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ムーンライトの剣~守りたいものがそこにある~  作者: 西銘勇河
二部 第一章
36/55

月将VS家族《ミックス》

「月将ムク・・・・!?悪魔五天王にして、あの三将の・・・・・!?」

「ふむ、どうやら待ち伏せられたようですね?いかがいたしましょう?」

「気にするな。前へ進め」

「おっと、そう易々と行かせると思わぬことじゃな。いでよ、星月夜・・・・・!」

月将ムクが天空へと手をかざすと眩しいほどの青空が一瞬にして夜へと変貌し。代わりに美しい星月夜が姿を現した。

「ほう・・・?変換魔法か。実に良くできている」

魔王デンスが称賛の声を出すも逆に吸血鬼や龍神たちは更なる警戒心が双方に木霊した。

長年を生きる吸血鬼や龍神でさえもその実力を垣間見れたからだ。だからこそ、ためらってしまったのだろう。突然の宣戦布告をしたと思えばあろうことか、敵に待ち伏せを食らってしまい。敵が悪魔五天王にして三将の月将ムクである。そのなんとも言えない緊張感を月将ムクが見逃すはずがなかった。

蟲雨オーム・レイン・・・・!」

星月夜の煌めきから蟲たちが呼び出されたかの如く、オームの激しい砲弾が陣営を崩した。戦場にほとんど出たことのない兵士たちは更なる混乱を招いたが、吸血鬼最強のスリ・ランカーは落ち着いた対応力で陣営を建て直すように指示をだす。が。

「なっ・・・・・!?」

刹那、味方である吸血鬼や龍神が仲間同士で乱闘し出したのだ。これは一体━━━━━━

「月将の変換魔法ですな」

「何!?」

龍神最強にして最古の龍神。ラスト・エンペラーが敵の策略の巧さを称えるかのように髭をさすった。

どうやら何かも敵側の手のひらのようだ。

「ですが・・・・・」

その瞬間、龍神ラスト・エンペラーが息を吐くように両腕の筋肉を伸ばしてふっ!と力を込めた時である。

ラスト・エンペラーの筋肉の膨張に合わせて周りにいた吸血鬼や龍神たちがラスト・エンペラーの筋肉の振動によって強い衝撃波を脳波に食らうことで。全軍が失神してしまった。しかも、それの反動によって月将ムクの変換魔法すらも破壊するほどに・・・・・

「・・・・なかなか、歯ごたえのあるヤツもいたものじゃのぅ」

「ハハハ、お褒めに預かり光栄な限り。さあ、スリ・ランカー後は任せましたよ?」

「へいへい、わあったよ」

スリ・ランカーがため口を付きながらも、己の分身体である小さな蝙蝠たちをばら蒔いて。失神した兵士たちの血を啜った瞬間・・・・まるで嘘みたいに回復した。

これにはまた、月将ムクも見事と言わんばかりの賛辞を送った。

そのお礼として月将ムクは懐の剣をとって、龍神ラスト・エンペラーを睨む。

「名を名乗るがよい。わらわは悪魔五天王にして三将の月将ムク。ここから先は一歩も通さぬ!」

「ではせんえつながら私から。私は龍神最強にして最古の龍、ラスト・エンペラーと申します。淑女のお相手をするには少々心苦しいですが・・・・・全力を持ってお相手致します」

「おきになさらずともエスコートの出来る殿方は素敵じゃのぅ?」

「ハハハ、勿体なきお言葉・・・・・」

「では次は俺からいかせてもらうぜ?俺は吸血鬼最強のスリ・ランカー様だ!やられたくなかったら、さっさと尻尾を撒いて逃げるこったな!」

「ふふ、実に面白いことを申す・・・・・」


『・・・・・・・!!!』

月将ムクがスリ・ランカー、ラスト・エンペラーに刃を交わして。逆にスリ・ランカーは月将ムクの首もと目掛けて月将ムクの放った刃に噛みついて。

龍神たるラスト・エンペラーは強靭にして巨大な爪先を月将ムクへと激しい火花を散らしていた。

双方共に後方に下がった後に間合いを身はからった後に今度は吸血鬼最強のスリ・ランカーが軍勢を率いて、蝙蝠の群れを浴びせる代わりに再び月将ムクが蟲雨オーム・レインにて迎え撃つ。霧散した煙から今度は龍神最強にして最古の龍ラスト・エンペラーがスリ・ランカーとの連携技で月将ムクの胸元を掠めた。

しかし。

蟲喰時計オーム・プリンセス・・・・・!」

刹那、今度は月将ムクが一手を取って。蟲喰時計オーム・プリンセスの時計盤の力によって月将ムクの怪我は癒され、逆に先ほど回復させたばかりの兵士たちが混乱し出したのだ。

