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第19話 拳法使いは正義に動く

 私の一撃を受けた斧使いの男は、回転しながら宙を舞う。

 そこから近くの建物の二階に飛び込んだ。

 壁を粉砕して、脚だけが屋外に垂れ下がっている。


 男は少しも動かない。

 死んでいるように見えるが、気を失っているだけだ。

 突きを当てる際に力を調整したので、肋骨と両腕が折れただけで済んでいる。

 命に別状はない。


 それなりの場数を踏んできたことで、若い肉体の力加減にも慣れてきた。

 今後はさらに精密なことも可能だろう。

 膂力だけで乗り切るのなら、若い頃と同じままだ。

 そこに技量を合わせることこそが、今の私の本領である。


(まあ、検証は後回しでいい)


 私は腕を下ろす。


 強盗達は驚愕して言葉を失っていた。

 彼らの中でも実力者であった斧使いが一撃で倒されたのだ。

 相応の衝撃があったようである。

 きっと私が斬り殺される未来でも想像したに違いない。


 周囲の人々も同様に驚愕していた。

 様々な感情を含む視線を私に向けている。


 唯一、リアだけが誇らしそうにしていた。

 端に立つ彼女は、音が鳴らない程度に拍手している。

 この場において、彼女だけが結果を予想していた。


 呆然とする強盗達だったが、自分達の状況を思い出したらしい。

 いち早く我に返った者が、杖を手に詠唱を始めた。

 魔術の予備動作である。

 間を置かず、杖から雷撃が迸った。


 迫る雷撃に対し、私は打ち上げるように掌底を当てる。

 破裂音を響かせて雷撃が霧散した。

 身体に僅かな痺れが走るも、これといった怪我はない。

 手のひらが少し赤くなった程度である。


「なっ!?」


 杖持ちの強盗は、顎が外れんばかりに口を開けている。

 そこから歯噛みして私を睨むと、連続して雷撃を撃ってきた。

 私はそれらを残らず片手で捌き切る。

 杖でだいたいの狙いは分かる。

 あとはタイミングを合わせるだけで相殺できた。


「ふむ……」


 私は魔術を受けた手を開閉する。

 時折、音を立てながら紫電が瞬いた。


 雷撃を構成する魔力を吸収しようとしてみたが、すんなりと成功してしまった。

 魔王の魔力に比べれば、非常に安全だ。

 抵抗感も皆無に等しい。

 受けた魔術をすべて吸収できるわけではないものの、これは便利な技能だろう。


(試してみるか)


 私はその場で軽く拳を突き出す。

 その際、取り込んだばかりの魔力を解き放った。


 突きに合わせて、拳から紫電が噴き上がる。

 空気中を弾けながら加速すると、その先にいた杖持ちの強盗に命中した。


「あぐぁっ!?」


 悲鳴を上げた強盗はひっくり返って痙攣する。

 全身各所が焦げて白煙が上がっていた。

 捌いた分の雷撃をまとめて飛ばしたのだ。

 威力も数倍に膨れ上がったらしい。


 これで魔術師への対策も固まった。

 遠距離攻撃にも柔軟に対応できるだろう。

 色々と使い勝手が良さそうだ。

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