真相
時計の音が静かなレッドライ騎士団の有する図書館にはほんの些細な物だった。
ムーン・ジャスティス・ミウ。
ミウは東部隊隊長としての心構えのせいか、熱心に事故の起きた原因について脳内で古いページを埋め込み、客観的に真相を探るが最初から結論は出ていた。
「やはり、‘例の場所’が絡んでるのは間違いないようね・・・・・」
ミウは難しげに奥の本棚を睨む。けれども結果は結果として残った以上、上の上層部━━━━━
政府側に密かに報告をせねばなるまい。
貴族や民そして魔教人には決して口外されることない極秘の対話。その対話の使命が崩れ落ちようとしているのだ。放っておけるわけがない。
もし仮にもそのような事態が起こったならば、追放もしくは魔力を全て吸引される死刑判決のどちらかだ。
まあ、死という概念は魔法学的に証明されているという。
人生という修行に潔い善人なる者は天へ人ならざる行為を働かん者は地に叩きつけられる。
これは人類がイメージとしての話が魔力での観測を数値として現され、人は天への進行を働いたそうだ。
無理のない話だ。人が魔法学的に天へ誘おうなど、欲があるからに過ぎん。
だが結局、人は神には抗えず。尻尾を叩かれ帰ったそうだ。
ミウはミウで潔い心がけをしてきたつもりだ。
だがそれはミウの意見であり、神からはそう映っているとは限らない。
死が目の前にあるということは漠然とした恐怖と客観性に満ちた冷静さを噛み締める事が分かる。
ミウはぱたんと本を閉じて、図書館を後にした。
事件の解決が見えたのはいいが、その前にこの王都というチェス盤に‘策’を置かねばなるまい。それがどんなに汚れた背徳行為であろうとミウは東部隊隊長として責務を果たせねば死ぬに死ねない。懐から杖を取り出し、隊長のみに与えられる杖で上級魔法の
『強制空間変異』により空間がねじ曲がり、みるみる内に片付けられて行く。
スタスタと無言を貫きつつミウはぐわんぐわんとけたましく杖を操りそして━━━━━━━
「相変わらず、ぶっきらぼうな部屋ね」
そこは刑務所だった。
何年も人が寄りついていないような虚しさに加え、灯りはあるものの奥のコントラストは黒一色で檻の中からは幽かに人間の匂いがした。
「無理もないわ。ここは極秘中の極秘。『殺されない死刑囚』なんだから。ね?‘人殺し’」
「・・・・・はああああ~。だぁれが、人殺しだ。女隊長?」
そこに男がいた。
半裸から逞しい肉体が傷跡で塗りつぶされ、両手両足は鎖で拘束されていてる。嗅覚からは強烈なほどの血の匂いがした。
「冗談はよしなさい。貴方は神を殺す対価として子供、女、老人、障がい者を生け贄の対象とした・・・・・これ以上の理由が他にあるとでも?」
「・・・・・ぷ、ギャハハヒャアアッ!!そんなの何かを殺したに入らんよ。俺様はゴッド・キルを名乗る男だぜ?オメェ等が鈍間なのがいけねぇだせ?」
「そうね。私達はその一歩早く行くことが出来なかった。けど、貴方は弱い。その心の弱さがここにいる理由よ」
「物は言いようだな。まあいいさ、どうせここに来たのも俺の力を借りに来たんだろ?」
キルがニヤリと見透かしたように言う。
それにミウはキルの言葉に続けて本題に入った。
「貴方には今王都で起きている事件の真相とその解決策を予知してほしいの」
「いいぜ?もちろん。対価はあるんだろうな?」
「ええ」
「じゃあ、その前に━━━━━━」
瞬間、キルの顔付きが豹変した。
いかれた殺人鬼からおもむろに厳格な雰囲気がある人物に変わった。
「魔力吸引による鎖の解除━━━━━━完了。次に殺されない死刑囚番号11123501通称ゴッド・キルに魔力の補給━━━━完了。仕事の時間です。ゴッド・キル」
ミウのコンピューターじみた声と共にキルの右目に光が生じた。
深い集中力の元、キルは淡々と真相を語った。
それを頭にミウは叩き込み、数十分経つか経たないかの時間で二人の意識が覚醒した。
「・・・・・なるほどね。最初からあそこに行くしかないようね」
「そういことだ。そこに行けば、お前の‘運命’がある。強く焦がれるといい」
「・・・・・・」
