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完全無欠の青春傍観者  作者: 十六夜烈也
第一章 一年一学期編
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第八話 部活動勧誘ー後編ー

涼介の言葉に神野先輩は驚きのあまり、口を開けて黙ってしまう。手で口を塞いでいるのだが、涼介には先輩が口を開けてポカーンとしている様子は分かる。


「嬉しい……!本当にいいんですか?矢野君?」

「えぇ。放課後に予定を作らず日々を過ごすよりも、誰かの役に立つ方が気分はいいですから。それに、ここまでの言動で先輩が良い人だということが分かったので、なおさら助けてあげたいと思ったんです。」

「そんな、良い人だなんて……。ですが、ありがとうございます。素敵な後輩を見つけれて私は本当に嬉しいです。では、入部届の紙を渡しますね。」


神野先輩は引き出しの方に向かい、入部届を取ろうとする。涼介が受け取るのを待っていると、彼の携帯が鳴り始めた。


「俺だ、和也か?」

「あぁ、トイレから帰って来たらお前の姿が見当たらなくてな。入学式の日連絡先交換しといてよかったぜ。それで、今どこにいるんだ?」

「勝手に行動してしまってすまない。実は今、部活棟二階の家庭科部の部室にいるんだ。」

「家庭科部?涼介、お前入部すんの?」

「あぁ。」

「待ってろ、俺もそっちに向かうわ。」


電話が切れる。涼介は和也が来るのを待つことに決めた。


「今の電話、お友達ですか?」

「はい。同じクラスの男子です。」

「もしかして私、涼介君を長く引き止めてしまいました?」

「いえ。大丈夫ですよ。連絡が取れて、アイツがここに向かってきますから。」


涼介は神野先輩を気遣ったが、神野先輩人が良いため申し訳ない気持ちなってしまう。その気持ちを察して涼介は会話を持たせようとする。


「では先輩、明日に担任から印鑑をもらって、放課後に入部届を渡しにまた家庭科部へ顔を出しますね。」

「はい、よろしくお願いします。本当にありがとうございます。」


そして間がよく和也が到着する。


「涼介、待たせたな。」

「案外早かったな。そう言えば、昼食の時にも言ってたな。運動は何でもできると。」

「何でも、とまではいかないが、だいたいはそつなくこなせるぜ。で、この人は?」


和也の問いに涼介がこの人は……と神野先輩を紹介しようとするが、神野先輩は自ら申し始める。


「初めまして。私は家庭科部三年の神野と申します。矢野君のお友達ですね?」

「はい。俺は1年6組の山本と言います。他に部員はいるんですか?」


和也が問うと、涼介の入部に喜んでいた神野先輩は少し悲しげな顔になる。だが、涼介が入部決意をする前の顔とは全然違う。


「いえ、私と矢野君を含めて二名しかいません。四月が終わるまでに部員を三名以上にしなければ、廃部になってしまうんです。矢野君はそんな私を助けるために、入部を決めてくれたんです。」

「へぇ、そんな決まりがあったんすか……」


和也も廃部の事実に少し驚く。だがすぐに口を開く。


「三人以上必要ってんなら、俺も入りますよ。涼介同様に、俺も何か部活に入るつもりなかったっすから。涼介いるところに俺在りってことで、俺も入部していいっすか?」


涼介は勝手に入部することを決め、和也を巻き込むつもりはなかったため、和也の言葉に涼介は驚く。そして神野先輩も二人目の部員を見つけることができ、涼介の時のように手で押さえながら口を開ける。


「もちろん、大歓迎です。二人とも、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。」


神野先輩は涙を流しながら礼を述べる。その姿に、涼介と和也は「良かったな」とアイコンタクトを取り、二人は先輩をなだめた。

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