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完全無欠の青春傍観者  作者: 十六夜烈也
第一章 一年一学期編
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第七話 部活動勧誘ー前編-

午後の授業が終わり、放課後となる。

放課後も昼休み同様、中庭で部活勧誘が行われている。

涼介と和也は何かの部に入るつもりはないが、どうせ放課後することないから勧誘初日くらい見てみないか?と和也が提案したため、二人は下駄箱で上靴を靴に履き替え、中庭の方へ向かう。

ちなみに瑠美と青山はもう入る部を決めているため、放課後になると二人はそれぞれの部活へ見学に向かった。


授業が終わって間もないというのに中庭は勧誘の掛け声で既にお祭り騒ぎになっている。チラシや看板を持って大きな声で勧誘する者や、自分たちの部活の様子を実際にやって見せる者たちで溢れかえっている。


「昼休みで少し見かけたが、放課後になるとさらに激しい様子になってるような……」

「押し込まれてケガする生徒なんか出るんじゃないか……?」


生徒会と風紀委員が揉め事にならないよう見回っているが、彼らだけではこの騒ぎを抑えることはできないだろう。


「すまない涼介。トイレ行ってくるから少し待っててくれないか?授業終わって行くの忘れてたわ。」

「あぁ、じゃあここから勧誘の様子を眺めて待っておくよ。」


和也はすまん、と言って小走りで去っていく。涼介はベンチにでも座って眺めておこうと思ったが、ある女生徒が集団に押され、倒れるのを見かける。チラシを落としているため、勧誘でもしていたのだろうか。しかしこのままでは彼女が倒れていることに気づかない者に踏まれてしまうかもしれないため、涼介はすぐさま助けに向かう。チラシを全て回収し、女生徒に涼介は渡す。


「大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございます。昔から体が弱くってこういう所には行きたくなかったのですが、どうしても部員を増やしたくて……」

「先輩は、何部なんですか?」

「私は家庭科部に所属しています、三年の神野(かんの)と言います。よろしければ、入部を検討してみませんか?」


そう言って神野先輩は涼介が集めたチラシを一枚、涼介に渡す。涼介はチラシを受け取るが、申し訳ない顔をして応える。


「すみません、俺は何かの部活に入るつもりは無くて……。ですが、家庭科部の活動内容は気になりますので、よろしければ教えてくれませんか?」

「えぇ、構いませんよ。ここで立ち話もなんですから、よければ部室に行きませんか?もちろん、拘束なんてことはしませんから。」

「では、よろしくお願いします。あっ、俺は、1年6組の矢野と申します。」

「よろしくね矢野君。では行きましょうか」


涼介は和也を待っていたことを忘れ、神野先輩について行く。部活棟の方へ向かい、二階の隅の方へ行き、家庭科部とぶら下げられた札のある教室へ案内される。


「ここが、家庭科部の教室です。どうぞ、お好きな椅子に座ってください、お茶を出しますから。」


そう神野先輩が言うと、涼介はお構いなくと言い、側にある椅子へ座る。神の先輩は温かいお茶を用意し、どうぞ、と言いながら涼介へ渡す。そして神野先輩は話し始める。


「家庭科部はね、一週間で三回活動日があって、名前の通りお裁縫みたいなことをしているんですけど、時々テーブルゲームなんかもしているんです。」


涼介はそうなんですかと相槌を打つ。そして神野先輩は少し困った顔をして話を続ける。


「去年までは先輩たち合わせて四人で活動していたのですが、三人とも卒業されて私一人になっちゃって……。だから、四月中に私合わせて部員が三人以上いないと廃部になってしまうんです。先輩たちとの思い出が残ったこの部を、私は絶対に潰したくない。」


神野先輩は自らも言っていた通り、体が弱い。身長は平均より少し低めという位だが、同じ身長をした運動部の女生徒と比べると少しやせ細っている。そんなひ弱に見える彼女であるが、最後の言葉には力強さが込められていた。その様子に涼介は少し驚く。


「そうだったんですね……。」


そう言葉を残し、涼介はお茶をすすって少し考える。


「先輩は、このまま廃部になってしまったら、今後どうするおつもりですか?」

「そうですね、私はもう三年だから秋頃には引退すると思いますけど、ここで部が潰れちゃったら少し引退時期が早まったってことでおとなしく引退すると思います。ほんの数か月しか差はないけど、それでも最後まで活動したかったと後悔するけれど……。」


その言葉を聞き、涼介はある決心を決めると同時に腰を上げ、立ち上がる。


「先輩、俺で良ければ家庭科部に入部させてください。もちろん、俺が入ってもまだ二人だけなので部が存続できるか保証できませんが……」




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