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第三章 閑話

「…………っていう、ことだからね?だから優記くん、本当に反省しないとダメだよ?」

「そうだぞ、ユウキ!ナナミの言う通りだからな?ボク、こんなにヒヤヒヤしたのは、生まれて初めてだったんだからな!?」

「きゅ、きゅきゅー!」


「は、反省しております……」


 俺達は今、宿屋で食事をしている最中だ。

 ちょうど宿に戻った時には、酒場みたいな一階の広間は冒険者達でとても賑わっていた。

 俺達を見て『おい兄ちゃん!美少女ばっかり(はべ)らせて羨ましいなぁ?』とか、『男一人のパーティーは痴情の(もつ)れが命取りになるから気を付けなさいね!』などの声がいくつか飛んで来たが、申し訳ないが今の俺には、そんな言葉に反応している余裕が全くなかった。

 何故なら、『へぇ、こんなに"ここ"に泊まってる人達がいたんだ?』と、何気ない一言さえも、七海やアリスにダメ出しされたり、食事をするために空いてるテーブルに腰をかけて、給仕さんが運んでくれた料理に対して『こんな安い値段で結構料理のボリュームがあるんだね?』と、至極普通なことを言っただけでも、かなりのお叱りを受けていたのである。

 それで食事が始まってからも冒頭の様なセリフを、"延々"と聞かされ続けている。……それも、冒険者ギルドを出てからずっとだよ!?俺だってたまには食レポとかしたいんだよ?折角の異世界料理なのに、二人(プラス一匹)がずっとこんな調子だから、料理の味が全く脳に伝わって来ないのよ……


「優記くん、わたし達のお話、ちゃんと聞いてくれてるの?」

「そうだぞ、ユウキ!」

「きゅーきゅー!」


 ……アリスとクラマは、さっきからただの賑やかしになってないか?


「も、もちろん、ちゃんと聞いてます……」

 

「なぁ、ナナミ。ナナミって、ユウキと幼馴染みなんだろ?昔からユウキって"こんな"感じだったのか?」


 ……え?"こんな"って、酷いよ?


「……うん。でも、小さかった時の頃よりは、今の方が大分"マシ"になったんだよ?」


 ……え?"マシ"って、家系ラーメンとかで注文する時に使う言葉じゃないの?


「うぇー!?今の方が昔よりマシなのか!?こ、"これで"!?」


 ……え?"これで"って、もはや人として扱ってくれてなくない?


「う、うん。そうだよ?」


「七海は昔から苦労してるんだなぁ……」


 ……ごめんね、七海……


「で、でもね、優記くんは……そういうのが気にならなくなるくらい優しい……んだよ?」


 ……えっ!?七海ぃ……お、俺は今、とても君を抱き締めたくて、気が狂いそうだよ!!


「えぇー!?ユウキが、優しい!?ボク、この短時間で、ユウキに対して何回も腹を立てたことはあったけど、優しいと思ったことは一回もないぞ!?」


 ……ちょ、おま!くそっ、そこら辺の野うさぎとグルになって、いつかお前のことを、"不思議な国"に放り込んでやるからな?覚えておけよ!?ちくしょー!


 そんなこんなで食事を終えた俺達は、それぞれの部屋へと戻って行ったのであった。


 もちろん、部屋に戻った俺と七海に、先程の様な初々しいムードなどは皆無で、長年連れ添った夫婦の様ないつもの状態に戻っていた。


「じゃー俺、風呂に入るけど……って、この部屋、風呂もトイレも無くない?」


「うん。そうだよ?大衆浴場みたいな大きなお風呂と、共同トイレは食堂の先にあるんだって。さっきアリスちゃんが教えてくれてたよ?」


 ……え?いつそんな会話してたの?ずっと説教しかしてなかったじゃん?


「ふーん。そ、そうだったよな!」


「も、もう!また聞いてなかったんでしょ!?」


 ……あぅ、脳が萎縮してきたよぉー


「ホントに懲りたから、今日はもう勘弁してください!」


「……たしかに、今日は言い過ぎちゃったかもしれないよね?わたしも反省するから、優記くんも少しは頑張ってみてね?」


 ……優しすぎるだろ、七海さん!


「うん!」


「じゃあ、わたしも、アリスちゃんと九ちゃんとお風呂に行ってくるから、この部屋の鍵は優記くんに渡しておくね?」


「オッケー!……あ、洗濯とかってどこですればいいのかな?」


 ……ちなみに今の俺には死活問題だからね?ギルマスに怒鳴られてる時にも、このことは気にしてたくらいだからね?


「みんなお風呂場でしてるんだって!それでこの地域はかなり乾燥してるから、今日の内に洗濯した物は、明日の朝には大体乾くって、アリスちゃんは言ってたよ?」


 ……おぉ、ナイスな情報ありがとう!


「了解!あと、七海の荷物は七海に返しておくね?俺の亜空間に入ってるものもいくつかあるからさ」


「うん。ありがとう」


 そんなやり取りを踏まえつつ、俺達は大衆浴場へと各々が向かったのであった。

 その道中で下着やタオル代わりの布を売ってくれる宿屋の人や、歯磨きをするための木の棒?などの日用品を取り扱っている商人がいたので、とても助かったということや、風呂場で服(特にパンツ)を洗濯している時に、石鹸らしき物を貸してくれた優しい冒険者のお兄さんがいて、とても感謝したなどの出来事をここに記しておく。


 そして部屋に戻った俺達は、ベッドが一つしかないことに気付いてはいたが特に意識することもなく、クラマを真ん中にして眠りに就いたのであった。



 

 ーーーーこうして初日と同様に、異様に長く感じた俺達の異世界二日目は、終わりを告げたのであった。ーーーー





 

 


 

 感想をくださった方、誠にありがとうございました!

「本当に読んでくれている人がいたんだ!?」と、若干涙が出そうでした……あんまりこんなことを言うとドン引きされても困るので、これくらいに留めておきます(笑)


 引き続き本作を宜しくお願いいたします!

 ブックマークはやる気の源になるので「こいつ必死でかわいそうだからしょうがねーな?」ぐらいの気持ちでしてくれると嬉しいです!

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