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第一章 第十一話

「……九羅魔(くらま)結界発動から完成までの一連の流れはこうじゃ。うぬが分体(ななみ)に"愛を誓う"と決める。それが発端(きっかけ)となりそれに(ともな)いこの"約束の地"で眠りについていた妾の本体がそれにより目覚める。それを感知した下僕どもが"彼の地"からすかさずこの"約束の地"に転移し、元々この地に蓄えられておった(任意に蓄えていた)生気を使い四方を囲う壁を作り現世と切り離す。その時にその四方の内側、すなわち結界内にいた人間の(たましい)とその(からだ)を結界の術式の一部(はぐるま)にする。(しばら)くすればこの地一帯が現世の(ことわり)を外れ見事な九羅魔結界の完成じゃ……その術式の仕組みが知りたいじゃと?うぬにそれが理解出来るとは思えないがまぁ良いだろう。その仕組みとはこうじゃ……」




 ……俺が少しのあいだ(ほう)けていたら、隣に居る"狐様(ななみ)"が俺から目線をスッと外して突然尋ねてもいないことをつらつらとしゃべり始めていた。……え?なに?誰と喋ってるの?壊れたの?


「あ、あの、狐様?」


 このままではまずいと恐る恐る話しかけると、狐様(ななみ)は俺の方へと目線を戻した。ただよく見るとその顔はさっき手を繋いだ時の七海と同じくらい真っ赤っかだった。


「な、なんじゃ、まだ妾から聞き足りぬのか?時間が差し迫っておると何度も言っておるじゃろう?仕方ないのう。ふむ?眼鏡はどうしたじゃと?ほれ!こうじゃ。亜空間にしまっておったのじゃ!」


 え?……うおーーー!?すげーーーーー!!異世界転生ものが大好きな七海が見たら『……え、え?……あ、アイテムボックス……?』とか言ってビックリするんじゃないか?……って、眼鏡のことなんてもう最初のほうに聞きましたよ!?『妾は千里が見渡せる』とかなんとか言ってたクール狐ビューティーはどこにいったの!?


 ……はぁはぁ、……いやいや、俺も狐様(ななみ)と一緒にテンパってる場合じゃないぞ……


 チューしないといつまでたっても七海の意識は戻ってこない。これは間違いないんだ。

 いい加減覚悟を決めろ優記(おれ)!元々今日七海に告白するつもりだったじゃないか!チューなんてご褒美以外のなにものでもないっ!


 


 ……いやでも流石にチューまでするつもりはなかったわけで……

 ……それも本人不在のノンアポなわけで……


 それに七海の意識があったとしても告白して振られたらそれどころの話しじゃなくない……?


 


 ……ぬええぇぃ!消え去れっ、ネガティブっ!!



 

 こんだけ七海とはちっちゃい頃から一緒に居たんだ。もし異性として俺が好きじゃなかったとしても、同じ人間としてなら流石に嫌いってことはないだろ?それに万が一、人間的にも嫌われていたって後でいくらでも謝れる……はずだろ?それより七海の意識を取り戻すことが何よりも先決だ!よしっ!腹をくくったぞ!!


「狐さ……七海!!」


 そう言って俺は狐様(ななみ)の両肩に手を置き、ちゃんと対面出来るように優しくこちらのほうに身体を動かした。


「な、な、なんじゃ!?」


 俺のその言動と行動に狐様(ななみ)はビクリと身体を震わせ、とても驚いた様子だった。その時に舞っていた桜の花びらと狐様(ななみ)の表情が言葉で言いあらわせないくらいに綺麗だった。


「今ここで言うのは筋違いかもしれないけど……前から、いや、ずっとずっと昔の物心がつく前から七海のことが大好きでした!……今はその時よりも大大大好きです!もし良かったら……良くなくても……お、俺と付き合って下さい!!」


 今まで言いたくても言えなかった悲しき言葉達を、拙いながらも"いまだ!"と全て吐き出し、その勢いに任せて俺は狐様(ななみ)の唇を奪った。






「っ!…………んーーーーーっ!」






 


 その瞬間、頭が真っ白になった。








 七海との初めてのキスはほろ苦い味がした。














「…………………ん?……ゆ、優記、くん?」








 

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