第三十四話 部活動・人生ゲームーその9ー
今回は15ターン目の展開が少し熱くなっています。
よろしくお願いします。
ターン13終了時点
和也
職業:スポーツ選手
所持金:16万1000ドル
家:マンション(2万ドル)
九条先生
職業:タレント
所持金:16万1000ドル
家:一軒家(4万ドル)
備考:お宝(アルビノ昆虫:2万5000ドル)
神野先輩
職業:三ツ星パティシエ
所持金:15万2000ドル
家:一軒家(2万5000ドル)
備考:子供一人
涼介
職業:有名医師
所持金:24万8000ドル
家:一軒家(5万ドル)
備考:子供二人・お宝(宝石:3万ドル)
全員共通:生命保険・火災保険
先頭順:涼介→和也・先輩 先生→カジノルート
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ターン14
今回のターンから和也と先輩も通常ルートを進み始める。先生と差をつけるとしたらこの瞬間しかない。先生はこのターンを合わせ、あと2ターンでカジノルートを通過するので、三人は2ターンでできるだけ多くマスを進めなければならない。
「先生と差をつけるとしたら今だ!いくぜ!」
和也が今回出した数字は4。何とも言えない微妙な数字である。
『努力が実って職業がグレードアップする。』
「おお!ここで職業アップがあるとは思わなかったぜ!ラッキー!」
和也の今の職業はスポーツ選手。スポーツ選手の一個上の職業はメダリスト。給料は5万5000ドルになり1万5000ドル増えている。メダリストの職業カードを和也は取り、自身の番を終える。次はカジノルートの先生の番である。
「二回目のカジノか。次は……」
『「バカラ」 賭け金(5000ドル~5万ドル)を決める。ルーレットを回し、8か9が出たら賭け金の5倍の額を受け取る。』
「確率は20%とやはり低いな。消費はしたくないからまた5000ドル賭けることにする。」
前ターンでやったルーレットはリターンは10倍であった。そして今回は5倍。確率は二倍になったが、逆にリターンは半分になっている。先生は手堅く最低限の賭け金で済ませようとする。
少しうんざりするようにルーレットを回す。何も期待をしていなかった。ただ作業をこなすように回す。淡々とした作業だったが、針は思いもよらず9を指し示した。
「おお、当たったか。これならもう少し多く賭け金を増やしていたが、まぁ結果論にすぎんな」
「先生、当たったのにあまり嬉しそうじゃないっすね?」
「二万ドルの利益が出たが、負ける確率が大きいゲームを強制でやらされてるからな。当たる事より1マス先に進めることの方が嬉しい」
「は、はぁ……」
先生は前へ進むことしか考えてない。前のターンで負け、カジノは負けるものだと割り切っているため、たとえ勝ったとしても期待していないため喜びの感情は無かった。和也は先生の意図があまりわからず曖昧な返事をした。
「私の番を始めますね。今のうちに進めるため、先生には悪いですがなるべく大きな数字を出します!」
神野先輩も状況を理解しており、華奢な手で勢いよくルーレットを回した。出た数字は10。本当に大きな数字が出ると先生は思わなかったので、少し嫌味を吐く。
「容赦のない小娘め。」
「ははは……。すみません、私も勝ちたいので進みますね。」
先輩は苦笑いで先生の嫌味をかわし、先へ駒を進める。9マス目で給料日だったため、先生からお金を受け取る。ちなみにこの給料日マスはカジノの出口マスでもある。故に先生を追い越したことになる。先輩は残り1マス進めた。
『家にあった骨董品を鑑定。ルーレットを回し、5か10が出れば15万ドルもらう。』
「「15万ドル!?」」
声に出して驚いた二人は先輩と和也であった。
「ノーリスクで15万ドル手に入れるチャンスとは、私のカジノが馬鹿馬鹿しくなるな……」
先生に涼介が語り掛ける。
「確かに、終盤だからか、周りのマスは少し弾み過ぎた内容になってますね。」
先輩が15万ドルと読み上げた後涼介は周りのマスの内容を確信し、慎重に進む必要があると悟った。ここからは運命が大きく左右するマスが多いため、ルーレットを回す際、普通であれば多少の緊張をしてしまうだろう。だが涼介は真顔のままであった。ゲームを楽しんでいないのか、それともルーレットで出す数字を操ることができるからか、緊張している様子は全く見られなかった。
「でっ、では、みなさん、回しますね……」
先輩は決して何かを失うリスクは背負っていないが、得る物が大きいため少し緊張しながらルーレットを回した。四人はジッとルーレットを見つめる。先輩がここで15万ドル獲得すると、決定的な差になり兼ねないからである。
ルーレットのスピードが緩み始めたのは8からであった。9を通り越し、いよいよ10へ向かおうとする。
「お願い止まって……!」
