第三十七話 部活動・人生ゲームーその12・完結ー
いよいよ人生ゲーム編の終了です。
よろしくお願いします。
ターン19終了時点
和也
職業:メダリスト
所持金:17万1000ドル
家:マンション(2万ドル)
九条先生
職業:タレント
所持金:62万1000ドル
家:一軒家(4万ドル)
備考:お宝(アルビノ昆虫:2万5000ドル)
神野先輩
職業:三ツ星パティシエ
所持金:52万7000ドル
家:一軒家(2万5000ドル)
備考:子供一人
涼介
職業:有名医師
所持金:67万8000ドル
家:一軒家(5万ドル)
備考:子供二人・お宝(宝石:3万ドル)
全員共通:生命保険・火災保険
先頭順:先生・涼介→ゴール 和也→先輩
―――――――――――
ターン20
ついに先生と涼介がゴールした。和也も前ターンにショックな出来事が起こったが一歩進めばゴールであるため、一応ルーレットを回してからゴールした。三着であるため3万ドルのボーナスである。
次の番、九条先生はゴールしているため飛ばして神野先輩のターンである。先輩も4以上出せばゴールできるが、30%の確率でゴールできない可能性がある。最後まで気を抜かず先輩はルーレットを回し、6が出たので先輩も無事ゴールし、ボーナスで一万ドル獲得した。これで四人全員ゲームを終えた。
「先輩最後までお疲れっす!」
「みなさんもお疲れさまでした。とても楽しかったです!」
「俺も楽しかったです。」
「結構長くやっていたな?」
先生が時間感覚のコメントをすると、三人は壁に掛けてある時計を見た。時刻は17時半になっていた。ゲームを始めた時間は分からないが、涼介達が部室に着いたのは16時過ぎ。部室に一時間半ほど滞在していたことになる。
「よし、お前ら片付けるぞ。まぁその前に、集計だな?」
このまま片付けて終わるのではなく、獲得金額の集計で順位を定めるところまでがゲームである。各自が集計を始める。
・ゴール時の所持金額
・着順ボーナス
・持っている物件の販売価格×3倍
・お宝カードの紙幣交換
上記の合計金額の大きさによって順位が決まる。
全員の手が止まったのを確認して先生は話し始める。
「集計が終わったようだな。結果発表はどうやる?」
「スタート順の発表でいいでしょう。」
「それナシ!俺からじゃねえか!」
涼介の提案したスタート順発表と言うと、最初は和也である。和也はゴール直前に地雷を踏んだため、自分が最初に結果を言うのが恥ずかしいのだろう。即座に和也は涼介の案を拒否した。
「じゃあ和也はどうしたい?」
「そうだな……。あっ、みんなで同時に喋って発表するのがいいんじゃね!?」
「馬鹿者。それではごちゃごちゃして聞き取れんだろう。」
「そっ、そっすよねー……」
和也の代替案は先生の合理的な理由により却下される。あわよくば採用されることを和也は狙ったが、当然無理であった。
「神野は何か案はあるか?」
「では、紙に書いて一斉に表示するのはどうでしょう?」
「いいと思いますよ。」
先輩の案に涼介が賛同する。
「よし。じゃあそれでいくか」
先生は先輩の案を採用し、神野先輩が紙とペンを人数分用意した。各自が紙に自身の合計金額を書き、いよいよ結果発表となる。
「お前ら書いたな?では『せーの』で一斉表示するぞ。」
先生が合図を決め、三人は身構える。
「では行くぞ。せーのっ!」
和也 26万1000ドル
先生 76万6000ドル
先輩 61万2000ドル
涼介 85万8000ドル
つまり順位は、涼介→先生→先輩→和也 となった。
「ということで、今年度第一回家庭科部ゲーム大会優勝者は、矢野だな。はい拍手ー」
先生が咄嗟に考えたであろう大会名を言い、拍手をするよう促す。
「おめでとうございます、矢野君!」
「今回は負けちまったが、次は勝つぜ、涼介!」
「やはり貴様が一位だったか。今回はお前に勝ちを譲ってやろう。」
