第二章 第十七話
おぉ!!ブックマークしてくれている方がいました!それに評価もしてくれて……わたくし、泣きそうです……
やる気、勇気、元気100倍です!!
……もうしばらくがんばれそうです!ありがとうございます!m(_ _)m
……おいおい!突然なんつーこと言い出すの、タフィーさん!?そ、そりゃー、七海とは……ゆくゆくは結婚したい……ですよ!?って、いうか僕たち、まだ付き合ってすらいないんですけど!?
それに……それは完全に七海の気持ちを無視した発言ですからね!?
「た、タフィーさん!こんないたいけな少年少女達をつかまえて……からかうのは、や、やめてくれますか!?」
「……ゆ、優記くんの……い、言うとおりです……」
……ほら!七海の顔が真っ赤っかじゃんか!……多分俺の顔もだけど!
「あら?別に今すぐ結婚するわけではないでしょ?"いつか"の話をしただけよ?」
……そりゃー、いつかは結婚したいけれども!
それに七海は優しいから、"こういう"のは俺を傷つけまいとして、板挟みになっちゃうからやめてあげて!
「…………ち、ちょっと、クラマちゃんたちのところに……行ってきます!」
ーーーたったったっ!ガチャっ、バタンっ!!ーーー
……え?なんで?
「あらあら、逃げだしちゃったわね?少し意地悪しすぎたかもしれないわね」
「そ、そーだよ!なんでいきなりあんなこと言い出したのさ!?」
「余計なお世話をしたかっただけよ?ユウキ君、得意でしょ?」
……かぁーー!こりゃあ、一本取られたわい。……じゃねーし!
「わかった!わかりましたよ!!俺の負けです!だから俺はいいけど、七海には"そこそこ"にしてあげてよ?」
「うふふ、わかったわ。それでもう一つ、聞きたい事っていうのは何かしら?」
……え?なんか他に聞くことあったっけ……?うーん。今のやり取りで全部ふっ飛んじゃったじゃんか!
……あ、そうだ!エリクサー(笑)の事を聞きたかったんだ!もうこれを聞いたら思い残すことなく旅立てるぞ!それにこれ以上タフィーさんにからかわれたら、こっちの身がもたないからね!
「そうそう、これが最後の質問ね!"この回復薬"って、この世界ではどういう扱いになると思う?」
……これは一応、"七海命名"のエリクサー(笑)だが、実際の効能効果がわかったわけじゃないからな。わかっていることといえば、
1、身体の疲れや痛み、擦り傷が完全に消える。(優記談)
2、酷い倦怠感や眩暈、頭痛や耳鳴りも治る。(タフィー談)
3、肌の張りが良くなり少し若返る。(様に見えた)あと、髪のコシや艶まで良くなる。(タフィーを見て感じた優記談)
……ぐらいかな?回復薬としてはかなり優秀な類いだとは思うけど、流石に"エリクサー"とまでは今の段階では、言えないよな。だって俺が(ゲームとかで)知ってるエリクサーって、瀕死の重症でも飲めば完全に復活するやつだろ?
……まぁ、今のところは、確かめようがないからなんとも言えないけどね。
「そうねぇ……ポーションやハイポーションとも少し違うものね……この世界ではポーション等の回復薬は傷や怪我は治せても、頭痛や眩暈等の不調や体調不良には効果がないよの」
「え?それじゃー、これってなおさら何なんだ?……万能薬?」
「万能薬……万能薬と言えば昔から"ドラゴンの血"が有名よね。でも実際にドラゴンの血を飲んだり採取したりって話しは、ここ二十年くらいはないはずよ?」
「え!?そんなに貴重な血なんだ?」
「そうよ。ドラゴン自体がこの世界では数が極端に少ないもの。ユウキ君の世界でドラゴンが居たかはわからないけど、こちらの世界ではドラゴンはめったに人前に現れないわ。今のところドラゴンの生態でわかっている事と言えば、『秘境や魔境と呼ばれている、人や魔物が殆ど足を踏み入れない様な場所や、標高の高くて険しい山岳部、又は、海や湖などの他の生き物がなかなかたどり着けないような深いところなどに生息、活動している。その性格や見た目は、ドラゴンによって様々で、狂暴なものもいれば、温厚なものもいる。ただ全てのドラゴンに共通することは、とても知能が高く、そして強い』……という事くらいかしら。その中でも古龍と呼ばれている大昔から生きているドラゴンは、とても聡明で人や魔物の言葉を理解するらしいわ。それに、他の魔物とは比べ物にならないくらいの強大な力を持っていて、神代の頃から生きている、という話らしいわ?この世界では、色んな物語やたくさんの歴史書に、そう残されているわ」
……タフィーさん、カンニングペーパーか何かを読んでしゃべってたの?ちょっと知識量がやばくないですか?
……へぇー、それにしても一気にファンタジー色が強くなってきたじゃん?
なんというか、楽しみ半分、怖さ半分みたいな不思議な感覚だわ。まぁ、でもそのドラゴンに遭遇するようなことは多分ないから、俺には関係無いか。
それにしても"ドラゴンの血"かぁ……あ、そうだ!