先輩は両手の指を交差し、目を瞑って願う。ルーレットのカタカタと回る音が無くなって先輩は目を開いた。針の位置は、ギリギリ10を通過したところで止まっていた。
「やった!!!」
「先輩すごいっす!おめでとうございます!」
「ここで運が回るとはな……」
「自分も、本当に出るとは思いませんでした」
先輩が喜ぶと、和也が「おめでとう」と言い、先生は驚き、涼介は笑みを浮かべて言葉だけ驚いていた。
先生が「良かったな」と15万ドルを先輩へ渡し、「ありがとうございます」と言って先輩は受け取る。少し暑い札束に先輩は心が躍る。
「お待たせしました、矢野君、どうぞ」
「はい。俺も負けないよう頑張ります」
今度は涼介がルーレットを回す。7が出る。涼介も途中で給料日マスを通ったため、先生から給料分のお金を受け取る。
『子供が子役で売れる。子供がいる場合に限り、一人につき5万ドルもらう。』
「5万ドル!?おい、涼介が車に乗せてる子供って……」
「二人だから合計で10万になるな」
「何平然と喋ってんだよ!10万だぞ!?」
和也が驚くのも無理もない。今までのマスはあまり大きな金額変動がなかったからである。しかし周りの状況を把握している涼介が解説する。
「和也。周りのマスをよく見てみろ。金額の変動が大きいマスばかりだ。」
涼介に見ろと指示されたため、和也は自身の周り、そしてそこからどんどん前のマスを見やる。
「……ほんとだ……。どれも5万から10万単位での変動ばっかだ……。」
「つまり終盤ということだ。差を明確にするため、ゲームがそう仕組まれているんだ。」
「なるほどな。緊張感が増す分盛り上がるってわけか!」
「そういうことだ。では先生、お金を頂けますか?」
先生はお金を準備し、涼介へ渡す。涼介が札束を握って撮ろうと瞬間、先生は手放さず言う。
「これも偶然、なんだな?」
「はい。あくまで偶然、です。」
「ふんっ」
涼介の言葉に納得いかない先生は仕方なく札束から手を放し、お金を渡した。
―――――――――――
ターン14終了時点
和也
職業:メダリスト
所持金:16万1000ドル
家:マンション(2万ドル)
九条先生
職業:タレント
所持金:18万1000ドル
家:一軒家(4万ドル)
備考:お宝(アルビノ昆虫:2万5000ドル)
神野先輩
職業:三ツ星パティシエ
所持金:34万7000ドル
家:一軒家(2万5000ドル)
備考:子供一人
涼介
職業:有名医師
所持金:40万8000ドル
家:一軒家(5万ドル)
備考:子供二人・お宝(宝石:3万ドル)
全員共通:生命保険・火災保険
先頭順:涼介→先輩→和也 先生→カジノルート
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ターン15
先輩と涼介が先へ大きく進んでいるため、それに伴ってゲームの流れも加速する。しかし、先生は一マスずつしか進めないカジノルートにいる。もっとも、今回で最後であるが。
「みんな結構金増やしてるからな。俺も職業アップだけじゃなくて何かアクション起こさねえとな!」
現在、先生と僅差ではあるが和也の手持ちのお金はこの中で一番少ない。故にできるだけ多く先へ進みつつもお金を稼がないといけなくなる。しかし和也の出した数字は5。またしても微妙な数字である。
『給料日。職業で決められた金額の分、給料を受け取る。』
「ちょうど給料日マスかよ!これじゃあこのターンで先生に追いつかれてしまうな。」
「お前だけは私を追い越さなかったようだな。お詫びに金をやる」
「先生、それ俺の給料ですよね……」
「そうとも言う。」
「ですよね……」
「じゃあ最後のカジノを始めてやろう」
『ゲーム代1万ドルを支払う。3回ルーレットを回し、2回連続で同じ数字が出たら10万ドル、3階全て同じ数字が出れば50万ドル受け取る。』
「なんだ!?この馬鹿げたゲームは!?」
「強制的に1万ドル支払って連続で同じ数字を出さなければならない……。これは厳しいですね」
今回の解説は涼介ではなく神野先輩が言った。
「まあ最後だからな。これくらいは許容してやろう。」
そして先生は1万ドル払い、ルーレットを回す前に考える。
(矢野は不自然に思われないようルーレットを回していた。神野と山本の二人は気づいていないようだが、あいつは回す前、気づかれないよう出したい数字に針の位置を合わせ、毎回同じスピード、つまり寸分の狂いもない力で回していた。ありえない話だが、目の前で起こった事実だ。ならば私にもできると言うことだ!)
先生は一回目のルーレットを回す。和也の出した5の数字から回し始めた。ルーレットが回り終えると、針は4の位置で止まっていた。
和也が盛り上げ役になる。
「4っすね!先生、次も4を出さないといけないっす!」
「あぁ、わかっている……」
(ちっ、少し弱過ぎたか!だが我ながら一回目にして要領を得ている……。もう一度、次は少し力を加えて回すぞ!)
