第三十九話 勘が良い?和也
藤堂との話し合いが終わり、三人が立ち去って行くのを見てから涼介も歩き始め、教室へ戻る。教室へ着くと和也や瑠美からだけでなく、主に女子を中心に尋問された。
「ねぇ矢野君!藤堂君と何話してたの?!」
ある女子がそう口を開くと他の女生徒も「私にも聞かせて」と便乗してくる。行き場のない涼介は質問に答えざるを得なかった。
「生徒会に勧誘されたのは知っているだろう?」
「うん。だって黒羽先輩と白露先輩が直接来たんだから!」
黒羽会長と白露副会長は男子だけでなく女子たちにも人気があるらしい。現に今二人の名前を女生徒が口にした途端、女子たちは目を閉じて頬を赤くしている。まるで男性アイドルに萌えているかのように。
「俺は会長の誘いを断ったんだ。分不相応だって。白露副会長と入学式の日偶々知り合ったから、そのおこぼれで誘われただけだろうから。」
「へぇー!そうだったんだ!で、藤堂君には何て言われたの?」
「藤堂はみんな知っている通り、成績は学年一位で優秀だろ?それで会長にスカウトされて生徒会に入ったらしいんだが、俺は藤堂と違ってその誘いを断っている。それを藤堂はあまり良く思わなかったらしくてな。もったいないと少し怒られたんだ。」
涼介は藤堂の裏の顔を言い振らさなかった。言ったところで誰も信じないだろうし、デマを流したと噂になれば涼介自身が藤堂から逆にデマの噂を流され、面倒な事態になり兼ねないのである。
「確かに生徒会の勧誘を断っちゃうのもったいないよねぇ~。というか、生徒会に一生懸命な藤堂君って素敵だなぁ~!わざわざ他のクラスに来てまで注意しに来るなんて!」
「ほんとそれだよね~!顔だけじゃなく素行までイケメンだなんて完璧すぎ!」
「私も同じクラスになってたらお友達になれたのかなぁ~?!」
涼介は少し怒られた、と言っただけなのになぜか藤堂の株が女子を中心に急激に上がっていく。この噂は膨れ上がり、放課後には「藤堂が生徒会のために優秀な人材をスカウトしようと他のクラスに行ってまで勧誘した」という勇者のような扱いをされる噂になっていた。
昼休み終了の予鈴が鳴り、女子たちは涼介の前から立ち去っていく。ようやく動けるようになり、涼介は席に着くと和也と瑠美にも藤堂の件を聞かれると思ったが、二人は気を遣ってただ「おかえり」と迎えてくれた。聞こうと思っていたことを先程涼介が話していたのを聞いたからでもあるが。
時は放課後になり、クラスの面子は部活動へと向かう。涼介と和也の所属する家庭科部は今日は休みであるため、涼介はこれから和也と一緒に帰ることになる。鞄を持ち、階段を下りて下駄箱へ向かう。靴へ履き替えると涼介は和也が自転車を持ってくるのを待ち、合流してから下校し始める。ここまでの流れでは授業の内容などを話しながら歩いた。下校し始め、校門を出て下り坂を歩き始めると和也が藤堂の件を改めて聞いてきた。
「で、涼介よ。本当に勧誘を断ったことを、注意されただけなのか?」
涼介は一瞬考える。和也に藤堂から中間試験の勝負を申し込まれたことや、彼の裏の顔を打ち明けるかどうかを。和也と知り合ってまだ一週間ちょっとではあるが「言わないでくれ」と言った内容は何となく和也なら他の人には言わなさそうだと直感で思った。だが涼介は打ち明けないと決めた。中間テストで勝負することになったと言えば「無理ゲーだ」と和也に言われるだろうし、そこで学年一位である藤堂に勝てば変に目立ってしまう。
「ああ、そうだ。藤堂は生徒会、というより黒羽会長に 心酔しているようでな。その会長直々の誘いを断った俺を快く思わなかったのだろうな。」
「そうだったんだな。」
和也はそれで納得した、と涼介は思ったが和也は続けて話始める。
「なぁ、俺うまく言えないんだけどよ、藤堂って何か変な感じするんだよな。なんつーか、取り繕ってるというか、仮面を被っているというか。女子たちは気づいてねーけどよ。」
「どうして、そう思うんだ?」
涼介は藤堂の裏の顔を黙っておいたが、なぜか和也はそこに感付いていた。
「新入生代表の挨拶の時さ、思ったんだ。コイツ良いやつを演じてんなーって。」
「そりゃ、新入生代表だからな。大勢が見ている中下手な真似はできないだろう?」
「それもそうか。悪い、変なこと言っちまったな!俺あいつに嫉妬でもしてんのかね?」
「その気持ち、俺も分かるぞ。恰好が良く、頭も良いんだからな。羨ましくもなる。」
「涼介がそう言うのって何か新鮮だな!」
涼介の発言に大声で笑いながら和也は自転車を押し、歩く。
涼介は和也は感が良いのか単純なのか考えていたが、そこまで真剣に考えていると馬鹿馬鹿しいと思ったため、気にせずこのまま和也と談笑しながら帰宅した。




