第四十四話 中間試験(前編)
白雲高校の中間試験は5月下旬に行われる。
一年生の試験科目は現代文、古文、数学Ⅰ、数学A、C英語、英語表現、化学、地学、世界史、現代社会の10科目である。授業一か月分の内容しかないため少し対策すれば高得点を狙えそうだが、科目数が多い。成績上位者になるためには全科目抜け目のないオールラウンダーになる必要がある。
試験期間は4日間に渡り、一日に2~3教科試験が行われる。勉強が苦手な生徒は一夜漬けをすれば赤点は回避できるかもしれないが、4日間連続で行うのは精神的にも体力的にも酷であろう。
試験初日の朝。涼介は駅で瑠美と青山と合流した。試験範囲発表から試験終了までの期間、部活動は中止になるため範囲発表の日から入学したての頃の様に和也を合わせて四人で再び登下校をともにしていた。
「二人とも、試験の準備はばっちり?」
試験の話をし始めたのは瑠美であった。
「私は、あらかじめ範囲が決められていたからそれなりに対策してきたよ!」
「アタシも、自信があるって訳じゃないけど、対策だけはしてきたわ。涼介君は?」
「俺もそんな感じかな。赤点だけはとらないよう気を付けるよ。」
「じゃあ私たちは大丈夫そうだね。問題なのはあの馬鹿なんだけど……」
瑠美が馬鹿と言う人物が後ろから自転車をこいでやってくる。
「うっす……」
「珍しいな和也。元気がないな?」
「あぁ、一夜漬けしてきた……」
「うっわ、馬鹿は初日から一夜漬けかますのね!」
「なんだと……」
瑠美の煽りにいつもの和也なら食って掛かるが、寝不足なため元気無さげに反応する。
「山本君、寝不足なままテスト受けて大丈夫なの……?」
「俺短期記憶ならとくいだからよぉ。寝ずに直前で詰め込めば何とかなるんだ。家帰ったら速攻で寝て、また夜中に起きて勉強するぜ」
「何でテスト期間に昼夜逆転するのよ……」
瑠美はそう突っ込み、青山も苦笑いしていた。二人は真面目であるため部活だけでなく勉強も両立するため、テスト範囲発表されてから遅くならない時間まで勉強をして対策をした。一方和也の様に勉強が苦手か、不真面目な生徒は直前で詰め込むという者が多いだろう。登校している周りの生徒の中に、眠い目をこすりながら歩いている生徒がいる。テスト期間に昼夜逆転するのはそう少なくないのかもしれない。
四人が教室へ着くと、いつもは溜まり場を作ってホームルームが始まるまで談笑しているクラスメイト達が今日は各自の机に着いて教科書やノートを見返したり、問題を出し合ったりしていた。
涼介達も席へ着き、テスト前に復習をし始める。
数分経って、九条先生が教室へ入ってくる。
「おはようお前達。今日から四日間、中間試験を行う。6月末の期末試験の成績と合わせて一学期の評価になる。故に両方の試験で赤点を取れば夏休みに補習を行うことになる。中間試験は期末に比べて範囲が狭いからな。今回の中間で貯金を作るようせいぜい頑張れ。では以上。十数分後にテストを始めるから、それまで教科書やノートでも見直していろ。」
先生の指示に従い、クラスメイト達は再び復習を始める。
試験開始数分前になると、先生が問題用紙、解答用紙を配り始める。
各科目共通で試験時間は50分で間の休憩は10分。試験は午前中で終わる。
先生の「始め」という合図で生徒たちは裏返してある問題用紙を表にし、問題を読み始める。各々がペンを走らせ、静寂な教室内ではただそのペンの音だけが聞こえる。先生が「止め」と言うと一斉にペンを置き、後ろから解答用紙を回し、最前列へ解答用紙を集める。先生が各列から解答用紙を回収し、枚数を数え終わって確認が取れたら休憩に入る。これが一日に2、3回、4日間行われる。
初日は2科目しか試験が無かったため。11時前には終了した。
涼介の隣の席に座る瑠美が、涼介と和也に向かって話しかける。
「とりあえず初日お疲れー。よかったらどこかでお昼ご飯食べて行かない?」
「俺は構わないよ。和也はどうする?」
「わりぃ、開放感がきた瞬間眠くなってよぉ。先に帰って寝るわ。」
「じゃあヒカリも誘って三人で行く感じでいいかな?」
「ああ。それじゃあ和也、また明日な。一夜漬けも程々にしないと、初日からこれでは4日間も体が持たんぞ。」
「大丈夫だ涼介。体力だけは自信あるからよぉ……。それじゃあまた明日な」
和也は先に教室を出る。涼介は瑠美について行って青山の席へ向かい、青山も合流して下校を始める。
三人は駅の近くにあるファーストフード店へ入った。食事をしながら今日の試験の話をする。
「そんな高得点ってわけじゃないけど、とりあえずは大丈夫かな~」
「私も!これだったら乗り切れそうだよ!」
「涼介君は?」
「俺は……」
涼介が答えようとすると三人の前に三人組の男子が近寄ってきた。藤堂達である。
「やあ、矢野君。君はこんな所で休憩をしていて大丈夫なのかな?」
「えっ、新入生代表の藤堂君!?」
「君たちは矢野君のお友達かな?邪魔して悪かったね。それじゃあ矢野君。くれぐれも僕を退屈にさせるような結果だけは残さないでくれよ。」
藤堂は取り巻きと共に店を出て行った。
「えっ、何!?涼介君って藤堂君と何かしてるの!?」
「前に俺が藤堂に呼ばれた時、生徒会の勧誘を断ったことで注意されたことは知っているよな?」
「うん。話してるのを聞いてたから……」
「実はそれだけじゃなく、中間試験で高得点を取るよう言われたんだ。生徒会長に声をかけられたんだから、せめて会長を失望させるような結果だけは残すなと言われたんだ。」
涼介は藤堂と勝負をしていることは言わず、怪しまれないように話を改ざんした。
「へぇー!涼介君も大変だね……」
「悪いのは俺だから罪滅ぼしって訳ではないけど、白雲高校にふさわしい生徒であろうと努力だけはするよ。」
「私も勉強頑張らなくちゃ!」
涼介の話を聞いて青山がやる気を出す。
三人は店に長居はせず、食事をとり終わったら明日の試験の勉強をするためにすぐに帰宅した。




