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しづかな夜

ウルフが姿を現して、若干ながらもグランが後ずさる。災厄の隷属者と言えど完全には信用できない。これも災厄の元隷属者としての勘なのか?果ては単なる危機感か?それとも━━━━━

「不思議ですよね・・・・」

「ん?何が言いたい?」

「いえ、こうしてサイと繋がっていた者同士がこうして相対するのもまた運命・・・・・サイ自身もこれ以上の干渉は貴方には下しません。ただ、一つ。これ以上の街の進行及び、大天使イヴ様への接触をお断りして欲しいのです。サイもそうですが、僕からもお願いしたい!今、あなた方が再開しては困るのです。どうか・・・・!」

「はあ、言われなくとも我はそのようなことはしない。しばらくは身を隠すつもりだ。だが、こうして災厄様黙認の元、自由になれただけでも感謝しきれぬ」

「貴方はお優しい・・・・敵同士でなければ同じ騎士として剣を交えたかった。僕からは以上です。後はエターナルおじさんが話を合わせてくれるはずです。それでは━━━━━」

「行ってしまったか。それと我の背後で息を潜める騎士━━━━先ほど災厄様の隷属者が言っていた‘エターナルおじさん’とやらは貴様のことだな?いいのか?罪人を野放しにもして。捕まえはしないのか?」

「愛する者がいるヤツを捕まるほど悪趣味じゃないさ。娘のために牢屋にもぶち込まれた情けない父親が言うのもアレだしな・・・・・」

「・・・・はは、馬鹿なヤツだ」

「お前もな」

エターナルは月夜の影に隠れてグランの背中が見えなくなるのをそっと見送った。

そして己の吐息を変換魔法によって淡い月明かりに変えながら・・・・・

「変換魔法━━━━月夜、月将、ムーン、ムーンライトの剣・・・・・・はあ。馬鹿けた世の中だ」

エターナルは小さく落胆したのだった。



しばらくして。騎士団の寮に帰宅したエターナルは誰もいないことを確認して内部通信を試みた。そしてその通信相手から早速連絡がついた。

「仕事中、悪いな。ミッツ」

「うむ、気にすることはない。残りの残業はオーム達に押しつけた。遠慮なく話すが良い」

「あはは・・・・・オーム達には悪いが手短に言う。ミッツ、お前悪魔の━━━━月将ムクだよな?」

「・・・・・気づいておったか。いや、この場合はわらわ自身が気づいてくれと言っていたようなものか。今のところミウにはバレてはいないようだし。そしてそれに気づいて尚、わらわをどうするか?クイニーにでも浮気しておいて・・・・・いいようにあしらうか?んん?」

「そ、そんなことはしない。図星を突かれたって俺の痛いところをひっつくな。これは歴史が生んだ不慮の事故で、その。二人のこともちゃんと愛し続けるし・・・・・・」

「・・・・・だそうじゃ。クイニー、わらわ達は一人の男に愛でたくはべられるそうじゃ」

「え、いや。クイニーもいたのか!?いや、悪い。そんなつもりで言った訳じゃ・・・・・」

「ぷ、ははは・・・・!?冗談じゃ。わらわがエターナルと二人きりの時にわざわざ呼ぶまい。それに━━━━━本当に冗談だとしても存外、嬉しかったぞ」

「!?」

「まあ、話は以上じゃ。またあした、欲張りさん♡」

「・・・・・・これは一生敵わないなぁ~」

そう言いつつ、案外悪くないと思ってしまい。その反面クイニーに対して物凄い罪悪感を覚えたエターナルはすぐさまクイニーとも通信を行い、やっぱりクイニーにも一生頭が上がらないと実感するのだった。



一方で炎将レイは月夜の屋根裏で煙草をふかしながら。

しみじみと吐いた煙を見上ぐ。立場上としても悪魔としてもその先の未来が一向に見えなかった。不安ではあるが、どこか気持ちは落ちついていて・・・・・非常なまでに無気力になる。

災厄様は結局のところ悪魔サイドに戻ってはこないし。悪魔中層幹部グランに至っては雲隠れ状態の上、水将スーはリンバラなる騎士の配下となってしまうは月将ムクに対しても立場が危うい。

そんな中で沢山の事情がかき乱されたあげく、さらに敵対の構図がややこしいものとなった。これはいかがなことかと内心愚痴ってはいるがじゃあ俺は?炎将レイとは一体何者なのか?

