ヒストリー
ミウの『強制空間変異』《エア・タイム・チェンジ》によってロックとリンバラはループエンドなる刑務所に来ていた。
見るからに普通の刑務所ではない。
看守はおろか、ロクな設備すらなく血の匂いだけが充満していた。
「み、ミウさん。まずは早速、お義母様の言い付け通り。ゴッド・キルていう人を探すんですか?」
「そうね、リンバラちゃん。まずその前にもう一人'会っておくべき人’がいるわ」
「会っておくべき人って・・・・・ひっ!?」
「ミウさん!リンバラ!下がって!!」
その人を見た瞬間、二人を庇う形でロックが剣を構えた。が。
ミウは逆に冷静そのもので。淡々と答えた。
「意味ないわよ、ロックくん。そこの人形もとい。元貴族のリーク様に剣を構えても・・・・・というか、本当に魂自体が抜け落ちている状態な訳だし」
「魂を・・・・」
「抜かれた・・・・」
そこに監禁されているのは我が儘で傲慢な貴族でもなく、リーク自身でもない。
正真正銘の浮人形でしかなかった。
ロック達は只、沈黙を貫くことしか出来なかった。
リークと面会した後、ロック達は刑務所を隅々まで見渡したが。
ゴッド・キルなる人物は既にいなかった。
「やはり、あの時点で脱獄に成功していたということね。けれども、ここループエンドを出るには私の許可が絶対条件・・・・・それに逆らうほどの魔力を彼は持ち合わせてはいないはずよ?明らかにこれは協力者の手を借りなくては成り立たないはず」
「協力者か・・・・・ん、これは・・・・」
ロックはふと。偶然にしては怪しい金色の大きな羽を拾って、
「やれやれ」と頭をかいた。
「キー・ゴールド・・・・か」
「どうする?あんたが守ってきた全てが白日の下にさらされそうになっているけど。ゴッド・キル様の力でもうちょい引っ張りきれないかい?」
キー・ゴールドの受け答えにゴッド・キルは未来を統べる眼力で進路を模索しながら。
「ああ。あとすこしなら・・・私が何より大事に守ってきた財産を無事に守り切れるやもしれないな・・・・・」
「はあ。らしくないねぇ?まあ、気持ちは分かるけど。次期に奴らは迫る。それまでに彼女を傷つけずに真実を伝えられるか・・・・・例の義母━━━━ミツからも了承は得ている。あとはあなた次第だよ?元東部隊隊長エターナル・ジャスティス・ミウ。夢は、未来は。始まったばかりでしょ?」
夜中の事だった。ミウがレッドライ騎士団の寮で一人眠りに着いた時、声がした。それは産まれた瞬間から知っていてどこか懐かしいお母さんの声が・・・・・
「はっ!・・・・」
目覚めるとそこは王都にある市場だった。
服装も騎士団の制服に着替えられていて、王都も何ら変わらない
昼間の風景そのものだ。
「目覚めたかい」
「あなたは、例の場所にいた・・・・天使?」
「そ。ミウちゃんをこの空間に呼んだのもあたいの仕業。夢の世界でのほうが色々と話しやすくてね。━━━━━━君のお母さんについてもお父さんに関して。いよいよ、話さざるえない状況でさ・・・・・これから来る敵もそうだが。今真実を知らないともっとミウちゃん自身が辛い目に遭っちゃう。こんなやり方しか出来ないあたいを鬼とでも人でなしと貶したっていい。けど、これだけは覚えておいて。君は、一人じゃないって━━━━真実」
瞬間、ミウの頭が真っ白になる。
頭の隅々まで洗い流され、ひかりと共に産声をあげる。
あれは、お母さん?それに━━━━━━
「やったな、クイニー!一人目は女の子か!!一体、どんな男と結婚するんだろうな~」
「もうっ、エターたら。気が早いですよ?まずはこの子の名前!考えないと」
「うん、この子の名前は━━━━━」
それからもその人とお母さん。そして私はすくすく育っていった。時に喧嘩し、時に互いの涙を拭い、私を精一杯育ててくれた。
「見てください!あなた!ミウがこんなにもよちよち歩けるようになっていますよ!アルバムがまた増えちゃいますね」
「ああ。そのかいあってか。騎士団でも無事に出世出来たし・・・・・これからは東部隊隊長としてもお前とこの子を守っていけたら━━━━━━」
その時だった。
