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完全無欠の青春傍観者  作者: 十六夜烈也
第一章 一年一学期編
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第四十話 美人な保健の先生からのお誘い

藤堂から勝負の申し込みをされて翌日。

瑠美と青山は部活の朝練があるため、相変わらず涼介は学校の最寄り駅から和也と一緒に登校する。

先週の木曜は体力測定、そして金曜は模試であったため、木曜と金曜の普通の日課を送るのは今週が初めてであった。

午前中の授業、涼介は藤堂の勝負をどうすれば無難に終わらせることができるか考えていた。まず、前提条件として今回の勝負は勝たなければならない。敗北し、生徒会に入ることになれば知名度は上がるし、それだけでなくあの藤堂と活動を共にしなければならない。生徒会を引退する時まで藤堂と付き合い続けるなどある意味一番面倒かもしれない。

次に考えることは勝負に勝利した後の処理。自身が学年一位であるため負けることなど考えておらず、加えてプライドの高そうな藤堂は負けたとなれば何を言ってくるか分からない。「イカサマだ!」とか「もう一度勝負しろ!」など一言言ってくるに違いない。「二度と関わらない」という涼介の提示したルールに従えと言っても引き下がらないかもしれない。


(はぁ……面倒な奴に関わったな。まぁ来月の話だから今は深く考えないでおくか。)


考えをいったん辞めて授業に集中する。としようとしたが、チャイムが鳴り授業終了となった。まだ三限目の終了であるため、これから四限目である。科目は体育。涼介達6組の生徒は5組の生徒と授業を共にすることになる。今回の体育は女子は体育館、男子は外の運動場。

授業が終わり、先生が退出したのを見て和也が「更衣室行こうぜ」と誘ってきたので涼介はそれに応じて更衣室へ行き、体操着へ着替える。


着替え終わって男子は外で集合する。ジャージを着た担当の体育教員が現れ、今回は、というか来月まで体育はサッカーをするらしい。6チームに分かれ、4チームが試合をし、残りの2チームがそれぞれの試合の審判をする。

チーム分けは番号順に整列している今、先頭の人から順に1~6まで数字を言い、6を言い終わると次の人はまた1から数える。自分の言った数字がチームの数字になる。

6組の男子は20人。涼介の次の出席番号である和也は涼介とは同じチームになれない。

和也まで数字を数え終わりチームで集まり始める。

涼介の言った数字は1。よって1を言った6組及び5組の人とチームを組むことになる。

5組の人とは初対面であるため、誰かがまとめない限り気まずい雰囲気になるが、涼介のチームではあの男がまとめ役になった。


「それじゃあ1番のみんな!よろしくね!」


直樹である。直樹は体力測定で6組男子をまとめ上げた男子の中の出席番号1番である。直樹が指揮を高めることで初対面である生徒達もやる気を出し始めた。


「僕らは一試合目からプレイすることになる。とりあえず、ゴールキーパーをやらないといけないんだけど、誰かやりたい人はいるかな?」

「じゃあ俺がやるよ。高校からサッカー辞めたけどよ、中学までキーパーしてたから」

「そうなんだ!じゃあよろしく頼むよ!」


5組の生徒がキーパーをすることになり、他の男子を直樹がポジション指示する。涼介は前線でフォワードになった。試合開始前に一応運動が苦手だと涼介は直樹に申告する。


「直樹。一応言っとくが、俺はあまり運動が得意じゃないぞ?」

「大丈夫。シュートを外しても誰も怒ったりしないから!気楽に楽しもう!」

「わかった。やれるだけやってみるよ」


対戦相手は2番のチーム。つまり和也がいる。和也はキーパーのポジションに立っていた。

両チームがポジションに着いて、試合が始まる。

これはサッカー部による試合ではなく体育の授業の一環としての試合である。

故に動きが素人な生徒は多く、自分の所へボールが来たらとりあえず前に蹴るという戦法がお互いに続き、後半になってもスコアは動かなかった。

そして試合終了の直前。ディフェンスにいた直樹がボールをカットすると、一気に前線にいる涼介の元へロングパスが届く。


(中々の精度だな。高校一年にして低弾道の正確なパスを打つ奴はいないだろう)