「さあ、女隊長。お前の今日の対価を払って貰おうか?」
ミウはそこへぬいぐるみを投げ捨てた。
真っ白のもふもふのユニコーンのぬいぐるみを。
「私が幼い頃から大切にしているぬいぐるみよ。‘その時の母親’との大切なぬいぐるみよ・・・・・」
「嘘はついてねぇみたいだな?フギャギャアア!いいねいいね!?人のぬくもりが匂いがある物を━━━━━こぉんな風に引き裂くのはたのしいね!」
「・・・・・・」
ミウは杖を取り出し、刑務所のぬくもりを図書館の無機質な匂いへ戻した。
こういったのはもう慣れている。
ミウがミウであるためではなく、東部隊隊長としてのミウであるために。
今日もまた。何かを殺し続けて行くのだろうか。
その頃、ロック・サンダースは馬にまたがり吠えていた。
なぜならば、目の前に奇怪な乗り物をアンバランスに操縦する馬車使いが行き交う民へと突き進むからである。ロックの雄叫びにも馬車使いは「止まらないです!」と混乱を招いている。
ロックは度度拳からムチへ魔力を込めてその怪奇な円盤を揺さぶるが、依然として跳ね返されてしまう。
くそっ。あんな品物、上級魔法を使ったとしても歯が立たねえ・・・・・・
せめてあの馬車使いを円盤から引き剥がして、円盤を激突させて大人しくさせるしか━━━━━━━
「一か八かだ・・・・・!」
ロックはおもむろに杖を取り出して大きな星形の魔方陣を奏で、
馬車使いの重心の魔力が溢れ・・・・・!
『来い!』
刹那、目の前に大きなコンクリート塀が現れ馬車使いと直撃しようというその瞬間で馬車使いをロックの胸元に瞬間的に移動させ、ロックは馬へブレーキをかけた。
そのタイミングで怪奇な円盤がコンクリート塀に直撃し、煙を吹かしたのであった。
「にしても、大丈夫か?怪我とかしてなけりゃ助かるんだが?」
「ええ、大丈夫ですので。そろそろ卸して下さい・・・・・」
恥ずかしそうに馬車使いの男が言うので、ロックはその場に卸してやる。ロックが軽く身元確認と住所を聞いてから例の円盤へと足を運ぶ。
こんな代物は王都の魔法兵が束になろうとも傷一つ与えられそうにないな。やはり、‘例の場所’が関係して・・・・・
とロックが円盤へ触れようとした瞬間。
「なっ!?」
あたかも光の欠片が蒸発したかのように円盤が姿を消した。
一体なにがどうなって。
「キャーー!?」
「何だ何だ?」
「デケぇ・・・・・」
その時、絶望がそこにいた。
王都の宮殿の頂上に、石像の悪魔が鎮座していたからだった・・・・・・
「急げー!まだ王都にはヤツらは進行していない!今が攻め時だ!!」
レッドライ騎士団が戦慄の渦を上げ、宮殿へと尻にムチを打った。それに何事かと魔教人達がこの異様な空気に問い詰める。
その応答に困り果てる新人騎士に代わってロックが代弁した。
「事情は後で説明致します。今は市民の安全とその冷静な対応をお願いしたい」
「で、ですが!あそこに鎮座している悪魔は明らかに魔力の桁が違います!共鳴魔法を解いたとしてもあなた方に勝ち目は・・・・・」
ロックは少しの間を置いて、魔教人の肩を取った。
「大丈夫です。勝つか負けるかじゃない。‘我々が間違っていない’ことを示せば良いのです。あそこにふんぞり返っている悪魔をぎゃふんと言わせましょう!」
そしてロックは騎士団を引き連れ、宮殿へと急いで行った。
一方で王都宮殿内では、悪魔の進行が淡々と行われていた。
宮殿内の貴族や政府は恐怖におののき、騎士団や魔教人がいくら攻撃をしようが悪魔達はビクともせずにただ淡々と進行する。
「くそがっ!」
とある新人騎士が一体の悪魔に剣を震うが、悪魔に効く所か。剣をも体内に飲み込み始めたのだ。
「ひっ!?」一瞬怯んだ時である。悪魔達はそのまま進行して騎士団員をあたかもそこらに転がった石ころのように踏みつけ、騎士団員の体が見る見る内に崩壊して━━━━━━━━
一体の悪魔が進行に参加した。
「きゃー!?」
「逃げろ逃げろー!!」
貴族達の悲鳴がエスカレートすればするほど、魔教人や騎士団にも迷いと恐怖が生じた。
俺たちはあんな化物になっちまうのかよ・・・・・
誰もがそう思った時、一つの美しい剣が悪魔を切り裂いた!
