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ムーンライトの剣~守りたいものがそこにある~  作者: 西銘勇河
二部 第二章
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勢力争い

「お待ちしてをりました、魔王デンス様」

「ああ、くるしゅうない」

ここは人間国家の領土、本来であれば魔王自身が訪れることも。ましてや一度襲撃した相手なら尚のことだが。災厄のコネを得て、人間国家との政治的交流を踏まえて魔王デンスとその一行達が人間のメイドらしき女に連れられて。聖堂に聳え立つ門をくぐり抜けた先に━━━━━

東西南北のレッドライ騎士団と天使に悪魔にグレイと言った最大勢力全てが顔を並べていたのだから・・・・無論その中には東部隊隊長ムーンジャスティス・ミウの姿もそこにあった。

これには同行人である吸血鬼のスリ・ランカーや龍神ラスト・エンペラーもいささか気が引けたようだ。それでも魔王デンスは余裕を崩さず、魔王たる振る舞いを見せつけた上で席に着いた。


「では、始めましょ?私たちの会議これからを━━━━━」



「本日、魔王デンス軍御一行に来ていただいたのは他でもありません。互いの国々の同盟を結ぶためです。元より、貴方がたも余計な争いは避けたいはずですし。何よりも貴方がたに選択権はありえません」

ミウの受け答えに吸血鬼であるスリ・ランカーが反論の意を唱えた。無論、相手の立場が有利にあるからと言って主たる魔王デンスを愚行することはスリ・ランカーにとって許せないものだった。

それでも魔王デンスは威風堂々としていて、片手一つでスリ・ランカーを抑制して見せた。魔王デンスはこの対応がさも分かっていたのかのように粛々と言葉を紡いだ。

「確かに、同盟を結ぶには我々魔王軍にとっても重要な案件だ。だがしかし━━━━この提案は明らかなる不平等。こうして全勢力を集めることによって有無を言わさぬ威圧感に加えて。そこにいるグレイや災厄と言った勢力に我々の立場は奪われて来た。それも倫理的に金銭的に立場としても全てが生命宣言をせざる得ないまでに・・・・・その異論を是非とも聞かせて欲しい。特に、付き添い人である龍神ラスト・エンペラーにも向けて欲しい。彼もまた、襲撃の件も含めてあまたなる被害を受けて来た一人。グレイや時の番人はどう弁明するつもりで?」

魔王デンスから痛いところを突かれたミウ達━━━━確かにこれ等の一件についても型を着けねば話にならない上にこの同盟の会議が意味を成さない。これだけは阻止せねばなるまい。ミウ達の反応を知ってのことか、グレイや時の番人リークが重苦しい表情で言葉を搾る。


「確かに、その件に関しては反論はない・・・・・が。我々もまた、生命宣言をしている身。魔王軍とやらが我々と同じ立場だったのなら迷わず同じ行動を取るはずだが?」

時の番人リークの疑りに魔王軍サイドも引きを取らない。むしろ挑戦的な構えである。このまま論争を繰り出しても構わないが、正直に言えば霧がない。そんなピリピリとした会議において、以外な人物が名乗りを上げた。宇宙人グレイである。