「頼む!涼介君!!!」


直樹がパスすると大声で「頼む!」と言われる。

ボールをトラップし、シュートを打つモーションに入る。


「止めるぜ!涼介!」


完全にキーパーの和也と一対一の状況。


(決まる決まらないにしろ、日頃の鬱憤も込めて全力で蹴るか。和也には申し訳ないが)


ありったけの力を込めて涼介はシュートを打つ。速すぎるボールに和也は反応が遅れるが、何とかボールに手が触れボールは外へ出た。そして試合終了となった。

整列して礼をする流れなのだが、和也がゴール前で手を抑えている。涼介のボールを止める際、無理をし過ぎたのだろうか。


「和也、大丈夫か?」

「あぁ、少し突き指になっただけだ。とりあえず保健室行ってくるわ」

「なら俺も行く。一応、原因を作った当人だからな。」


和也に涼介は同行することにした。直樹に事情を伝え、直樹も「僕も行くよ!」と言ったが次の試合の審判をしなければならないため付き添いは涼介しか行けない。


保健室へ着くととてもきれいな女性が白衣を着て事務作業をしていた。


「あら。体育で怪我でもしちゃった?」


二人が体操着を着ていたため、状況を先生は悟った。


「おい涼介!この人めちゃくちゃ美人だぞ!」

「あっ、あぁ、そうだな……」


小声であるが和也は十分騒がしくなった。

先生の白衣に付いている「寺島」という名札を見て涼介は思い出す。


(ん?保険の教員で名前が寺崎ということは、この人がもう一人の道場出身者か……?)


「で、今回はどうしたの?」


おどおどしている和也に先生はもう一度用件を聞く。


「あっ、はい!キーパーのサッカーで突き指!じゃなくてサッカーのキーパーで突き指してしまって!」

「あら、そうなの。見るからこっちにいらっしゃい」

「はっ、はい!失礼します!」

「もう一人の君は付き添いかな?」

「はい。シュートを打ったのは俺でしたから。」

「だから涼介は悪くねぇって!」


和也が「涼介」という名前を口にすると、寺島先生が反応する。


「もしかして君、矢野涼介くん?」

「はい、そうですけど……」

「あー!君がアヤメちゃんの言ってた!」

「え!?涼介知り合いなのか!?」


やはり九条先生が自分の事を話していたか、と涼介は思った。


「すみません。人前で自分の事をあまり話されたくないので、また別の機会にしていただいてもいいですか?」

「いいよー。じゃあ今日の放課後にでも話さない?」

「部活動があるので放課後は無理です。」

「もしかしてアヤメちゃんの部活?」

「まぁ、そうですね。」

「じゃあ明日は休みだよね?明日の放課後は?」


(この人と一度話をすることは逃れられそうにないな……。まぁ道場の後輩として一度くらいは挨拶しなければならないか)


「……わかりました。」

「やったー!じゃあ明日の放課後ここで待ってるね!」

「えぇ!?俺も行きてえ!」

「和也。まだ指の治療が済んでいないだろ?」

「あっ、ごめんね!湿布用意してあげるから!」


寺島先生は一人で勝手に盛り上がっていたため和也の治療を忘れていた。

湿布を貼ってもらい、授業に戻るため二人は退出しようとする。


「湿布あざっした!俺も明日、またここに来てもいいっすか!?」

「んー、ごめんねー!矢野君とはカウンセリングってことで二人で話したいから!」

「おい涼介!?羨ましいぞ!?」


(今週は本当に長いな……)


「戻るぞ和也。では、失礼します。」

「じゃあ明日待ってるからー!」


涼介に連れられて和也も保健室から出る。


「おい涼介!あんな美人の先生とどんな繋がりがあるってんだよ!?羨ましいぞ!しかも二人っきりで話すなんてデートかよ!?美人からの誘いなんて羨ましいぞ!」

「落ち着け……。九条先生から俺のことを聞いたとか言っていたから、九条先生が俺のことを話したんだろう?成績不振で目をかけられてるから寺島先生に愚痴でもこぼしたんだろ?」

「あー、涼介アヤメちゃんに進路指導室に呼び出されてたんもんな。怒られたんだっけ?」

「まぁ、そんな感じだ」


それから運動場へ戻るまで、涼介は和也から羨ましいと言われ続けた。

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