第25話 拳法使いは侵入する
私は鋼鉄製の扉を開けようとする。
しかし、抵抗感があって開かなかった。
どうやら室内から施錠されているらしい。
「ふむ」
私は扉の表面に触れる。
それなりに分厚い。
弾丸なら容易に止められる程度だろう。
それを確かめた私は、扉に向けて蹴りを放つ。
轟音と共に扉が湾曲し、外れて倒れた。
驚くリアを連れて、私は室内へと踏み込む。
そして顔を上げた。
吹き抜けの二階に敵が並んでいた。
彼らはクロスボウを構えてこちらを狙っている。
私達が扉を開けるのを待ち構えていたのだ。
「撃てェ!」
号令を皮切りに、一斉射撃が始まった。
大量の矢が私達に殺到する。
狙いがばらけており、回避は難しそうだった。
(仕方ない……)
私は瞬時に震脚を繰り出して、勢いよく床を踏み割った。
衝撃で扉が打ち上がる。
扉はちょうど私達と矢の間を滞空し、一斉射撃を受けることとなった。
甲高い金属音が連続し、矢が次々と弾かれる。
間をすり抜けてきた分については、私が両手で弾いた。
これくらいなら難なく見切ることができる。
背後のリアも無事だった。
私は扉が床に落下する前に疾走すると、壁を蹴って跳躍する。
そこから二階の面々へと襲いかかった。
手すりに掴まって全身を引き上げつつ、遠心力を乗せて回し蹴りを浴びせる。
数人の顔面を刈りながら、二階の床に着地した。
骨片と脳漿が四散する中、前方に立つ男と目が合う。
男は慌ててクロスボウに矢を装填しようとしていた。
しかし、恐怖と焦りで何もかもが遅い。
そうでなくとも間に合わない距離だろう。
私は手刀でクロスボウを破壊し、驚愕に染まる顔を掴む。
そのまま男を盾にして走り出した。
さらに空いたもう一方の手で敵を処理していく。
迫る攻撃は、掴んだ敵で防御した。
仲間を盾にされたことで、敵の動きに躊躇いが生じる。
私はそこを遠慮なく突いていく。
そうして私は、大した時間をかけずに吹き抜けの敵を殲滅した。
死体となった盾を捨てて、リアの待つ一階に降りる。
一連の戦闘を目にしたリアは、感嘆の声を洩らした。
「素晴らしい手際だな……速すぎてあまり見えなかったが」
「いずれ真似できるようになるだろう」
「そうなりたいものだな」
彼女とやり取りしていると、背後から火球が飛んできた。
私は拳を当てて魔力を吸収しつつ、火球を破砕する。
既に何度も目にした攻撃だ。
吸収と破壊は容易である。
私は落ちていたクロスボウの矢を拾うと、指先の動きで投擲する。
回避し損ねた射手は、額から矢を生やして絶命した。
その様を一瞥した私はリアを促す。
「行くぞ」
「りょ、了解した!」
室内にはまだまだ敵が残っている。
早く組織の頭を見つけなくてはならない。
不在なら幹部でもいい。
とにかく情報源が必要だった。
入口を抜けた私とリアは、豪邸の奥へと進んでいく。