第二話 HR(ホームルーム)
ご愛読ありがとうございます。
第二話でございます。
入学式を終え、ホームルームへ移行した様子でございます。
よろしくお願いします。
入学式が終わり、一同は各自の教室へ移動する。
ドアに貼ってある座席表で各々が自分の席を確認し、教室の中へ入り席へ着く。座席順は出席番号順となっている。
涼介は名字が「矢野」であるため、彼の席は定番である窓際の一番後ろ……
ではないが、窓際の列の後ろから二番目であった。全員が席へ着き、教師が教室へ入るのを待つ。
全員が全員、初対面であるため会話は生まれることなく、この待ち時間は静寂に包まれていた。
(うるさいのは好まないが、この葬式のような空間も嫌なもんだな・・・)
と涼介が窓越しに外を眺めていると後ろから肩をポンっと叩かれる。
「どぉも!初めまして!俺、山本 和也!よろしく!」
この静かな空間で普通に話すと目立つため、彼は空気を読み、小声ながらもテンション高く涼介に挨拶してきた。
「俺は、矢野涼介だ。よろしくな。」
「なら、涼介って呼んでいいか?もちろん、俺のことも和也って下の名前で呼んでくれていいからよ!というか、呼び捨てじゃないとなんかむず痒くなるんだよな。」
「了解、和也。今話すと少し目立ってしまうし、ホームルームが終わった後に改めて話をしないか?」
「そうだな。じゃあ、また後でな!」
お互い軽く話し、また改めて挨拶をすることを決めた涼介は、後ろに向けていた顔を前へ向ける。
そこから数分後に「ホームルームを始める。」という声と共に小柄な女性が入ってきた。彼女の姿を見るや、クラス全員が少しざわつき始めた。それもそのはずである。
彼らの前に立つその女性は、小学生と間違われるんじゃないかと思うほど背が小さく、長い黒髪に小さな整った顔をしており、ゴスロリの服装をまとっている。
「教師……だよな?」
「背ぇちっさ!」
「かわいい!けど少し凛々しいからかっこよくもある……」
彼女を見て思わず口が出てしまった生徒が数名出た。
彼らのセリフが、今このクラス全員が思った事であろう。
「おい!教師に向かって小さいと言うな!今後私の前で口にしたやつは問答無用でシバくからな。」
このセリフと凛々しい顔によって、見た目とのギャップを覚えながらも生徒は彼女がこの学校の教師であることを認識する。
「自己紹介をする。私の名は九条 彩女。お前ら1年6組の担任だ。今日からよろしく頼む。ちなみにクラス担任だけでなく、お前らの古典の授業を受け持つ。」
「はいはいしつもーん!」
いきなり声を発したのは涼介の後ろの席で手を挙げて立っている和也だった。
「ではホームルームを始める。」
明らかに聞こえていたであろう和也の発言を、彼女は無視し、ホームルームを始めようとする。
「えぇっ!?いきなり無視はないでしょ、アヤメちゃん!」
「おい貴様!私の名を下で、しかもちゃん付けで馴れ馴れしく呼ぶな!それにお前に発言は認めてない。静かに黙って座れ!」
「だってアヤメちゃんはアヤメちゃんだろ?ねぇそれよりさ、なんでゴスロリ着てんの?」
誰が見ても分かる。九条先生は明らかに怒っている。
「お前は……出席番号40番、山本和也か?ホームルームが終わったら職員室に来い。意識が無くなるまでお前をシバく……」
どキツイ眼差しと共に放たれたそのセリフによって、先ほどのテンションとは真逆になり、危機感を悟ったのであろう、和也は小さく返事をし席に着いた。
「では改めてホームルームを始める。」
ホームルームの内容は以下の様であった。
プリントの配布、明日以降の時間割確認、軽い自己紹介など。
業務連絡ばかりで、その情報の多さにクラス全員はうんざりしていた。
「以上でホームルームを終わる。この場で解散したいところだが、中庭でクラス写真を撮らねばならん。クラス順に撮影だから、私たち7組は一番最後で待ちが長くなるだろうが、呼ばれるまでおとなしく席について待っておけ。」
クラス全員が声には出さないが待たなければならない事態に嫌気が差す。
「そうだ山本、順番が来るまで今のうちに進路相談室へ行くぞ。私が直々にお前の性根を指導してやるからよぉ……」
九条先生は指の骨をバキバキ鳴らしながら言う。
「せ、先生っ?殴るのはだめですよ?後で写真撮るとき傷で俺目立つから!?」
「安心しろ。そう思って頭じゃなく体を狙ってやるからよぉ……」
「嫌だ!嫌だ先生!たっ、助けてぇぇぇぇぇぇ!」
和也の必死の抵抗を九条先生はもろともせず、彼の首根っこを掴んで引きずりながら教室を去っていった……
彼女の恐ろしさを垣間見て、再びクラスがざわつき始める。その声に紛れて涼介の隣に座っている女生徒が涼介へ話しかける。
「そこそこ頭良いこの学校でも、あんな馬鹿な奴がいるんだね。」
「和也みたいな奴がいるから、みんな退屈にならずに済むんじゃないか?」
「あなた、彼と友達?ホームルーム前、何かコソコソ話してたけど。」
「いや、その時間にお互い知り合ったばかりだ。俺の名前は矢野涼介だ。よろしく。」
「あっ、自己紹介が遅れてごめんなさい。私は福原 瑠美。こちらこそよろしくね。」
福原瑠美と名乗ってきた女生徒は、肩に髪がかかるくらいの髪の長さで、明るい茶髪が目立つ、元気な少女であった。
涼介と福原が話し終えると、顔に傷を負ってはいないが真っ青な顔をした和也と九重先生が戻ってきた。涼介のその表情に、クラス全員が驚き、先ほどまでのざわつきが一気に収まる。
「お前ら、コイツのようになりたくなければ今後の私への接し方を考えて行動しろよ。」
クラス全員に和也を見世物に九条先生は注意を促す。
「涼介、あの少女……いや先生は見た目に反して相当やべぇぞ。俺、あの先生に軽く恐怖を覚えたぞ……」
「和也がいきなり失礼な事言うからだろ?」
「そうよ、あれは明らかにあなたが悪かったわね。」
「誰だこの女?涼介の知り合いか?」
「この女とは失礼ね!?そうやってデリカシーの無い馬鹿だから先生にシバかれんのよ!」
「何だとてめぇ!?まぁとにかく、お前らも先生の機嫌を損ねないよう気を付けるんだな……」
どうやら和也は、彼にしか分からない九条先生の恐怖を植え付けられたようである。その様子を見て涼介も注意を払うことを心に決める。
再び葬式のような沈黙が始まったが、今度は数分で終わった。
「6組のみなさーん!お待たせしましたー!中庭へ行ってクラス写真を撮ってきてくださーい!」
隣のクラスの生徒なのだろうか。ポニーテールの髪形をした笑顔で元気いっぱいな少女が事を伝えに来た。元気が良く、顔立ちもスタイルも良い彼女が現れ、一部の男子生徒がざわつく。しかしその空気を九重先生は一蹴する。
「うるさいぞお前ら!さっさと外に出ろ!」
九条先生の威圧に負け、男子生徒は恐る恐る教室から出て、中庭へ向かうのであった。