彼は細長い腕を上げながら意を示した上で、結論から出る答えを提示してきた。

『確かに、ボク達の勢力図は混沌を極めている・・・・・だが、それが‘たった一つ’の標的に絞ることが出来るのならば、話は別じゃないのか?』

「それって━━━━━」

スリ・ランカーは何かに勘づいた時にはこの場にいる誰もが同じ結論に至っていた。そう、最初からそうすれば良かったのだ。

「私たちと魔王軍、全勢力を以て愛殺しの蛇を打倒したいのです」

ミウの一言によって答えが確定された。


「ほほう?愛殺しの蛇ですか。それはまた、無謀とも呼べますな」

龍神ラスト・エンペラーが眼を細めてミウたちを見上ぐ。

まるで、それが出来ていれば最初から苦労していないとでも言うような表情で。だが、ミウたちはその反応も無理はないと大きく頷いた後に言葉を続ける。

「確かに愛殺しの蛇は討伐不可能、討伐困難、遭遇率皆無と言った堅物です。でも、それが討伐可能、討伐達成、遭遇率必然になれば話は別です。はったりなどではなく、私たちにはそれが可能です。だからこうして全勢力の顔ぶれを揃えたのです。愛殺しの蛇を倒せればみんなにとっても御の字・・・・・ですから魔王軍には早急な同盟を結んで欲しいのです!ここで争っていてはいつか後悔する。本当に倒さねばなるまい敵を前に━━━━━どうか、私たちに力を貸して頂けませんか?」

「━━━━━分かった」

『!魔王様・・・・!?』

「スリ・ランカー、ラスト・エンペラー。これは我々にとっても悪くない取引だ。人間国家からこちら側には手を出さないと無条件で申しているのだ。生命宣言としても後の貿易にも貢献するだろう・・・・・それに」

「愛殺しの蛇は我の父と母を殺したかもしれぬ張本人だからな」

『・・・・・・!?』

「何、勘違いするな。我々魔王軍はあくまでも部下である家族ミックスの命を優先としているのみ。部下たちに危害を加えようものならば、貴様等の首を跳ねているところだ」

「・・・・分かりました。では今この場を借りて宣言致します。我々人間国家と魔王軍は一切の敵対を許さない同盟国として。ここに愛殺しの蛇を打倒して見せましょう━━━━━」



「はぁぁ~疲れた・・・・・」

「お疲れ」

人間国家と魔王軍の会議を終えてから深夜を迎えて。東部隊隊長ムーン・ジャスティス・ミウと西部隊隊長ロック・サンダース、副隊長隊長リンバラ。そして上位裁判官のミッツ・ジャスティス・ミウが会議疲れのミウに声援をかけていた。

今回の会議ではミウを主軸として行われたため、人一倍に応えているはずだ。なので他の面々は気を遣って席を外してくれている。ロックやリンバラ、ミッツはというとただ単にミウの側にいてあげたかっただろう。互いに余分な会話こそしなかったものの、その気配りは流石として言いようがない。ミウ自身もみんなの気持ちには気づいているようで。水分補給や汗を拭った後にロックたちに向けて声を張り上げた。

「今回はみんなのおかげで助かったよ。魔王軍と同盟を結ぶのも互いの生命宣言を為すためにも、何よりも愛殺しの蛇を打倒する第一歩に繋がった・・・・・本当にどうお礼をしたらいいか」

「それは全部終わってからだろ?ミウがいなかったらみんなもああも素直に言うことを聞かないし・・・・・何よりもミウにみんな感謝しているんだ。救われた恩も守りたい気持ちも━━━━」

「うん、ありがとう。ロックくん・・・・」

「それに、ミウさんもミウさんですけど。リンバラたちは自分の意思でやっていることです!世話を焼きたいのはお互い様ですよ?ですよね?お義母様?」

「まあ、そうじゃな。愛おしき娘の晴れ舞台に応援に駆けつけない親がいてたまるか。その証拠にクイニーやエターナルも会議にはいたじゃろ?」

「そうだけど・・・・・」

「心配するでない、ミウよ。クイニーは元より弱い。じゃから人一倍暗躍に長けておる。その付き添いでエターナルがいるじゃけじゃ。誰もミウの側から離れたりはしないぞ?」

「うん、ありがとう。お義母さん。。ロックくんもリンバラちゃんも本当にありがとう・・・・・」

ミウたちがしばしの余韻に浸りながら意思を新たにその場を後にした。互いが互いのために行動し、まだ先の見えない未来のために━━━━━勢力図の家計が大きく狂い出すとも知らずに。

ミウたちは、魔王軍は、そして愛殺しの蛇は。

さらなる試練へと足を踏み出すのだった・・・・・・




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