屈強な体付き。勇ましく闘志に燃える漢こそ、西部隊隊長ロック・サンダースであった。
ロックは雄叫びの如く皆の闘志を揺さぶる。
「聞けーーー!我々は挫けてはならぬ!この進行する悪魔にとって、不安や恐怖こそがヤツらの餌になる!我々は誰かを思う『愛の力』で、ヤツらと戦うんだーー!!」
『・・・・・オーーーーッ!!』
「俺は愛する妻を守る!」
「家でナタリーと子どもが待ってるんだ!死んでたまるかよ!」
『魔教人第十八魔法による神のご加護を!裁き《アーメン》
・・・・・・!』
「そうだ、行けー!」
「そうよ!頑張って!」
皆が皆。愛する人のために剣を振るい、魔法を唱え、声を奮い立たせる。徐々に悪魔達は粉々に消えて行き、そして。
「西部隊隊長ロック・サンダースは!人々の命を笑顔を守る事だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
刹那、辺りは唐突に静まり返った。
悪魔達の姿は消えて人々は歓喜の雨を━━━━━
「こんな物か、人間の力など」
歓喜の雨は一瞬たりとも起こりはしなかった。
また再び、先ほどの悪魔達がヘドよりも生ぬるいと分かるほどの魔力。ガタイの良い黒いボディとその黒い仮面から伺える化物の風格は・・・・・
「我は悪魔中級層幹部、グランである。良い玩具はどうむせび泣くかな?」
「あれは、グラン!魔教人童揺説に唱えられたというあの、化物なのか!?」
「ふん。そのような小賢しい物に唱えられるなど、我も墜ちた者だ。だが、この汚れた宮殿は今や我の支配下にある。天高くそびえ立つ石像がその現れ。我の首を跳ねるのが先か、貴様等がくたばるのが先か。見せてもらおうじゃないか・・・・!」
グランの生々しい殺気の質感が魔教人と騎士団の心臓を揺さぶったかと思うと、気がつけば、皆我を忘れて剣を振るっていた。
だが、騎士団の剣はグランに届く前に折れて跳ね上がり、周りには濃密な青い魔力の牢屋が騎士団を囲んでいた。
「心臓破り《バット・エンド》!」
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
騎士団は汚い花火のように、死んだ。
普通ならば、貴族や政府はここで逃げ出すべきだろうが。
余りにもおぞましい恐怖が足下に根っこを生やしていた。
「次はお前等だ!」
「くっ!」
その時、ロックは俊足魔法で貴族達の前に立ち、グランの濃密な魔力砲を払い除けた。
そしてそのまま魔力砲を震わせ、グランが払い除けたと同時にグランの顔面に迫り。剣と剣の金属音が周りにいた者達を吹き飛ばして「こんな物かぁ?我を更に楽しませてくれ!」「はああああッッ今だ!!」ロックが悪魔中級層幹部グランを払い飛ばした時である。
魔教人達の長い長い呪文を小さく唱え、高らかに宣言する。
『時空間へさらば《ブラックホール・イズ・ビックベン》!』
その瞬間、グランを閉じ込めた空間でブラックホールのようなねじれが生じて星の崩壊とも言える爆音が響き、空間という概念は無くなった。だが。
「危ないところだったな。あれを石像にすり替えてなければ、腕の一本はくれてやったというのに」
『・・・・・!』
皆の目が戦慄した。あの魔法は上級魔法中の上級魔法にして、伝説の天使イヴを瀕死に追い込んだという禁じられた魔法だというのに・・・・・・共鳴魔法を解き、騎士団とその隊長ロック・サンダースと手を組んでこの有様。