「それじゃー、タフィーさん!これを"ドラゴンの血"として売り出したらどうかな?」
……お金は困らない程度あればいい!……なんて俺や七海があまっちょろいことを思ってても、実際にこの世界では何が起きるかわからないからな。いざって時は己の信念や思想をねじ曲げてでも、七海を守らなくちゃいけない時が来るかもしれないしな。
俺は七海のためになら悪魔にだって魂を売りますよ?
「あら?一度渡したお金が惜しくなったのかしら?それならいつでもお返しするわよ?……うふふ。ごめんなさい、冗談よ。だからそんな『言わなきゃよかった!』みたいな顔をしないでちょうだい。あなた達から頂いたお金はちゃんと使わせて頂きますから、心配しないでね?」
……だんだん、タフィーさんの冗談が暴走していってないか?その内に轢き殺されちゃうんじゃないの、俺?
「もう!タフィーさん!!って、また叫びそうになっちゃったじゃんか!……それで売るとか売らないとかは、なんとなく聞いただけだから別にいいんだけど、実際にこの瓢箪の中身の成分って、調べてくれるところとかってあるのかな?」
……ほら、別にいいって強がり言っちゃったじゃん!
「そうねぇ、薬の"鑑定"は一般的には魔術師ギルドが管轄でしょうね。でもあまりおすすめ出来る所じゃないのよね……他には『トラン』の冒険者ギルドのギルマス(ギルドマスター)も鑑定スキルを持っていたから調べてもらうと良いかもしれないわね?」
「え?冒険者ギルドのギルマスに調べてもらうって、ちょっと話が飛躍しすぎてない?」
……俺、偉い人とか苦手なのよ。学校の先生とか教育指導の先生とか校長先生とか……あれ?全部先生やん!?
「どうしてかしら?なんせユウキ君は冒険者になるんでしょ?その時についでに調べてもらえばいいじゃない?」
「へ?……えーー!?俺、冒険者になるなんて一度も言ったことないんですけどーー!!」
……もう、心ん中でブツブツ言わないで、これからはこんな風にドンドン口に出していこうかな?スッキリするし。
「ふーん。では冒険者以外でどうやってナナミちゃんを養うのかしら?だって、この世界の事、まだ全然わかってないでしょ?」
ーーーぐさっ!ーーー
「…………ぼ、冒険者に俺はなるぞぉーーー!!」
……ついつい勢いに任せて言っちゃったじゃん!
この世界の冒険者って中卒(仮)でも簡単に出来る職業なの?
絶対にブラック案件でしょ、これ?
「うふふ。よろしい!男の子はそうでなくっちゃね!さっき渡した手紙の中にギルマス宛に書いた手紙もあるから寄合所から伝書鳩で『トラン』に飛ばしてくれると思うわ。それと餞別も今更いらないなんて言わないでね?こちらが貰った物の方が大きすぎるんですからね?」
……どんだけ用意周到なんだよ、タフィーさん。"出来る大人の女性"感が半端ないんですけど。まぁ、悪く言えば有無も言わさずに強制執行みたいな感じなんだけどね。
……ふぅ。よし、もう行くか!これ以上ここにいても後ろ髪を引かれるだけだしな!
「はい!……もう何も言いません!……じゃー、世話になったねタフィーさん。この世界で初めて会ったのがタフィーさん達でホントに良かったよ!ありがとう!」
「こちらの方こそありがとうね、ユウキ君。私も……しつこくなるから、もう何も言わないわ?だから、せめて小屋の外で見送らせてちょうだい」
「うん!」
そして俺はタフィーさんが用意してくれた荷物と、自分達の荷物をまとめて小屋の外に出た。あ、もちろん七海の荷物も持ったぞ?
……ちなみにその七海は、クラマのモフモフのお腹に顔をうずめて、小屋の外でごろごろと"のたうち"回っていた。
「きゅー!きゅー!?」
……ふっ。かわいそうなクラマよ。
「ほら!七海、クラマ。そろそろ行こうぜ?」
「……うん!」
「きゅー!」
……か、かわいいね、君たち。パパは君たちのために、これからもがんばるからね?
おっといけねぇ、トム達にもお別れのあいさつをしなきゃな。
「じゃーな、トム、ジェリー!」
「……あ、お、お世話になりました!タフィーさん、トムくん、ジェリーちゃん!」
「きゅー!」
タフィーさん達は小屋の前で横一列になり、こちらを見ている。
そのタフィーさん達の表情を見た俺は、なんだか愛しい様な切ない様な、なんだかよくわからない気持ちになってしまった。
「あなた達、気をつけて行ってらっしゃい!この世界でここはあなた達の実家よ!辛いことがあったら……ううん、なくても必ず戻ってきなさいよ?わかったわね!?」
「……ユウキお兄さん、ナナミお姉さん、いつでも帰って来てね!僕、ホントはあの時に死んじゃうと思ってたんだ……助けてくれて…………う、うう…………」
「……ユウキ兄ちゃん、ナナミ姉ちゃん……またね……う、う、うわーーーん!」
「……みんな……」
「…………ぐすっ、ぐすっ……また、すぐに……帰って……来るね!」
「……きゅう……」
……あーあ。こういうのは苦手だからやめてくれよな……
……前が何にも見えなくなるじゃんか……
「……それじゃあ、行ってきます!!」