拍手と共に三人が涼介に言葉を送る。
「みなさん、ありがとうございます。とても面白かったですよ。」
「そうだな。圧倒的最下位だったけど、俺も楽しかったぜ!」
「またみなさんでゲームしましょうね!」
「私も時間があればまた部に顔を出す。よし、じゃあ片付けて解散だ!」
「「はいっ」」「うっす!」
こうして、長くも一瞬だった人生ゲームは終了した。
***
片付けが終わった後。
「では皆さん、図書室でお友達が待っていますので、お先に失礼します。お疲れさまでした!」
神野先輩は先生から「カギは私が閉めておく」と言われたので、先に帰ることにした。
「はい!お疲れっした先輩!」
「お疲れ様です。」
「気を付けて帰れよー」
三人は別れの挨拶をし、先輩は一礼して部室を出て扉を閉めた。
「よっし、俺らも帰るか?っとその前に、すまねぇ涼介!トイレ行きてぇから、少し待っててくれ!」
「ああ、わかった。」
和也は放課後になって部室へ行く前に一度トイレへ行っている。だが、彼は販売機で買ったジュースを飲みながらゲームをしていたため、もう一度トイレに行きたくなったのだろう。涼介に一言言うと小走りで和也は部室を出た。そして涼介は先生と二人きりになる。先に喋ったのは先生だった。
「終わった今だから言うが、お前、ルーレットをコントロールしてただろ?」
「やはり、先生は気づいていましたか。」
「ゲームバランスを崩壊させるその神業、いつからやり始めた?」
以前、進路指導室で尋問された時の様に先生の顔が鋭くなる。
「いつからなんて、知っても仕方ないでしょう。それに、先生も途中でやり始めましたよね?」
「付け焼き刃ではあったがな。やった私だから分かるが、一回の調整だけでも相当神経を使う。お前は一ターン目に医者の職業を引き、よくよく思い出せばその後も運が良すぎる展開が続いていたな?」
「ですが、俺は分かれ道で出費の多い遊園地ルートへ行きましたよ?」
「あれは神野を一人にさせないためだろ?神野の遊園地行きが決まった後にお前も同じルートへ行ったからな。あれはお前の優しさだろ?」
「記憶力がいいですね、先生は。」
「仮にお前が一ターン目から調整を行っていたとすると、毎ターン削れる集中力、常に自分の周りにあるマスの効果の把握。こんなのを毎回やっていたのなら、お前は本当に化け物だな。」
最後の「化け物」という単語を先生は強く言い切った。涼介は無言のままである。涼介は少しうつむいており、前髪が少し目にかかっているので目の表情は先生には見えなかった。この重く、無言が続く間に、和也がトイレから帰ってきた。
「待たせな涼介ぇー……何だこの空気!?何かあったのか!?」
「いや。楽しいゲームだったと先生から言われたんだ。さ、俺らも帰ろう」
「おっけー!じゃあアヤ……じゃなくて先生!お疲れっした!」
「失礼します。」
部室から出ていく二人を、先生は無言で見つめる。二人が出て行った後も先生の目線はドアで止まっていた。
「知力に身体能力に精神力……。涼介に弱点は無さそうだな。完全無欠、まさに文字通りということか……」
涼介が入学してからまだ一週間程しか経っていない。現在、早くも涼介の才能に気づいているのは彼の担任兼部活動顧問である九条先生だけである。今後、彼女以外にも彼の才能を知るものは現れるのだろうか……。
以上で人生ゲーム編は完結いたしました。思ったより話が長くなり、人生ゲーム編に限っては一日二話投稿にしようかと悩みましたが、通常通り一日一話投稿にいたしました。
書き始めの当初はただ単にゲームする様子を書こうと思ってましたが、気づけば涼介の才能に触れる内容になっていました。こうなった展開に正直自分でも驚いています(笑)
では、次回から日常回に戻り、新たな展開を書いていこうと思います。
よろしくお願いします!