我々は崖っぷちから突き落とされそうになっている。
「さあ、お遊びはここまでだ。そこで隠れもせずにのたばっているやからは肉を引き裂いて死ね・・・・・・!」
「あ、危ない!!」
ロックが振り向いて、俊足魔法をかけようとした頃には貴族達に魔力の鉄槌が降ろされるまで、一秒と無かった。
グランはその絶望を味わおうとした時である。
束ねられた長い髪と共に、美しい剣の筋が魔力を貫いた。
端正な顔立ちから出る勇ましい匂いにスラリとした体軀から立ち上がって剣を終う。
「遅くなってすみません。ロック隊長。今からこの西部隊副隊長リンバラがあいつを仕留めます」
「ふん、小娘如きが我に挑もうなどよっぽど死にたいようだな?」
グランは再び、大剣を取り出し強烈なまでの殺気を倒壊したフィールドに叩き込む。普通ならば余りの殺気に震え上がって剣と己の精神が霞んでしまうが、リンバラは怯むどころか。余裕綽々と剣を構えていた。
小娘、終わったな。とグランはほくそ笑んだ。そのまま大剣を振り払おうとした時である。人間一人分はあろうかという傲慢な腕が天井に張られた糸により引き裂かれ、ズンと墜ちた。
「何!?」
血の噴水がグランをあざ笑うも、悪魔中級層幹部グランは咄嗟に虐殺魔法を使おうとするも、糸という糸がグランの体を絡み付き目の前にリンバラがニッと笑って━━━━━━
「氷繊執行・・・・・!」
一つの直線美がグランに響いた瞬間、グランは倒れた。
それからようやく、歓喜の雨が沸き立った。
皆が皆、安心し喜んでいる中、ロックとリンバラは怪訝そうに上を見ていた。
宮殿の頂上にはまだ、悪魔の石像が鎮座しているのだ。
確かに今回のクーデターは悪魔中級層幹部グランによる犯行だが、グランは倒したはず・・・・・しかし。考えて見ると悪魔は倒されると消滅するはずだが━━━━━━
「きゃー!」
「助けて、お母様ー!!」
「近寄るでない!このガキを死なせたくなければ、我が退却するまで動かないで貰おうか?」
皆が悔しさに呑まれながら一歩下がる。
それからグランは後ろに異空間の逃げ口を作り、子ども諸共逃げられる、その時!
一つの力強い線がグランの首を跳ねた。血が噴き出し今度は全身までも切り刻まれあけっなく消滅した。
グランを仕留めたロック・サンダースは子供を抱きかかえ。
「ったく、大事ないか?小僧。今、母さんとこ連れてってやるからな」
それから貴族の婦人の女とその子供は涙ながらに帰って行った。
それをやれやれと見守ってからロックはリンバラへと顔を向けた。
「にしても、意外だったよ。リンバラ。お前が俺のいる任務に就いてくれるなんて。いつもならツンツンして関わろうともしねぇのに」
「ふん。勘違いしないでくれますぅ?リンバラはただ、貴族方を守れなかったロック隊長を仕方なく助けてあげたんだからね?」
「はいはい、悪かったよ。でも、お前のそいゆうとこ、俺は好きだけどな」
「なななっ!?何よ。急にそんなこと行っちゃってさ。私が好きなのはロック隊長で・・・・とにかく!今回は私のおかげで助かったんだからね!」
「好きもなにも、お前は女じゃなくて━━━━━」
‘聞こえるか?皆の衆。悪魔中級層幹部グランは生きている!
悪魔とは天使と違い肉体を持たぬ。
我の醜い邪念が消えぬ限り、再び王都を地獄の恐怖へ・・・・・
フハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!
