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魔界の侵略者  作者: 玻璃跡 紗真
第二章『迷いの森の兄妹』
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第19話 屋敷の主

 エリナが扉に付いているノッカーを鳴らすが中からの反応はない。


「おかしいですね」


 不審に思ったエリナが扉を押すと鍵が掛かっておらず簡単に開いた。


 躊躇ためらいながらもエリナは扉を押し開け、誰もいないロビーへと踏み入れる。


「ごめんください」


 エリナが声を上げるが誰にも届くことはなく、誰もいないロビーに空しく消えていく。


 ルドは辺りを見回し、少女の姿を探す。


 しかし、少女の姿が見つかることはなく、代わりに右側の通路から誰かが話す声が聞こえてきた。


「おぉ。今日もエルは可愛いなぁ。どうした? 抱きついてきてもいいんだぞ。なぜ逃げる?」


「気持ち悪いから。そうじゃなくて、たぶん、お客さん。来てる」


「お客さん? どうして?」


「たぶん、二人。知らない人」


「おかしいな。結界の不備か?」


 会話が終わり、歩く音が近づいてくる。


「エルは何もされてない? 大丈夫?」


「早く行って。待ってる、たぶん」


「本当に?」


「もうっ。早く行くよ」


 足音が途切れる度に、少女の早く。と言う声が聞こえてくる。


 そうして独特なやり取りを終えて、金髪に碧眼の青年と青年と同じ瞳にウェーブの掛かったプラチナブロンドの髪を腰まで伸ばしたさっきの少女が姿を現した。


「こんにちは。お邪魔しています」


 青年の独特なやり取りに戸惑いながらもエリナが挨拶する。


「誰だ? 君たち」


 青年から冷たい視線を送られ、額に脂汗が浮かび上がる。


「私はエリナって言います」


「俺はルド・ロヴネルです」


 エリナの自己紹介にルドも続く。


「ロヴネル……? ……まぁいい。それで?」


 何かおかしなことを言ったのだろうか。


 青年のひっかかりが気になるが、殺されるかもしれないという恐怖で言及する余裕はない。


「旅をしていたのですが、森から出られず急な雨に見舞われまして。泊めていただけないでしょうか?」


 エリナの簡潔な説明を聞き、青年は横にいる少女を一瞥いちべつして問いかける。


「エル。何もされてない?」


「うん」


「そっか」


 少し不満そうな顔をしながら、青年は答える。


「泊めてやってもいい。ただし、エルに手を出せば殺す」


「お兄ちゃん、失礼」


 エルと呼ばれる少女はそう言って青年を宥める。


 二人は青年の言葉の圧に押され委縮していたが、少女が常識人らしいことが分かり安堵した。


「「ありがとうございます」」


 気後れして少し間が空いたが、二人はお礼を口にする。


「二階の部屋でも勝手に使え。僕は暇じゃないんだ、失礼する」


 そう言ってきびすを返す青年とは対照的に、


「じゃあ。私が、案内するね」


 と言って少女は近寄ってきた。


「私、エルシアって、言います。お姉ちゃんたち、よろしくね」


 そう言ってエルシアと名乗る少女がエリナの手を引き、案内を始める。


「そうだ。用事はもう終わってるんだった。仕方ない、僕も案内しよう!」


 エルシアの行動が予想外だったのか、青年は仰々しく身をひるがえして戻ってきた。


 青年の異常な切り替えにルドはエリナと一緒に苦笑いを浮かべる。


「こっち、この階段」


 そう言ってエルシアは広間の中央から伸びる階段を指し示す。


 エルシアに導かれ、階段を上っていくと後ろから黙って青年が付いてきた。


 余程、心配なのだろう。


 取り敢えずは、エルシアにさえ手を出さなければ殺されはしないはずだ。


 彼女を追いかけてここに辿り着いたとは口が裂けても言えない。


 その事実を自覚し、ルドは後ろの青年に話しかける。


「名前を聞いても?」


「ジーク」


 会話の糸口になればいいと思って名前を聞いてみたが、青年は必要最低限だけを端的に答えて口を閉ざした。


「……」


 気まずさを感じているのは自分だけなのかもしれないが、とにかく気まずい。


 前方で楽しそうに話すエリナたちとの温度差が激しい。


「妹さん可愛いですね」


 後ろに気を使ったのかエリナが振り返ってジークに話しかける。


「そうだろう。エルシアは自慢の妹だ」


 エリナに妹を褒められ、ジークは破顔した。


「俺も可愛いと思う」


 エリナの作った流れに乗り、ルドは素直な気持ちを述べる。


「魔術で潰すぞ」


「なんで!?」


 気に障ることを言った覚えはないが、本当に潰されかねないので口を閉じる。


 そうして案内され、ルドたちは部屋に到着した。

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