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第14話 拳法使いは次なる標的を探す

「ハァッ!」


 気合の入ったリアが、正面から剣を振り下ろしてくる。

 そこに一切の躊躇いはない。

 こちらを本気で殺すつもりであった。


(いい心構えだ)


 迫る刃に木刀を添えて、脇へと受け流す。

 リアの斬撃が私に当たることはない。

 そこから木刀を返すと、顎を狙って振り上げる。


 リアは上体を反らし、紙一重で間合いから逃れた。

 そのまま飛び退くかと思いきや、彼女は踏み込んで反撃へと転じてくる。

 随分と強気な立ち回りであった。


 繰り出される斬撃を木刀でいなしつつ、私は彼女の動きを観察する。

 細かな癖や法則性を暴き、合間の隙を見い出した。

 刹那、リアの腹を狙って突きを放つ。


「く……ッ!」


 彼女は突きを寸前で弾くも、体勢を崩した。

 すぐさま修正しようとしているが、明らかに遅い。

 攻防のどちらも行えない状態に等しかった。


 私は木刀を短く持ち直すと、最小の動きから突きを打つ。

 今度はリアの顔を狙った。

 痣にはなるだろうが、死にはしないだろう。


 こちらの攻撃を察知したリアは、目を見開いた。

 無理な体勢から、強引に剣で防ごうとする。

 大した反応速度と判断力であった。


(しかし、まだ甘い)


 私は滑るように身を沈めながら、木刀でリアの足を刈る。

 顔への突きを警戒していた彼女は、あっけなく引っかかった。


「うおぁっ!?」


 転倒したリアは、慌てて起き上がろうとする。

 そこに木刀を突き付けると、彼女は静かに剣を手放した。


「こ、降参だ……」


「うむ」


 私は木刀を下ろし、リアの腕を引いて立たせる。

 彼女はため息を吐いて唸った。


「やはりウェイロン殿には敵わないな。家族以外で剣術に負けるのは初めてだ」


「そうか」


 私は拳法以外の武術も学んでいる。

 一通り習得した末、今の戦い方になったのだ。

 拳が最も強靭で破壊力が高く、勝手が良かったのである。

 武器だと私の扱いに耐えられず、頻繁に破損してしまう。

 いちいち武器を調達するのが面倒になったのも、大きな要因だろう。


 稽古を終えた私達は、森の開けた場所で昼食の準備を始める。

 今日は焼き魚だ。

 川で獲ったものを串焼きにして、リアの所持していた塩をかけて食べる。


「……ふむ」


 やや淡白だが美味い。

 元の世界と味は変わらなかった。

 リアも満足そうに食べ進めている。

 家柄の良い彼女だが、騎士の生活に慣れているためか、食事に頓着する様子はなかった。

 好き嫌いなく、子供のようによく食べている。


 私は焼き魚を頬張りながら空を見上げる。


(平和な日々だな……)


 腐毒の魔王を倒した私達は、旅を続行した。

 リアに稽古を付けながら、次なる魔王を目指して移動している。


 今度の目的地は、魔王の支配する荒野であった。

 この国には魔王がいないため、別の国に移ることにしたのだ。

 もしかすると潜伏しているかもしれないが、リアの知る範囲では存在しないらしい。

 騎士長だった彼女の情報力なので、ある程度は信頼できる。


 潜伏している個体に関しては、今のところは見逃すしかない。

 近付けば気配で察知できるだろうが、先手を打つのは困難である。

 後手に回っての対処になるものの、我慢するしかないだろう。

 ひとまずは、居場所の判明している魔王を屠るのが優先である。

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― 新着の感想 ―
[一言] リアが無邪気で可愛い でも修行になっているんだろうか。 移動も多いし、主人公が教えられることって、気の運用とかでは? リアは魔力を使ってるからねぇ。
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