そして、宮殿に鎮座した悪魔の石像は皆の不安と共に消え失せた。
「どうやら。宮殿での事件は解決したみたいね」
一方で、東部隊隊長ムーン・ジャスティス・ミウはゴッド・キルの予知魔法の効果で脳内にその知らせが響いた。
ミウは薄暗い夕暮れのレッドライ騎士団の寮の廊下をひたすら歩いていて、‘例の場所’に繋がる位地を探していた。
刻々刻々とズレは調整されていき、「着いた」と呟く。
目の前にある透明色の不可透視能力付きの扉を触り、深呼吸。
そして、扉は開かれた。
辺りは暗く、何も見えない。けれども奥へ目を翳すと一つの光の名の下に剣が立てられている。
ミウは慣れた手つきで近づき、躊躇なく剣を抜いた。だが。
「・・・・・・どうやら、まだ相手はいないようね」
そう。これこそが騎士団の秘密であった。
この空間では自分の運命に見合うかどうかの相手もしくは何かが現れ━━━━━殺し合う。
互いが互いに見合う関係ならば、天から使者が現れ契約を結ぶという。だが仮に、相手がそれ以上に強ければ命を奪われその何かは王都や町に放出されて行く・・・・・
普通ならば、そんな馬鹿げた話。聞く耳すら持たないだろうがここに来る者達は皆、‘愛’に飢えているのだ。
だからこそ何かを求めてでも、誰かを危険に晒してでも、ミウは愛を求めていた。
「来たわね」
相手の魔力が感知したミウは剣をギッと構えた。
相手の風格からして、相手は男。それもかなりの強者である。
相手の男がゆっくりと剣を抜き、目に殺気が迫った瞬間━━━━━━ミウは俊足魔法で男の顔面めがけて剣の火花を散らした。だが、男も負けじと荒々しくミウを後方へ押し出す。
それに男が声を荒げ剣を掲げた隙を突いて、ミウは杖による魔法『保険的殺し方』による幾つもの魔法陣を後方に出して大きな爆風が男を包んだ。
「仕留めた?」
ミウは一応剣を構えつつ暗闇を睨みそして。
「ぐはぁぁ!」
煙を噴き出し男が剣を構えようとだが男は何かに縛られたかのように動けなかった。
そう。ミウの魔法『保険的殺し方』の保険によって魔法陣の縄が男を捕らえていた。
それにミウは力一杯の殺気を剣に込め、男の首めがけて剣の円周を奏でたタイミングで男はさらに声を荒げ何と魔法陣の縄を自力で解いたのだ。
しかも男の魔力が著しく上昇し、男の体内から赤色のベールを纏った殺気が彼の強さを物語っている。
(なるほど。殺気を最大限に引き出して魔力の上昇に置き換えた訳ね。でも、この急激な魔力上昇は心身をかなり喰らういわば。時限爆弾付きの賭になる。つまりは相手の男はトドメに畳みかけに来たということよ)
ミウは男の覚悟を悟ると全身から魔力を込みあげ、剣に流し込む。すると相手の男と互角に渡り合えるほどの力が灯されたではないか。
「オオオォォォォォォォッッ!!!」
「はあああああああああッッ!!!」
無空間の闇と闇がけたましく剣の交わりが今にも空間の崩壊を産もうとしながらも、一撃一撃が彼らを喰わんとその死が目の前にありながら。彼らは剣を取り続けた。
それからおよそ3時間後、時間が深夜を廻ろうという正にその時!
男は剣を掲げて、女はミウは男の胸ぐらめがけて剣を構えた。
数瞬の安らぎから目と目に殺意が込められたのを合図に、二人は無空間の混同から目を覚ました。
「終わった?」
あっけらかんとするミウに対し、闇の中から剣を終う音が聞こえた。それも周りは妙に明るく、頭上には何故か月夜が顔をのぞせていて・・・・・
『・・・・・・』
そして、二人は出会った。
欲望の限りを尽くすこの空間でただ見つめ合い、念のため二人してこう言うのであった。
『あなたは私の運命ですか・・・・?』と。
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