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完全無欠の青春傍観者  作者: 十六夜烈也
第一章 一年一学期編
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第四十一話 美人な保健の先生とのお話

曜日はついに週末、金曜日になる。

涼介は昨日の放課後、無難に授業を受け終わった後和也と一緒に部活へ行き、神野先輩と三人でまた編み物の練習をした。小一時間程活動し、17時過ぎには下校した。


そして今日この金曜日。前日、寺島先生に放課後に保健室へ来るよう呼び出されている。本人はカウンセリングと言っているが、表向きの理由だろう。先生が本当に話したがっている内容は道場出身者として、姉弟子弟弟子の件についてだろう。涼介は九条先生が寺島先生にこの件を話したのだろうと推測する。

そう考えながら涼介は今、保健室に向かって廊下を歩いている。和也は涼介が呼び出されていることを知っているが、放課後になると涼介は改めて今日は一緒に下校できないことを伝える。和也は「あいよ」と返事をし、了承してくれた。


保健室前に着くと、ドアノブに「教員外出中」という札が掛けられていた。一応、今日この時間に来るよう言われたので、涼介は2回ノックをする。すると「どうぞ」と返事が返ってくる。


「失礼します。」

「お疲れ~。待ってたよ」

「表に『教員外出中』」と掛札があったのですが。」

「あー、他の子が入って来ないようにね!」

「もし生徒が入ってきたらどうするのですか。」

「その場合は掛札を戻し忘れたって言えばいいのよ。」

「はぁ……」

「じゃあ、そこ座って!」


先生は目の前に置いている椅子に座るよう指示する。涼介は座ろうとしたが一瞬躊躇する。


「どうしたの?」

「いえ。一言申し上げるとすれば、先生のその恰好は思春期の男子高校生にとっては少し刺激的過ぎるかと。」


先生の格好は白衣にピンク色のインナーを着ており、下は黒のミニスカートと同じく黒の二―ハイソックス。スタイルの良い先生の体のラインがはっきりと表れている。


「先生が魅力的に見えちゃった?」

「いえ、自分はそういったことに関心を持たないので。」


涼介は本当に関心が無さそうに真顔で、言葉も動揺せず話す。


「酷いなぁ。先生自信無くなっちゃうなー?」

「それで、今日俺が呼び出された理由は何でしょうか。」


一回咳払いをして涼介が質問をする。


「知ってると思うけど、道場の件でね~。アヤメちゃんから聞いたよ」

「やはり九条先生から伺っていましたか。」

「アヤメちゃんうれしそうだったよ~。何でもできる超人な弟弟子ができたって。感情が表に出ないのが玉に瑕って言ってたけど、本当だね!」


涼介は色々とツッコミたかったが、何から言えばいいか分からなくなり、黙り込んでしまった。


「先生も道場出身者と霧島先生から聞き挨拶に行こうと思っていたのですが、遅れてしまいすみません。」

「そんなのいいのよ。今こうして話してるし。矢野君、というか私は涼介君って呼ぼうかな。涼介君は私に聞きたいこととかないの?」

「そうですね……。先生が道場に入った理由をお聞きしてもよろしいでしょうか。」


涼介は霧島先生から彼女が道場に入った理由は痴漢対策と聞いている。だが、そんな理由で道場を卒業できたとは思えない。


「昔から歩いていると声をかけられることが多くてね~。その対策かな。」

「それだけ……ですか?」


涼介はジッと先生を見つめる。先生は驚いて目を見開くが、そこからさっきまでと違い真剣な顔になる。


「弟弟子である涼介君になら言おっかな。」


ふぅーっと一息吐いて先生は話し始める。


「私ね、小学生の頃強盗に遭ってね。」

「強盗……ですか。」

「うん。その時家には私と母しかいなくて、対して強盗は男三人。その強盗は金品を盗むだけじゃなく、母に乱暴をしてね。私は母に隠れるよう言われて、隠れて見るだけで何もできなかった……。」


机に置いてあるコーヒーを先生は一度飲む。涼介は真剣に聞いているため今保健室内は静寂である。先生がコーヒーカップを器に置く時、カップと器の「カッ」という衝撃音が部屋に響き渡る。


「私はただ泣くことしかできなかった。それで、強盗が出て行った直後、今度は霧島先生が家に入って来たの。偶然先生が強盗が家から出ていくところに鉢合わせてね。先生は捕まえてくれて彼らを動けなくした後、私たちを心配しに来たの。」


先生は頭の中でその日を再び思い出す。



「あなたは……」


ボロボロになった寺島先生の母が目の前に現れた霧島先生に声をかける。


「私は霧島です。怪しげな男たちがお宅から出ていくのを見かけましたので、捕まえました。通報もしましたので直に警察もかけつけます。」


先生の母は涙を流しながら「ありがとうございます」と繰り返し言う。


「それで今、お宅には奥さんだけですか?」

「娘が一人……押し入れに隠れています……」


女性が指さす方向を寺島は見やり、そこへ向かう。押入れを開けると一人の少女が泣いたまま動けなくなっていた。


「嬢ちゃん、大丈夫か?」

「あなたは……?」

「俺は霧島大剛。悪い人はもうやっつけたよ。」

「ほんとに……?」

「あぁ。お巡りさんもやって来るよ。」


霧島が優しく声をかけると、安心した少女は霧島へ抱きつき、大声で泣き始めた。


「ごめんなさい……。私は見ることしか……できなかった……!」

「賢明な判断だよ。もしその場へ出ていれば嬢ちゃんだって何をされていたか分からなかったんだから。」

「私が弱くて……何もできなかったから……!」


悲しみの中に怒りと悔しさの感情が現れ、霧島の服を掴んでる手がより強く霧島の服を握る。小さい体であるのに尋常じゃない力が少女から出てきているのを霧島は気づく。


「なぁ嬢ちゃん。強くなりたいか?」

「私は……強くなりたいっ!」

「なら俺が嬢ちゃんを鍛えてやる。お母さんを守れて、誰にも負けなくなるくらい強くしてやる」

「うん……!」


そこから少女は毎日霧島道場へ顔を出した。道場に通い続け、女性ながらも道場内一位二位を争う最強の地位に上がった。その一位を競い合った相手は自分よりも全然背の低い小学生くらいの、黒髪の長い女性であった。



「っていう感じで、気づけば道場卒業しちゃってたのよね。まぁでもおかげで痴漢も撃退する少し強い女性にはなれたけど。」

「道場出身だと、その強さは少しどころではないと思うのですが……。」

「ふふっ。涼介君はどうして道場に入ったの?」

「俺も先生と同じ感じで、家族を守りたかったからですよ。」

「じゃあ私たち、似た者同士だねっ!」


涼介は軽く微笑み「はい」と返事をする。


「いやー!すっかり話し込んじゃったね!帰ろっか!」

「お話しいただき、ありがとうございました。ではお先に失礼します。」


涼介が立ち上がると先生は涼介の手を取る。


「えぇ~?こんな綺麗な女性を送らず先に帰っちゃうの?痴漢に遭ったらどうするの~?」

「先生ならば大丈夫だと思われますが。あと、先生は車で出勤しないのですか?」

「鋭いね涼介君は。一緒にドライブしながら帰ろうと思ったのに。」

「教師と生徒がそこまで親密になるのは、いささか問題になると思います。」

「お堅いなぁ~。」


先生は口を膨らませる。普通の男性ならこのしぐさにやられているだろう。


「それでは、失礼します。」

「うん、ありがとね~!」


先生は椅子に座って笑顔で手を振りながら涼介を見送った。

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