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過保護なお父様

お父様は仕事でほとんど家には居ないし、一人娘とはいえ、たまに帰ってきたら


「調理場のルトガーは絶対にお前に気があるから、あいつがいる時は厨房には近づくな。あの目は絶対に下心がある。」


 とか、私宛に手紙が届けば執事のオリバーに


「見ず知らずの男からの手紙なんか返事を書く必要はない。ティアラの目に届く前に全て燃やしてしまえ」


 って、燃やしちゃってたり


「ティアラにそんな気はなくとも、微笑むだけで可能性があると思う輩もいるのだ。男と目を合わせるな!」


 だとか、ちょっと心配性が過ぎる。気持ちは分かるんだけど、目も合わせるな、とか物理的に無理ですし。大量に届いた手紙を仕分けるのは、お父様の絶対的な信頼を得ているオリバー一人だ。燃やしたらヤバそうなお手紙だけを毎夜ちまちま集めて、たまに帰ってくるお父様に届けるオリバーの背中は、哀愁の光が漂っている。手紙を本当に私の目に通していいのか、お父様の圧がすごいらしい。


 庭園に薔薇を見に行けば庭師の見習いのリーフがいつもの謎のキラキラした例の光を纏わせながら


「この薔薇は僕が育ててるんです。最近はウッド師匠にも綺麗に咲かせることが出来たと褒められて!……この薔薇は、白薔薇と黄薔薇を掛け合わせた物で、お嬢様をイメージして、僕が初めて作った新種の薔薇なんです!」

 とか、短いサラッとした金髪と、昼間の青空のような澄んだ水色の、少し垂れ下がった大きな目をキラキラさせながら、仕事の報告に来る。


 初めて任された仕事が上手く行った時って、みんなに聞いてほしいのよね。分かるわ〜。何だか前世のOL時代の可愛い後輩の事を思い出して、思わずにやけてしまう。


「薔薇も、リーフが毎日頑張ってるのを見てたのね。努力が実って良かったわね。」

 

「良かったです。本当に。」


 リーフが真っ赤な顔をして、照れ臭そうに俯く。ウッドおじいちゃんはなかなか褒めないから、恥ずかしかったみたい。それにしても、この光ってなんなの? そういえば、中庭でいつも昼寝してる人も光ってたな。


 書斎へ向かえば司書の男性や調べ物をしていたであろう軍師や学者、騎士団関係の方が急いで声をかけて下さる。騎士団長の娘なんだから、当然だけれど、彼らに悪意はないんだから邪険にするわけにもいかない。向こうから来るんだからいくらお父様に注意されても、私には避けようがない。


 お父様は、普段は異国の変わったご飯の話を聞かせてくれたり、魔物を討伐した話をしてくれたり、お土産に竜の鱗?で作った護身用のナイフだとか、妖精の羽で出来たオルゴールとか、変わった物をくれたり、最高のお父様なのに、男性関係にだけはちょっと煩い。

 まぁ、この世界に転生してから、男の子から執拗に付け回されたり、プレゼントだと頂いた花束に眠り薬が仕込まれていたり、急に抱きつかれたり色々怖い目にもあってきたので、気持ちも分からなくもない。ただ、そう言うヤンデレ系男子をなるべく刺激しないように私は微笑んでいただけなのだけど、それが好意に受け取られるなんて考えてなかった。


 お父様のいない間に、私に余計な虫がつかないように、と習い事の時間を増やされ、私の自由時間はどんどん減っていった。おかげで勉強もマナーもダンスも音楽も、全て完璧だ。しかし、このままでは結婚どころか友達も出来ない。


 今ではもう自由に動ける時間が、朝食前の小一時間と、家庭教師の授業の合間の十数分くらいしかない。毎日お勉強をしているおかげで、貴族の中での私の評判は、類い稀なる才能に恵まれた、マスカルポーネの女神の愛し子、とか言われているらしい。才能なんかじゃなくて、お父様の束縛と、私の日々の努力と、優秀な先生方のおかげなんだけど。

 実は、茶会にも行かずひたすら屋敷で勉強をする、世間知らずな引きこもり令嬢とか言われてないだろうか?確認しようにも、手紙は全部燃やされてしまって読めないので分からない。今度アンに聞いてみよう。

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