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最終話 「さよなら。さち子」



 今となっては、六郎君には感謝しかない。


 だから本当はあの日、ちゃんと言うつもりだった。「ありがとう」って、こんな私に付き合ってくれて、本当にありがとうって。それだけ言おうと決めていた。ちゃんとお礼を言いたかった。だから、本当はあの日おしゃれして行ったのだって、彼に私と付き合った事を後悔して欲しくなかったから。だから最後は、めいいっぱい可愛くいようと思った。


 でも、あの日の私は最悪で、超ブスだった。けど、六郎君も悪いよね? いきなりプロポーズなんてするんだもん。そりゃ、多少はあったよ。ちょっとケンカして、けど仲直りして。その準備もしてた。てか、そっちを期待してた。




 寂しかったんだよ私? 会いたかったんだよ、六郎君に。



 あの日のプロポーズは、私にとっては別れの言葉だ。





 彼、あの時どんな顔してたのかな?





 別れの言葉は文字だけで来た。スマホに彼の名前が表示されたのを見て、察しはついた。正直、やっぱなって感じ。何だ、意外にあっけない。まあ、そんなもんさ。私を好きだと言ってくれた人がいなくなった。それだけの事。けど、出来れば、もう一度会いたかった。会って謝りたかった。ちゃんと「ゴメンね」って言いたかった。きっと私は、彼の事を傷つけたから。それが一番の後悔で、心残り。


 けど意外にというか、予想通りというか、引きずる事はなかった。結局はそういう事。元々、縁がなかったのだ。六郎君は六郎君。なら、私じゃない。


 最後、その事に気づけてよかった。けど、好きになってよかったと思う。別れる時に、ちゃんと「さよなら」と言えるのは六郎君ぐらいだ。




 

 あーあー好きだったな。





 今は、それだけわかってればいい。





 彼のメールに返信して起き上がると、洗面所に行って冷たい水で顔を洗った。もうヒールの傷もすっかり癒えた。こんな日は、おしゃれして出かけたくなる。


 束ねた髪を解いて、ドライヤーのスイッチを入れた。ブローしながら整えていると、いつも思う。



 口元に掛かる髪って、すっごくウザい。



 今日は休日、まだ陽も高い。

 ちょうどその日にパーマをかけた。

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