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ムーンライトの剣~守りたいものがそこにある~  作者: 西銘勇河
二部 第四章
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決戦の下準備

「おーい、誰か。ここの土壌をなんとかしてくれ」


人間国家の街では今、慌ただしく街の基盤を固めるレッドライ騎士団たちが凄い剣幕で走り回っていた。

前々から予測していた愛殺しの蛇が数億年の歳月を得て、この世を亡きものにしようと迫っていた。街の住民や貴族の人々には前もって予測の一ヶ月前から完全に避難をさせておき。

逃げ遅れた人や身体の弱い方は大天使イヴと時の番人リークの例の場所で避難させ、細かい進行はレッドライ騎士団南部隊隊長のクイニーが諸々受けよった。


次に上位裁判官にして悪魔三将の月将、ミッツ・ジャスティス・ミウと元神殺しゴッド・キルこと東部隊副隊長エターナル・ジャスティス・ミウは二人で北側を固めて。


東と西には悪魔の残党とグレイ、グレイが召還した未来神Ai・キョムが数機控えていて。

念のため、騎士団や魔教人の卒兵を数百人を配置済みである。



南にはミウたちの切り札とも呼べる二人の勢力がいる。二十年前の過去改編を成し遂げ、その身に‘災厄なる魂を宿した’北部隊隊長ウルフ・ジャスティス・ミウとかつての悪魔の親玉にして最恐無敵、愛殺しの蛇とは実の兄弟に当たる死又はX、災厄が街の布陣を担っている。



そして中央に、ミウとリンバラ、ロックの三人が愛殺しの蛇を待ち構える。リンバラは水将スーと契約したスノーライトの剣を飄々と美しく構え、ロックは炎将と契約した達磨殺の剣を轟々と構えていた。


だが、肝心のミウは少し浮かない顔をしていた。

愛殺しの蛇について入念に下準備を凝らして、この磐石の布陣をそう簡単には崩せないだろうし。

完全に勝気がないわけではない。いざとなれば生命宣言を結んだ家族ミックスの援軍も用意してあるし、災厄の権能によって。

一時的にだが、閻魔大王の助力も得られるはずだ。

それなのに・・・・・


「ムーンライトの剣・・・・・」

それは愛殺しの蛇を倒す上で最も欠かせないものであり、その契約は月将ムクことミウの義母のミッツの助力を得られなかった━━━━━ということなのだ。


それに気付いてか、リンバラがミウの強ばった顔をみるなり強くけれども優しく、ミウに抱きついた。


「大丈夫ですよ、ミウさん」


「リンバラ、ちゃん...?」



「きっと、お義母様も同じですよ。自分の最愛の娘に大きな枷を持たせたくないんですよ...もちろん、リンバラもロック隊長だってそうですよ?大好きな人が今でも危ない状態にあれば。誰だって躊躇いますよ」


「でも、私は!お義母様たちやみんなのために戦いたい。それが命に関わることだとしても━━━━」



「だとしたら、俺も同じだせ?ミウさん」


二人の会話に賛同するようにロック・サンダースが剣を担いで意気揚々と口を開ける。


「俺も騎士団の一人だ、リンバラやミウさんばかりに任しぱっなしも性に合わない。それに今さらだろ?仲間なんだからよ」


『仲間か、いささかキザなことを言う』


「おい、レイ。お前がそれを言うか?」 


『それを言うなら、そこの’変態‘にでも言ったらどうだ?少しはマシになるんじゃないか?』


炎将レイ━━━━達磨殺の剣に姿を変えたレイの光沢が鈍く輝いた。まるでそっくりそのまま言葉を返す、と言いたいように。


『はあはあ、リンバラちゃんの手々が私の身体に......!?これぞ、一心一体!?』


「ミウさん、蛇狩りをする前にこの剣を片付けてもいいですか?」


「そうね。災厄にでも頼んで自我だけを失くした只の武器にでも変えさせましょう」



「・・・・」

ロックは少し後悔した。けれどもミウやリンバラにも心の余裕ができたように見える。水将には言わないが、こういう時には場を和ませる力があるように感じられたし。なにより、このメンバーなら愛殺しの蛇相手でもきっと大丈夫だとロックは確信していた。


空は暗い雲の塊を帯びている。まるで時期にやってくる主を迎え入れるかのように......雷がごろごろと小さく木霊した。



「いよいよ、ですな」

小さな教会の隅の部屋で、魔教人考古学者にして指揮官のノウズ・オールドが呟いた。

別に誰かに向けて言ったものではないし、ましてや大天使イヴや時の番人リークもこの場にはいない。

彼らは彼らなりに頑張っているし。市民の安全と避難を優先している。

まあ、大天使イヴはイヴで最終的には戦いに加戦するだろうし。リークに至っては遠距離からでもミウたちのサポートに回れるだろう。

そんな長々と内心喋っているノウズ・オールドは‘あえて’傍観を貫いている。そう、あえて。

別に特別な意味などはない。

ノウズ・オールドは立場的にも頭もきれる方だが、戦闘には不向きだ。余計な手出しをするよりも自ら傍観を買って出た。

大天使イヴとしては‘内心思う’ところが薄々あるようだっが。決して口にはしなかった。

それには流石のノウズ・オールドも気付いてはいた。

だが、今回の戦いの結果は目に見えてる。

勝ち負けが決まった試合に用はないとノウズ・オールドは窓の景色から背を背けた。


「来たか」

人間国家から少し離れた見晴らしのいい大地で悪魔中層幹部グランが僅かな殺気を汲み取って、肩に力が入る。別に人間国家がどうなろうとグランにとっては知ったことではない。

ただ、唯一の心残りである最愛の恋人イヴ。

彼女だけは何よりも守りたいし、例の場所での死闘以来会っていない。それが忌まわしき因縁の相手が絡んでくるならばグランは剣を取り、命を差し出そう。

初めて会ったあのときのようにイヴを連れ去りに行く......

グランが気持ちを高らかに足の脚力を全開にして大地がひび割れると同時に忌まわしき相手が待つ空へと駆け出した。

だが。


「なっ....!?」


その時、グランは初めて絶句した。

曇天を帯びたかのような空に見えた‘それ’は決して空などと呼べる代物ではなかった。

愛殺しの蛇。

龍神や魔族とは到底比べ物にならない大きさ。

数億年の眠りから蓄積した愛の濃度。それを全て、人間国家へと指し向けて来たのだ。

討伐不可能、討伐困難、遭遇率皆無。

ラスボスのお出ましである。


迷いが生じたグラン。普通に考えて勝てる訳がない相手だ。だが、グランはこの日のために今のこの一撃のために!グランは剣をかざした━━━━━━━



「久しぶりだね、‘アダム’」


「!?」


「でも、僕には勝てないよ」

刹那、グランの剣が愛殺しの蛇に届いた直後。

まるで見えない力によって弾き飛ばされたかのようにグランは人間国家へと墜ちていった・・・・・


「ぐわうわわわわわわわわわわわわわわわわわああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ...!!??」



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