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第24話 拳法使いは成長を知る

 私は地面を踏み割りながら突進する。

 前方に向けて捩じ込むような掌打を打つ。

 絡め取った空気が圧縮された暴風となり、軌道上にいた者達を捉えて突き飛ばした。

 大半が衝撃で気絶する中、一部の者は果敢に飛び起きて反撃に転じようとする。


 私は抉れた地面に手を添えて、土を一掴み握り締めた。

 それを立ち向かってくる者達に向けて投げ放つ。


 握り固めた土は、拡散しながら高速で飛んだ。

 それは即席の散弾と化して彼らを切り裂く。

 さらに数人が追加で死んだ。

 まだ動ける幸運な者も、背中を見せて逃げ始める。


 私はそれを追わない。

 彼らには私達の噂を広めてもらう役目があった。

 わざわざ追い縋って殺すことはないのだ。


 私は立ち止まると、リアの戦いぶりに注目する。

 少し離れた所で、彼女の斬撃が三人の敵を倒すところだった。

 一太刀で首や胴を通過し、血飛沫を撒き上げながら殺害する。

 魔術で切れ味を上げているのだろう。


 死体となった三人が倒れたところで、リアは肩の力を抜いて剣を下ろす。

 彼女の周囲には死体が散乱していた。

 いずれも彼女が始末したものだ。


 彼女の纏う鎧は、ほとんど無傷だった。

 鎧の性能に頼らず、回避を欠かさなかった証拠である。


(良い傾向だ)


 リアは私の動きを参考に、身のこなしを活かす方面で鍛練している。

 元よりこの数を倒せるだけの実力はあった。

 加えて短期間ながらも私の指南を受けた彼女は、その才覚を十全に発揮し始めている。


 力量を急速に伸ばせたのは、何も私の指導力が高かったわけではない。

 ひとえに彼女の努力であろう。

 必死になって強さを求めた結果だ。

 その貪欲さは嫌いではない。


 リアを見ていると、肉体だけでなく心まで若返りそうだった。

 弟子を迎えたことで、私にも成長の余地が生まれたらしい。

 私はそれをはっきりと実感していた。


 なんとも喜ばしい発見である。

 昔の自分では辿り着けなかった境地だ。

 リアには感謝が尽きない。


「ウェイロン殿! 小官の戦いを見てくれたか」


「ああ、悪くなかった。鍛練の成果が出ているようだ」


 屋外の敵を倒し切った私達は、豪邸の前に移動する。

 室内はやけに慌ただしい。

 怒声や走り回る音が聞こえてくる。

 私達を迎撃するための準備を進めているのだろう。


 最も手っ取り早いのは、この豪邸を倒壊させることだ。

 私ならば拳の一撃で可である。


 しかし、それだと被害が甚大すぎる。

 貴重な情報源となる人物が、倒壊に巻き込まれて死ぬ恐れがあった。

 そうなってしまっては元も子もない。


 やはり正攻法――すなわち豪邸に侵入し、迫る敵を叩き潰しながら進むのが一番だろう。

 そうして犯罪組織の頭や幹部を捕らえるのだ。


 私には尋問や拷問の技術がない。

 ただ、目の前で部下を惨殺すれば、向こうも素直になるはずである。

 それでも隠し事をするのなら、本人の人体を傷付けるだけだ。


 私達は情報が欲しいだけなのだ。

 最低限、正常に会話さえできればいい。

 つまりその他の部位については、損壊させてもいいということである。

 こちらの納得できる情報を吐くまで、彼らには頑張ってもらおう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私達は情報が欲しいだけなのだ。 最低限、正常に会話さえできればいい。 つまりその他の部位については、損壊させてもいいということである。 うん・・・うん?
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