街の平和が王都が私たち家族は一瞬にして、業火の中へ誘われた。
「悪魔だー!!また奴らがグレイを引き連れて・・・・」
「きゃあああぁぁ!!??」
「うぅ、わぁ・・・・・っ」
「おい、クイニー!しっかりしてくれよぉ!!なんでずっと寝てやがる!?まだ、始まったばかりじゃねぇか!!」
『おや、おやおや。これは誰かと思えば東部隊隊長のエターナル・ジャスティス・ミウさんじゃありませんか?こんな所でアットホームですね?』
「・・・・・お前が妻を、街のみんなを・・・・!!」
『おやおや。何やら誤解しているようですけど。これを行ったのは我々グレイの他にも悪魔達も関与しているのに。けどまあ、僕たちグレイと悪魔達を統べる者が降臨なさっただけですが・・・・』
「・・・・・なっ!」
彼が上空を見上げた時、ただ呆然とその脅威に魅せられた。
『神、そう。僕たちの親玉は神様だったという訳さ♪大人しくお縄に付いてくれたら助かる━━━━━』
グレイが最後の言葉を言い終える前に彼はグレイの首を鎖で跳ねた。それと同時に妻クイニーと赤子であるミウをしっかり抱き抱えて━━━━━━「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!!??!!!!?!!?」
グレイを悪魔をそして神すらも彼はたった一人で討ち滅ぼし、
漠然とした虚無感や虚しさで涙が止まらなかった。
そんな時。
「仕事でこの王都の街に来てみれば、何とも気味の悪いことを・・・・汝、主はその両手に抱え込んだものを果たして、守り切れたのか?」
わらわは幼少から既に両親を亡くして幸いなことに裕福な貴族の夫妻に気に入れられ、何不自由なく育った。
じゃが。どんなに美味しいものを食べようともどんなに綺麗なドレスや宝石を身に纏っても。
ありとあらゆる贅沢な暮らしをしても心だけはどこか、ぽっかりと小さな穴が幾つもあって。
友だちも使用人も養子として迎えた両親もどことなく壁越しに会話しているように思えた。
只でさえ、貧しい家庭の子だったのに。
皆はわらわの適性しか見ておらぬかった。
わらわは幼い頃から魔力が高く、さらにはオーム・フェアリーという蟲の妖精使いの才能も秘められていて。皆はわらわを利用して国の操り主に仕立て上げた。
勿論、なった暁としてオーム達にわらわの記憶を喰わして赤の他人となっておるが。
そんな時、この街の王都に転勤するよう銘じられた。
何でも、その街の上位裁判官がご年配で代わりの者を探していたそうじゃ。
断る理由もなく、只漠然と心の穴を埋めるように行きの馬車からの眺めを観て━━━━━そして。
エターナル・ジャスティス・ミウとあいまった。
彼は両手に妻子を抱いてこの戦況の果てに一人虚しく、妻を亡くして逆に小さな命だけが泣きやまなかった。
その光景にその涙にわらわは自分の生い立ちと思わず、重ねて終った。
今思えば、只の気まぐれだったかもしれないし。
何となく心の穴を埋めるように委ねたのかもしれない。
「主はそこの小さな命を守り通すと誓えるか?」
「主は例え、自分がこの子の母親を殺したことになっていてもか?一生娘から犯罪者だと見くびられてもか?答えよ、ゴッド・キル!!」
その時、ミツの体からはオームのひかりと共に人々の記憶を盗み、改ざんし。ミウ自身を欺きながら一生、守り通して。
「ちょっと、ミツちゃん!そんなことしたら死んじゃうよ!!」
「そうだよ!いくら頑丈だからって、自分の身体を剣で貫くことないよ~!」
「やかましい!わらわの痛みに比べたら・・・・キルにあの子に申し訳がつかぬ!!」
「ホント、やめてよ!このままじゃ、ボク達まで死んじゃうよ~!!」
そこで夢が終わる。まだ夜中の深夜を廻った頃、満月の虫時雨の元。ベッドが涙に浸るほどにミウは泣いていた。
「っッっ!!?あああ・・・・わわあっ!!!!?・・・!!あああああっッ」
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涙腺崩壊?になれたら嬉しいです。
ついに明かされた真実。
これからどうなるのでしょう。