まるで、彼らの時間だけ巻き戻されたかのような・・・・・・

「そこじゃ・・・・!」

「しまっ━━━━━━」

「くっ・・・・!?」

スリ・ランカーとラスト・エンペラーが兵士たちに気を取られた一瞬。二人の死角である足元━━━━━天空の真下から行動を捕縛されたのだ。年季の入った鎖によって・・・・・・・

「最初からわらわだけだとは一言も発してないぞ?」

そう、唯一月将ムクの正体・・・・・ミッツ・ジャスティス・ミウと親交の深いレッドライ騎士団にしてミッツの最愛なる夫エターナル・ジャスティス・ミウである。エターナルやミッツ、そしてもう一人の妻でもあるクイニー・ジャスティス・ミウの暗躍があってこその計画であり。この一手によってミッツたちの勝利は確定したのだった。

「完敗ですね。こちら側の下調べが甘かった・・・・・」

「ですね」

「勝敗は決したようじゃのぅ。では、後は署まで動向を━━━━━」

「でも、今回ばかりは俺らの勝ちだぜ・・・・?」

「何を言って━━━━ッッ・・・・!!?」

「気づいたか、そう。既に魔王デンス様は人間国家に降り立つんだよ!」

「だが、何故じゃ?あれほどの禍々しい魔力を持っていて見逃すはず・・・・・・」

「それについては私、龍神ラスト・エンペラーがお答えします。まず、魔力デンス様は真っ先にあなたの存在を察知して。我々はあなたの相手を任されました。次に魔力デンス様は魔王透明デーモン・エアーなる一個人の視覚から消え去る魔法によって堂々と人間国家に降り立ったのです。そして我々の任務もこれにて完了。そろそろお暇をさせたく存じ上げます」

「逃がすと思うか?」

「ハハハ、知りませんか?大天使イヴや災厄が使用する権能━━━━━空間跳躍を我々が使えないとでも?」

「!く、待て・・・・・!?行きよったか。聞こえるかエターナル?失敗じゃ。どうやら相手の方がもう一手上手なようじゃ」

内部通信を通して、地上から援護をしたエターナルも吸血鬼や龍神の軍勢の反応を見失ったことからミッツの言葉に賛同した。

「ああ、そのようだ。吸血鬼や龍神の軍勢は撤退してくれたから恐らくだが当分は反撃は来ないだろう。問題なのは・・・・・・」

「魔王デンス・・・・・」

「みたいだな」

「後は任せたぞ?」

「ああ、任せとけ」



上空から直立したまま人間国家を捉えた魔王デンスは勢いそのままに大地を踏んだ。静かな侵入を歩んだ正にその時、レッドライト騎士団と魔教人、人間に化けたグレイも助太刀に現れる。

その数およそ千。咄嗟の対応にしては見事である。

これもまた、南部隊隊長クイニー・ジャスティス・ミウの用意周到さのたわものだ。千の軍勢は魔王デンスへと剣をかざして一切の油断もなく突撃した。

「ふ、少し遊んでやろう」

魔王デンスは肩の力を抜くような・・・・・まるで体操をするかのようにゆらりと身体を揺らして一人一人を確実に仕留めていた。柔軟な拳はさも踊るように妖艶で美しく、魔王たる気品の高さが伺えた。さすがの千の軍勢も焦りが止まらない。

各々が剣に力を込めて渾身の一撃を狙いをかける。

「ならば、我も剣の稽古に付き合ってやろう・・・・!」

「てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!?」

「ふっ!」

「ぐっばばああああぁぁぁぁ・・・・・!?」

魔王デンスが一振り、また一振りを交わすほど相手の血のりがまるで花吹雪が舞うかのような錯覚。それくらい魔王デンスの剣術は美しかった。

「ほんとに何だ!コイツは!?」

「どいつもこいつも化け物揃いかよ!?」

騎士団や魔教人、グレイたちが阿鼻叫喚とする中。魔王デンスは至極落ち着いていて・・・・・・申し訳なさそうに呟いた。

「すまないね?今回ばかりはこちらも必死なのでね?生命としての存続がある以上、世に向かって我々の存在を示さねばならないのだよ・・・・・勿論。ここで伸びている兵士たちにも急死にならない程度にはとどめて置いてはいるよ?我々は戦争は仕掛けたが、戦争は仕掛けてはいないのだよ。さて。この問いが君たちには理解出来るかな?」

「っ!分かってたまるか!」

「・・・・・残念だよ。では━━━━━元祖帰り《ベビー・シック》!」

「何!?・・・・・・?オギャー、オギャー!?」

「バブ~、ウ~・・・・たあたあ♪」

「何が起こった!?軍の大半が赤子になっただと!?そんな馬鹿な!・・・・・信じられん」

信じられないのも無理はない。生命という存在に対して寿命を逆行する行為━━━━━正に魔王たる悪行だ。

武術でも剣術でも果ては魔術さえも・・・・・千の軍勢は歯も絶たないのか。そんな暗雲が立ちこめた時だ。突然、魔王デンスの顔色が豹変した。魔王デンスは何かを察知すると同時に何も言わずに空間跳躍によって姿をくらました。

