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完全無欠の青春傍観者  作者: 十六夜烈也
第一章 一年一学期編
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第十九話 涼介の休日ー前編-

土曜日。

学生は基本的には休日のため、部活動や用事が朝から無い限りは一瞬間の疲れをとるために朝は睡眠で潰れるという人はさほど少なくはないだろう。

だが、矢野涼介という少年は違った。平日も祝日も朝5時30分に目覚ましをセットしており、起床からの30分間で洗顔をし、運動着に着替え、水分補給をして6時前には靴を履いて日課であるランニングをする。30分ほど走り、平日であればここで帰宅をし、シャワーを浴びて制服に着替え、朝食をとるという行動をとるが、休日は違う。

30分間走り続け、たどり着くのは自分の家ではなく、山の階段を上った所にある「霧島道場」という所であった。朝の6時半にも関わらず、道場内から男性の気合の入った声が響いてくる。涼介が扉を開いて一礼し「おはようございます」と挨拶をすると、背丈は少し大柄で、見て呉は短髪でダンディな顔つきで左の眉に古傷を残している、4、50代の男性が「おう、涼介」と反応する。周りの道着を着た男性たちも「おはようございます」と涼介にあいさつをする。弟子たちが涼介に敬語なのは、涼介が彼らの兄弟子だからである。


「おはようございます、霧島先生。本日もよろしくお願いします。」


「あぁ、よろしく涼介。またコイツらをしごいてやってくれ。」


この男性の名は霧島 大剛(きりしま だいご)。私塾道場「霧島道場」の現頭首。

彼の父、霧島 大輔(きりしま だいすけ)は戦時中の日本軍兵士であり、聡明な知力と鍛え上げられた肉体を以って若手ながら数多の戦場で勝利を治めてきた戦績を持っており、世界では「亜細亜の暴君」と恐れられた人物である。

戦後、戦犯追及からは逃れたものの田舎の方へ左遷され、そこでこの「霧島道場」を開き、多くの若者に体術を教えてきた。涼介の目の前にいる大剛もその一人であり、父の死後は自身が道場を引き継いでいる。


柔道、合気道、空手、截拳道(ジークンドー)、カポエイラなどあらゆる体術を総合して完成されている「霧島流近接格闘術」を涼介はここで習っている。

この格闘術は構成する体術の基礎及び応用を会得した上で身につけることができるため、その前段階で挫折する者は多い。この場にいる師である霧島を除く男性は皆、前段階の訓練中なのである。しかし涼介は異なる。涼介は小学5年の頃からこの道場に通い続けており、中学を上がる頃には霧島格闘術をほぼ会得していた。それには弛みなき努力がなされていたことは言うまでもない。


中学の頃では道場の人達とは体格差のあった涼介だが、それでも手合わせをすると同等かそれ以上に渡り合っていた。高校生になった現在の涼介は身長も体重も成長している。故に今の道場内の生徒の中では涼介が一番強い。だから涼介が道場に行くと弟子たちとの手合わせを霧島は頼んでくる。


いつも通り、弟子たちと涼介の手合わせが始まる。一対一ではなく、複数人を同時に涼介は対峙する。中学卒業以降の春休みからこの対戦形式をとっている。

五人ほどが一気に涼介へ襲い掛かる。しかも一人が涼介と揉み合ってる隙にもう一人、もう一人と現れてくる。だがやってくるまでの僅かな時間の間に涼介は相手を投げ飛ばしたり蹴りで払ったりする。そして十分後、五人は床に転がって「はぁはぁ」と息を切らす。立っているのは涼介だけであった。


「五人でも無理だったか……。強くなったな、涼介」

「ありがとうございます。ギリギリではありましたけどね。」


弟弟子達ほどではないが、涼介も多少は汗をかいて疲れた様子を見せる。


「じゃあ今度は、俺とやるか?」

「先生と、ですか?」

「心配するな。50代だからって体はそんなに衰えちゃいねぇからよ。」

「そういう問題ではないのですが……。では、よろしくお願いします。」


十数人の弟子たちの前で師である霧島と兄弟子の涼介の対決が始まる。弟子たちは道場内を円形になって囲むように端の方へ座る。霧島の「じゃあ、いつでもいいぞ」という合図で涼介はダッシュで真正面から攻める。

手足を器用に動かして打撃を入れるが、霧島は少しずつ後退しながらも涼介の全ての攻撃を手で払う。そして霧島は壁へ追いやられ、涼介がそれを察しかかと落としを入れようとするが洗練された反射神経によって足を掴まれる。そして投げ払われるが涼介は上手く受け身をとる。両者の白熱とした手合わせに弟子たちは「おぉ……」と声を漏らす。


涼介は幾度となく攻撃を仕掛けたが、ついには距離をとっていた間を瞬時に詰められ、背負い投げで床に叩きつけられる。ここで手合わせは終わる。

マラソン選手が完走直後に倒れて息を切らすように涼介も投げ飛ばされて床に寝転がったまま息を切らす。霧島が涼介を上から見下ろして話しかける。


「間合いの詰め方や、攻撃の速さは中学の頃と比べて大きく成長したようだな。だが、俺にはまだ届かないみたいだな。」


ニッと笑顔見せて感想を言う。


「えぇ……、俺も、まだまだみたい、ですね……。」


息を切らしながら自分の未熟さを涼介は言葉にして反省する。

時刻は7時頃になっており、霧島は弟子たちに朝食の時間だと告げる。涼介も「一緒にどうだ?」と誘われたため弟弟子たちと共に食事をとることに決めた。


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