家族《ミックス》
この世界には混沌とした存在が幾つもある。
悪魔、天使、グレイ、未来神、黒竜、レッドライ騎士団、秩序の番人、三将、閻魔大王、災厄、愛殺しの蛇・・・・・・・・数えていたら霧がない。だが、その中でも相対する力が産まれればそれに対抗する勢力も誕生するわけで。
絶壁の天空にある孤高の城に龍神と吸血鬼なる種族が密かに同盟を結んでいるなどそうそうに知られることはない。
何故ならば、彼らは永きに渡り己の存在を否認し続けながら人間に化けつつ傍観を貫いていたからだ。それが今、解かれ始めている。
ことの発端は世界のバランス、つまりは生きていく上で傍観し続けるのが困難になったからだ。
故に龍神や吸血鬼たちは悩んだ。
悩みに悩んだ末に彼らの頭にあたる三傑集━━━━またの名を家族が動き出した。
吸血鬼代表にして吸血鬼最強のスリ・ランカー。スリ・ランカーは性別で言えば良性具有にあたり、男にも女にもなることが可能な吸血鬼特有の性質を持っていて。コウモリや人の血を吸うことも可能だった。故に町中での隠密を得意とする。
もちろん、戦闘においても秀でるものがある。だがそれはその時が来るまでお預けとしよう。
次に龍神代表にして龍神最強の呼び声が高いラスト・エンペラー。彼は龍の中でも最長の部類に当たり、最古の龍とも証される長老種でもあり。故にその莫大なパワーは吸血鬼最強のスリ・ランカーをも凌ぐであろう。だからこそラスト・エンペラーは力ある者は世界を傍観せねばならないと世界を見届けていたが、龍の世界にも暗雲が差し込まれた。そう、グレイなる宇宙人が黒竜なる危険な存在を構築したことが龍たちの間で衝撃が走った。
龍という概念を存在を否定されたような感覚、そしてそれは生命の危機でもあって・・・・・子孫繁栄、倫理観。
これはまさしくグレイたちによる宣戦布告だった。
最後に家族の中でも特に要注意人物にして、最も危険な男が一人。彼は吸血鬼の血を龍神の血を色濃く引き継いだ魔の存在━━━━━━━それは。
魔王デンスその人だった・・・・・・
吸血鬼最強のスリ・ランカーと龍神最古の龍ラスト・エンペラー、そして魔王デンス。彼らは部下を引き連れ一同の勢力バランスについて議論をした。
「近頃、人間たちの生命力が上昇していると密偵である吸血鬼たちから報告が上がっています。これは由々しき事態です!これ以上の人間いや、多種族の強さは我々吸血鬼をも滅ぼす勢いにあります・・・・・!ですが、だからといって今さら姿を現して和解を求めようなど。虫が良いにも程があります━━━━」
吸血鬼のスリ・ランカーも悔い改めるように報告書を投げ捨てた。こうなるのであれば、最初から友好な関係を築くべきだったと内心思うのに対して。龍神最古のラスト・エンペラーは含みを持った口調のまま意義を述べる。
「ふむ、少し妙ですね。確かに多種族の力のバランスは一刻と崩壊しているのに対し、そのどれもが人間国家に傾いている。これは明らかなる人為的意図。まるで多種族の最強クラスの駒が‘何か’を守護するかのような━━━━━━」
と龍神ラスト・エンペラーが懸念を抱いた瞬間、突然。
中央の玉座に君臨する魔王デンスが笑ったのだ。
その笑みが城中に響くと同時にスリ・ランカーやラスト・エンペラー果ては城中に散らばった部下までも思わず膝を付き、頭を垂らした。
魔王デンスの魔力、殺意、権威それらもさることながら魔王デンスが笑ったということは全てを見透かされたに等しい。
「我が力━━━━千里眼探求がうずく・・・・!ああそうか。実にいい・・・・・」
「魔王様、千里眼探求が発動されたということは何か策が・・・・!?」
「落ち着け、スリ・ランカー。魔王デンス様の権能の一つ、千里眼探求には魔王様自身が自問自答とした興味深い存在全てを暴く究極のスキル。例えれば、小さな石がどのように出来てどのような時間を得て石となるか・・・・・そんな些細な問いすら神やましてや博学な賢者にも持ち合わせない回答を魔王デンス様は見抜けるのだぞ?それはお前自身が痛感しているはずだ」
「・・・・ああ、すまない」
スリ・ランカーとラスト・エンペラーが改めて頭を垂らしたのを見計らってか、魔王デンスは人間国家に対して。
吸血鬼や龍神たちに対して改めて宣戦布告を唱えた。
「我々は永い捕縛の中にいた。弱きを挫くことなく己が強者だと腑抜けにならぬようにと・・・・・傍観を貫いた。だが、その時代はもう終わった!世界が我らをあざ笑ったのだ!その力を存在を世に示せ!!戦争の始まりだー!!?」
『おおおおおおおおおおおおおおおおッッ・・・!!?』
遥か上空の彼方で吸血鬼と龍神の群れを引き連れて三傑集でもある家族は久々に翼の筋肉をねじ曲げて、フル装備の戦闘服に身を包み込んで。人間国家を目指した。
・・・・・・正直な話、魔王デンスを除く吸血鬼や龍神たちは何故今となって世界に宣戦布告をするのか?はっきりと分かってはいなかった。かといってそのまま状況に流されて行動している訳でもない。魔王デンスが決定打に前進することはつまり━━━━━
「魔王様、なんかやたらと楽しそうじゃない?こう背筋がゾッとするくらい━━━━━━━」
「なんだ、スリ・ランカー。今更怖じ気づいたのか?お主も強いとはいえ、まだ若僧・・・・・気が引けるのなら下がってよいぞ?」
龍神ラスト・エンペラーの挑発に対して、スリ・ランカーは「誰が怖じけづくかよ」と言ったのちにこう呟いた。
「でもよ、どうして魔王様はあそこまで落ち着いていられるでしょうね。これから戦いが始まるかもしれないのに・・・・・それに攻撃するなら他の領土だって━━━━━━まるで、魔王様自身が人間国家にいる‘何か’に引っ張られているみたいな・・・・・」
「━━━━━気持ちは分かるがそろそろ口を慎め。我々は魔王デンス様の意思そのもの。余計な考えが我々の存続を多いに掻き乱す。よいな?」
「ああ!わあってるよ!」
「分かれば良い」
(だが、魔王デンス様がいついかなる時も御考えになっていることは魔王デンス自身ぞ知る・・・・・魔王デンス様、あなたの眼には一体何が見えて━━━━━━)
「前軍止まれ」
突如、魔王デンスが軍勢の足かせを抑制した。
それに合わせて軍勢の勢いも収まる。魔王デンスが軍勢を止めた理由━━━━━━それは。
「悪魔、月将ムクか・・・・・いやはや」
月将ムクが上空遥か後方にて家族と相対した。
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