね。それに、いくらFランクの採取依頼と言っても、わざわざ冒険者ギルドに頼むぐらいの依頼だから、"すごく楽"ってことはあまり無いのよ?楽なものは、一般の人でも簡単に出来ちゃう。ってことだしね?とにかく、不測の事態……予期せぬ魔物との遭遇が一番多いかしら?そういうことがたまにあるから、気を付けてよねん?まぁ、今はまだ、これくらいかしら。どう?少しは参考になったかしら?」
……なるほどね、確かにゲイルさんの言う通りだよな。
簡単な草むしりなんて、誰でも出来るもんな!
ってか、ゲイルさん、ちょー優しいじゃん!やっぱり人は、見た目で判断しちゃダメだよな!
「ありがとう、ゲイルさん!すっごい、参考になったよ!」
「「あ、ありがとうございます!」」
「いいのよん、誰もが新人の頃には誰かしらに教えてもらえる事だもの。では、わたしたちは行くわね。それじゃーみんながんばってね!」
「「「はい!」」」
俺達は、依頼書を剥がして振り向いたゲイルさんに、元気良く返事をして、視線を大量の依頼書の方へと向けた。
「討伐系の依頼がいいってゲイルさんは言ってたから……討伐、討伐っと。……あ、二人はどんな害獣や魔物と戦いたい?……さらっと見た感じ、『ゴブリン』『ウルフ』『ボア』ぐらいだけど?」
「わ、わたしは自分が何が出来るのか、今のところよくわからないから、動きが遅くて慣れてる『ゴブリン』がいいかな?」
……確かにいまだに『ゴブリン』としか戦ってないもんな。それも攻撃したのは俺だけで、七海はまだ戦闘を経験したことがないしね?まぁ、俺(天魔)のせいなんだけどさ。
あ、それと、アリスは戦闘経験とかあるのかな?ここに来るまでの間に、一回くらいはありそうなもんだけど……
「アリスはどれがいい?」
「ぼ、ボクはアンデッド系の魔物とは"よく戦わせられた"から、ボクもたまには、普通の『ゴブリン』とかがいいかも!」
……いちいち、胸を締め付ける様なことを言うのは、少し控えてくれると助かるんだけど!?
「じゃ、『ゴブリン』で決まりだな!……えっとえーっと……『トランの西門の外の草原で、はぐれゴブリンが数匹確認された。至急、討伐求む!』……うん、これにしよ!」
俺は目の前の巨大な柱から、その依頼書を剥ぎ取り、メイデさんのところへと戻って行った。
「メイデさん、これでお願い!」
「あら、早かったですね?……『ゴブリン討伐』の依頼ですね?わかりました、受注をお受けしました。あなた達は初めての依頼なので、とにかく気を付けてくださいね?たとえ相手が『ゴブリン』だとしても、気を抜くと命取りになりますからね?」
「うん!心配してくれてありがとう、メイデさん!でも、『ゴブリン』なら少し慣れてるから、大丈夫だよ!」
「……わかりました。では、受注を終えたので、このギルドカードはお返しします。無事に依頼を終えたら、またここに戻って来て、このギルドカードを提示してください。では、ご健闘をお祈りします。皆さん、行ってらっしゃいませ」
……うんうん、なんだかんだ言っても、メイデさんも良い人みたいだな!……そういや、メイデさんってタフィーさんのこと知ってるのかな?
グレタさんよりは年上っぽいから、もし昔から働いている人だったなら、多分知ってるよね?まぁ、今は聞かなくてもいっか!
……それと少し気になったんだけど、このギルドカードって、ス◯カみたいな感じじゃね?……ってことは、これって魔道具なのかな?
なんでかって、メイデさんの手元にあった、小さめの石板(魔方陣みたいなものが中央に刻まれた物)に、このギルドカードを置いたら、ほんのり光ってワンタッチで終わったしね!
じゃーそろそろ、初依頼とやらを成功させて来ますか!
「「「はい!行ってきます!」」」
ーーーこうして優記達は、初めての依頼に少しばかりの緊張と、逸る気持ちを感じながら、ゴブリン討伐へと向かったのであった。ーーー
とにかく設定を考えるのが大変でした。
いくら趣味で執筆してるとはいえ、素人が長い文章をあんまり綴るものじゃないですね!
そのせいで頭からいっぱい煙が出て、いつもより投稿が遅くなってしまいました……(泣)
そんな『自分の好きで勝手にやってることで、いちいち愚痴ったり、自分語りすんなよ!』と、思われた方はブックマークという名の棍棒で、私の事を叱咤激励していただけると嬉しいです!
少ないながらに読んでくださる方がいる!という現実に、いつも励まされております!本作をどうかこれからも宜しくお願いします!