涼介は先生のやろうとしていることに感付き、眼を鋭くする。
(この人、気づいたようだな。だが先生、ただ見ただけのなまじ知識でやれる芸当ではありませんよ)
先生は二回目のルーレットを回し始める。すると涼介はその光景に目を見開いた。
(これは……!一回目で加える力を完全に把握したのか!?)
(このくらいでどうだ……!)
ルーレットは4の位置から始まる。そこから何周か回り、再び4の位置で止まった。
「おおぉぉぉ!すげえっすよ先生!」
「これで10万ドルはもらえますね!」
和也と先輩は盛り上がる。先生は「あぁ」と返事をし、涼介に笑みと共に目線を配る。涼介は珍しく口を開けたままだった。
「お前のその顔を見たかったぞ、矢野。どうだ?ゲームらしくなってきただろ?」
「そうですね。俺と同じ偶然を起こすとはさすがですね……」
「その偶然は簡単ではないがな。ではあと一回回すぞ!」
先生はもう一度ルーレットを回す。だが、回した瞬間、先生と涼介は悟る。
(しまっ、力が……!)
(強いな。だが見よう見まねで回せるようになるとはな)
先生の回したルーレットは、惜しくも4の数字を通過し、5の数字で止まった。
「あぁー!惜しかったすね、先生!俺一瞬ガチで4で止まると思いましたよ!」
「もう少しで50万ドルでしたね。」
一瞬期待していた和也と神野先輩は少しがっかりして先生に言葉を送った。
「難しいもんだな、このゲームは」
先生はザッと椅子に座り、目を瞑ってため息をつく。尋常ではない集中力を発揮したため一気に疲れたのだろう。
(たった数回でこれほど疲れるとはな。涼介、尋常じゃない集中力と精神力を持ち合わせているな……)
(大した人だな。俺の偶然に気づくのも、実行するのも……)
和也と先輩の気づかない一瞬ではあったが、涼介と先生はにらみ合っていた。
「ま、10万は得られたからいいか。次、神野いいぞ」
先生は賭けで勝った10万ドルを取り出し、先輩に自分のターンを始めるよう促す。
先輩はルーレットを回し、4の数字が出て、駒を進めると涼介の一歩先のマスで止まった。
『有名な画家の絵を買う。5万ドル支払う。』
「本当に高い出費ですね……」
「大丈夫っす!払い終わっても俺より全然先輩の方がお金ありますから!」
「ありがとうございます山本君。山本君が話してくれると、少し元気になります」
「そっ、そんなことないっすよ!俺なんてただうるさい馬鹿で……」
「そうだぞ。こんな馬鹿の言葉を真に受けるな神野。」
「ちょ!先生酷いっすよ!」
神野先輩に笑顔が戻る。先輩は5万ドルを先生に渡した。渡し終わり涼介の番になるが、一点を見たまま涼介は動かない。
「矢野君、いいですよ?」
「あっ、はい。すみません。」
先程の先生のルーレットの再現度に涼介は驚いたままだった。自分の番になっているとは気づかず、慌ててルーレットを回した。3が出た。
『ひったくりに出会ってしまった。5万ドル失う。』
「なっ……」
涼介から思わず声が漏れた。
「なんかお前が悪運に引っかかるの久々に見るな?」
「いや、むしろ今までが出来過ぎていたんだろうなぁ?」
和也は涼介の珍しい不運に「へぇー」と驚き、先生は満足そうな笑みを浮かべている。先生は先程ルーレットの三回目を失敗したが、涼介に大きな印象を与えることができた。その結果、涼介は動揺してしまって今回の事態を招いた。完璧に再現できなかったが、結果的に涼介を動揺させることに成功したので先生は満足していた。
―――――――――――
ターン15終了時点
和也
職業:メダリスト
所持金:21万6000ドル
家:マンション(2万ドル)
九条先生
職業:タレント
所持金:27万1000ドル
家:一軒家(4万ドル)
備考:お宝(アルビノ昆虫:2万5000ドル)
神野先輩
職業:三ツ星パティシエ
所持金:29万7000ドル
家:一軒家(2万5000ドル)
備考:子供一人
涼介
職業:有名医師
所持金:35万8000ドル
家:一軒家(5万ドル)
備考:子供二人・お宝(宝石:3万ドル)
全員共通:生命保険・火災保険
先頭順:涼介→先輩→和也 先生→カジノルート(終了)
―――――――――――
今回もご愛読いただきありがとうございます。
あと2、3話ほどで人生ゲーム編は完結すると思います。
その後はいつもの日常回を挟み、新たなイベントを設けようと思います。
よろしくお願いします!
よろしければ評価をお願いいたします!




