第四十五話 中間試験(中編)
中間試験は3日目、後半へ入っていた。
前半の2日間で生徒たちは試験の形式がどんなものであるかを把握した。
授業で学んだ教科書の範囲から基礎問題、応用問題が出題されているのだが、各教科決まって最後の大問だけは難易度の高い問題が出題されていた。大学入試の問題、それも上位の大学の入試の問題を引っ張り出してきているのである。大問には何年度に出題されたどこの大学の問題かまで記されていた。
配点はそこまで高くないため教科書の内容だけ忠実に対策すれば入試問題を無視してもそこそこの高得点は得られる。
だが学年一位を狙う者にとっては落としてはならない問題になってしまう。
一位と二位の差は確実に僅差である。そのわずかな点数の差が生まれるのは入試問題の是非である。一位を狙う者は基礎問題を落とすというケアレスミスは確実に潰し、応用問題も差をつけるために抜かりなく対策をする。よって知っていなければ対策のしようがない入試問題で点数の差が生まれるのである。
白雲高校の定期試験に出題される大学の入試問題は、何も理不尽に点数を下げるために設けられたものではない。試験範囲の内容に則った問題であり、難しく感じるだけで正解できない訳ではない。もちろん正解するには基礎と応用を完璧に完成させ、さらには解くための閃きも必要になってはくる。
***
藤堂は知らなかった。いくら名の知れた進学校とは言え、大学の入試問題、しかも難関大学レベルの問題を定期試験で出題してくるとは思わなかった。
初日の一限である。科目は数学Ⅰ。
最初の小問は基礎問題ばかりである。赤点回避を目指す者たちへの救済問題ともいえる。
藤堂のペンの動きは止まらず、すらすらと解答用紙へ答えを記入する。
続いて問題数は残り半分を切る。完全に応用問題と言える難易度に上がる。それでも藤堂のペンは止まらない。
(進学校の定期試験と言っても、このレベルか)
藤堂は小学生の頃から成績は良かった。少し勉強するだけで学力は身に付き、昔から勉強には困らなかった。唯一彼が真面目に勉強と向き合っていたのは高校入試の受験勉強の時である。十分に合格できるレベルになっているものの、彼は慢心せず、倍率も高いと言うこともありどこの高校でも確実に合格できるレベルになるまで勉強した。そして彼は学年一位の座に君臨したのである。
だがそれは高校入試レベルの話である。彼は大学入試のレベルを知らないし、最近まで高校入試を目標に勉強していたのだから、大学入試など彼はまだ考えたことも無かった。故に対策も何もしていにのである。
藤堂はいよいよ最終問題にある。彼は問題文を読んで柄にもなく動揺を示した。
『……を求めよ。'08 慶聡大学』
(なっ……!大学入試の過去問だと!?しかも難関私立の慶聡大学!?)
大学名に考えを捕らわれたため、藤堂はもう一度問題文を読む。問題に集中するが解法が分からない。問題は図形問題で何を求めたいのかは把握できるがどう計算すればいいのか分からない。ここで初めて藤堂のペンは止まった。
彼はここで一度時計を見る。残り時間は十分を切ったくらい。残り時間全てを使っても、いや、大学入試の勉強をしない限りはこの問題は解けないと藤堂は悟る。そして藤堂のとった行動はこの問題を諦め、解いてきた問題の見直しである。手応えは完璧ではあるが万一の場合を考えて見直しを始める。
一通り見直しが終わり、ミスが無いことを確認すると試験終了のチャイムが鳴る。
(恐らく、問題数からして最後の入試問題の配点は低いはずだ。高校に入学したての俺たちが解ける訳ない。それに大学入試の過去問を出すなんて数学くらいだろう……)
しかし藤堂の考えは甘かった。全ての教科が数学と同じように最後の大問に入試問題を用意した。一日目の二科目でどちらも大学入試問題が出題され、試験二日目から藤堂は名の知れた進学校である白雲高校なら全教科に入試問題を出題されるかもしれないと考え、身構えはしたが対策はできなかった。
こうして藤堂は入試問題を無視してしまったが、それ以外の問題は完答できた手応えを感じ、高校初めての定期試験を終えた。
(俺が解けなかったんだ。アイツも仮に頭が良かったとしても解けなかっただろうな。だから、最後の問題以外完答している俺の勝ちだ!)