「・・・・・消えた?」

総員ポカンとしばらく動けなかった。


一方で魔王デンスは空間跳躍によって人間国家から離れると千の軍勢の向こう側にいる彼らを見て。これには勝てないと手早く身を引いた。何故最初から本命である戦力を出さないのか、何故月将ムクは先回りすることが出来たのか。そこには彼らの守りに守り抜かれた何かがあるからで・・・・・・

その領域の奥こそ。

「ムーン・ジャスティス・ミウ・・・・・。はあ~。いやはや。これは難儀なことになったものですね、ますます遭ってみたくなりますね。我々の存続にかけて━━━━━━」


「どうやら上手く行ったかのぅ?」

「ああ、勿論」

ミッツとエターナルが裁判所の休憩室で紅茶を啜って。

魔王デンス軍を退けたことを誇らしげに語り合い、乾杯の音を鳴らした。事の発端は天使キ・ーゴールドがミッツに魔王デンス軍の存在を知らせたことから始まった。いつものように上位裁判官ミッツ・ジャスティス・ミウは法廷での書類審査に目を通していた時。

天使キー・ゴールドが例の場所をくぐり抜け、助けを求めたのだ。まさか、急に現れた天使の第一声がそれだとは思わず。少々怪訝そうな顔でミッツが問いただす。

「一体、何事じゃ?魔王軍?聞いたことないのぅ・・・・・今の現時点でも問題だというのに。これ以上邪悪な存在が増えられても困る・・・・・で?それはどこから出た情報か?」

「ミウちゃんの・・・・・魔教人童謡説を引き継いだ時かな。その場にはたまたま魔教人考古学者のノウス・オールドがいたからすぐさま大天使イヴ様に連絡がいって━━━━━━あたいから魔王軍の存在を知らせに来たわけさ」

「・・・・なるほど、ミウが。ふむそうか。だとしても魔王軍とやらは如何にしてやってくるのだ?まさかとは思うが只の挨拶、なんて生易しいものではないだろう。わらわを名指しするからにキー・ゴールドよ何か策があるな?」

「ああ、実は━━━━━━」


「と、言う流れで魔王軍の殲滅にかり出されたものの。まさかエターナルの他にもわらわの正体が月将ムクだということを知っていた事実にまず驚かされたわい」

「はは。ミッツがバレバレなんだよ、無理して一人称まで変えて」

「ん、まあ。それはそれじゃ!後はクイニーが裏から根回しをしてくれたお陰でわらわたちもやりやすかったし・・・・・やはりクイニーは地獄の底から蘇らすべきじゃなかったのぅ。あの腹黒さは世界一、いやそれ以上か?それに。ミウの母親はわらわだけで━━━━━━」

「な~に話してるんですかぁ?ミッツ♪」

『ク、クイニー・・・・・!?』

ミッツとエターナルがぎょっとした眼差しで振り向く。まさか、今の発言を察知してわざわざ裁判所まで来たのか・・・・・・

あまりの驚きで紅茶が内股に双方にかかりながらもクイニーはしれっとした雰囲気で空いていた席に座った。

「まあ、貴方にとってはミッツもまた大切なパートナー・・・・それについては不平不満はありません。ですが、私はそこまで腹黒さには長けていませんよ?」

「よく言うわね・・・・・あそこまでの拷問。流石のわらわでも出来ん」

「まあ、俺に関しては誰かさんから似たような冤罪を被せられたけどな?」

「それはそれじゃ、エターナル。現に魔王軍なる新勢力の確認が取れただけでも十分な収穫じゃろう。それについてもどうせクイニーは考えがあるのじゃろ?」

「ええ、ミッツが魔王軍の戦力を大幅に削ってくれたのも大きいし。千の軍勢として戦ってくれた魔教人や騎士団、グレイたちの怪我や幼児化も今では元通りになりましたし・・・・・魔王デンスを脅かす脅威を演出することも出来ましたからね」

とクイニーがことの流れを説明し終えて最後の一滴まで紅茶を飲み干したタイミングで。東部隊副隊長にして二人の夫であるエターナル・ジャスティス・ミウが最後に気になっていた疑問を投げかけた。

「なあ、クイニー。俺はミッツの援護に回っていたから見えなかったが。あの時、魔王デンスが見た‘モノ’はなんだ?」

「━━━━━さあ、なんだろうね?」

「今宵は主の一人勝ちじゃな」

ミッツが素っ気なくそう呟いた。


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