第十話 入部届
午前の授業が終わり、昼休みになる。
涼介は昨日の昼食のメンバー三人とまた昼食をとる予定であるが、昼休みにやっておかなければならないことがある。それは和也も同じであった。
「涼介、アヤメちゃん所行って入部届のハンコもらわねぇと!」
「そうだな。でも和也、先生のこと下の名前で呼ぶ癖直さないと、またやられるぞ?」
「あっ、あぁ……気をつけるわ……」
涼介と和也は放課後に神野先輩に入部届を提出しなければならない。入部届は自分の家の印に加え、担任の印も必要となる。そのため、昼食をとる前に職員室へ行き、九条先生の印を押してもらうのである。
「あれ、二人とも印鑑もらいに行くの?アタシはもう少し部の様子を見てからにしようと思ったんだけど、ヒカリはどうする?」
「私ももう少し様子見たいかな。多分、入部はすると思うけど」
女子二人は入部することはほぼ決まっているものの、まだ少し様子を見たいらしい。
「そうか。じゃあ、職員室に行ってくる。二人とも、先に昼食を取り始めてくれ」
涼介はそう言い残し、和也と職員室へ向かう。
***
部活勧誘期間は今日を含めて残り三日ある。既に入部を決めた生徒はさすがに涼介たち二人しかおらず、職員室へ行っても九条先生のところへ印をもらいに来ている生徒はいなかった。
涼介が先陣を切って「失礼します」と言って職員室に入り、九条先生の元へ向かう。
「何だお前ら。私に何か用か?」
「はい。部活動への入部を決めたので、先生の印をもらいに来ました。」
「なるほど、決めるのが早いな。それで、何部だ?」
「家庭科部へ入部するつもりです。」
「ほぉ、私の部に入部するのか。廃部寸前だったから、お前ら二人が入ると助かる」
どうやら家庭科部の顧問は九条先生だったらしい。その事実を知り、和也は思わず驚く。
「えっ!?家庭科部の顧問ってアヤメちゃ……」
「あぁん?」
「アっ、アヤメ……先生だったんすか……」
和也の呼び方に九条先生は鋭く反応し、睨みつける。和也は怯んでしまい、呼び方を直す。
「あぁそうだ。私だと何か不都合でもあるのか、山本?」
「いえいえいえ!そんなことないっすよ!」
「ではこれから卒業までよろしくなぁ、山本?」
「はっ、はいっ!よろしくお願いします!」
和也は90度丁寧なお辞儀をする。
「して、なぜ家庭科部に入ろうと?」
九条先生の目は今度は涼介の方へ向き、質問する。
「はい。昨日神野先輩が困っている様子を見まして。自分は特に部活に入る予定は無かったので、助けれるなら助けようと思い、入部を決めた次第です。」
「なるほどな。で、そっちのバカは?」
先生は涼介の入部理由を聞くと、今度は和也の方へ視線を向ける。
「自分も、涼介と同じ理由っす。放課後棒に振るくらいなら、誰かのために時間を使いたいと思ったんです。」
その言葉に先生は「ふっ」と笑う。
「よかろう。お前らの入部を認める。印を押してやるから、放課後神野に入部届を持って行ってやりな。」
「はい、ありがとうございます。」
「あざっす!」
そして先生は二人の入部届に印を押し、二人は一礼してから教室で待つ瑠美らのところへ向かう。




