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第一章 第三話

 ……やべーなー……卒業式まだ始まってないよなー?

 卒業式会場に遅れて行くなんて流石の俺でも恥ずかし過ぎるぞ?

 

 ……ん?あれっ?遠目だから分かりづらいけど、この先の卒業式会場の扉の前で誰かが座り込んでるぞ……?


 

 ……っ!?……あれは七海だ!!


 俺は無意識に七海のもとへ駆け出していた。


「はぁはぁ……おい、七海!大丈夫か!?どこか怪我でもしたのか!?」




「…………いないの…………」




「えっ?誰がいないんだ?……それより七海、顔が真っ青だぞ!?」




「…………体育館の中に誰もいないの…………」




 その時俺は七海が何を言ってるのか理解するのにほんの数秒時間がかかってしまった。今すぐ何か言わなければまずい様な気がして再び話しかけようとしたら、いきなり七海が俺の足元にしがみついてきて、


「……ゆ、優記くんの事、き、教室で少し待ってたんだけど、みんな、黒板に言付けすればいいって……だ、だから私、みんなの後についていって、そしたら、体育館の扉がバンッて閉まって、ビックリして扉の窓ガラスごしに中を覗いたら…………誰もいないの…………だって、今、みんな、すぐ私の目の前にいたんだよ……?」


 七海のそのたどたどしい言葉使いで、痛いぐらいに今の混乱具合いが伝わってきた。

 間髪入れずに俺は扉を開け、辺りを見回した。


「……っ!?ほんとに誰もいない!!……何でだ!?パイプ椅子や卒業式会場の音楽は流れてるのに!!」


「……ゆ、優記くん、どこに…………みんなはどこに行っちゃったのかな…………」


 七海が座り込んでいた扉の前でついにたまらず泣き出してしまった。


 俺は頭が真っ白になりそうなのを無理やり自分に張り手をしてかき消し、


「……七海、ちょっとそこで待ってろ!速見先生を今連れてくるから!」


「……ま、待って!わ、私も行く!ここに一人でいたら頭がどうにかなっちゃいそうだから……」


「わかった!ほら、行くぞ!」


 俺は先程とは全く違う感情とシチュエーションで、同じように七海の手を引いて速見先生のいる校門へと向かって走り出した。

 

 七海の前では言葉にはしなかったが嫌な予感とは当たるもので、やはり校門へ行く道中も人影一つ見当たらなかった。


 これ以上当たってくれるなよ!と、俺は必死に七海と一緒に速見先生の姿を探した。


 


…………あれはっ!…………居たっ!速見先生だ!!




「「速見先生!!」」



 ……速見先生は先程と同じ、校門の内側から通学路の方に体を向けていた。俺達は急いで先生の後ろに近づくと、



「はぁはぁ……速見先生!……みんなが……みんなが何処にも居ないんです!今日のは冗談でも何でもなくて、信じてもらえないかもしれないですけど、ほんとに誰も居なくなっちゃってて…………」




「…………………」




「……は、速見先生、わ、私も目の前でみんなが居なくなってしまって…………」




「…………………」




「「…………先生?」」





 ______そう、話しかけた刹那に、速見先生の姿はまるで元々そこに居なかったかの様に消えて失くなっていた。______


 









 







 


 



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