悪魔三将にして一晩で街を火の海にした化け物か?水将スーのおもりをするベビーシッターか笑?それとも只の煙草好きか・・・・・

「やることねぇな・・・・・」

炎将がそんなことを愚痴った時である。背後から「やることあるだろ?」とドスの聞いた男の声に思わず振り返る。

そこには二人の背影があった。一人は愛らしい小柄の背、一人は屈強な男の背━━━━━━そう。

「初めましてだな?俺はロック、こっちにいるのはリンバラだ!こうみえてこいつも性別学的には男らしいぞ?」

「ロック隊長、今のはセクハラですか?今の発言が法廷なら一発死刑ですね?」

などと意気揚々とした会話に呆気に取られたレイだったが。

仮にも相手は敵、油断はならない。下手をすれば最悪街を道連れに災禍の炎に身を隠して逃亡するのも手だ。それまでは平然を装いつつ、煙草をふかそう。そんな時だった。屈強な男━━━━━ロック・サンダースがふとした口調で。

「お前さ、俺たちいや。俺と手を組まねぇか?」

「━━━━━それはどういう・・・・・」

「決まってるだろ?お前は三将の炎将レイ。ラスボス攻略を握る剣だってことを・・・・・」

「ふん、それが狙いか。過去にも剣の隷属を願い散っていった者は数知れず。貴様もまた、骸の山となるのが運命━━━━━━」

「だったらその運命、俺が変えてやるよ!」

「!」

その瞬間、互いの剣と剣を鞘から取り出して瞬きをした速さで互いの剣の火花がギシギシと音を立てる。ロックもレイもその時から一人の武者としての貌色へと歪ませて間合いを見計らってから距離を取った。

「不意打ちとは中々に小賢しい。まるで悪魔の所業を見てきたかのようだ」

「お前ところのボスから散々、自分の価値観を壊されまくってるからな。それに戦いにズルもクソもねぇよ」

「確かに・・・・ならば、俺の炎をまともに喰らおうが文句はねぇよな!?」

「ロック隊長、来ます・・・・!」

「わあってる・・・・!」

『五右衛門風呂・・・・・!!』

炎将レイが放った炎はあたかも五右衛門の霊が現れたかのように球体状に変化していき、二人を業火の中へ包み込んだ。例え防御に富もうが無傷ではいられないし。単純な回避でしか助かるすべはない。なので、炎将レイも今の攻撃が致命傷になるとは到底思っていないし。隙あらば死角を突いて攻撃の機会を伺うことを想定して左右前後、警戒を怠らずに・・・・・・

「・・・・!炎が光って・・・・!?まさか!?」

炎が霧散してあたかも蝶の如く色めき立ち、六花の輝きが二人を取り囲む。後方にロック・サンダース。そして前方にいる小柄な娘・・・・・その手には。

「水将の契約にして、その片割れの一つ。‘スノーライトの剣’、遠慮なく使わせて頂きます・・・・・!」


「・・・・・・はは、ははは。はははッッ・・・・!!!?そうか、ついに。剣を持つ輩が現れたか・・・・・!ははは、そうかそうか~」

「どうだ?俺たちも口だけじゃないだろ?災厄はウルフが水将スーはリンバラが。その他の悪魔たちも半信半疑だが、着実にこちら側に着いている。残りはお前だけだ、炎将レイ━━━━」

「・・・・スー、聞こえているのだろう?例え剣に姿を変えても自我は残る。お前はそれでいいのか?人間にいいようにされて・・・・・」

『ハアハア・・・・リンバラちゃんの小さなお手々が私の身体を舐め回していると思うだけで・・・・!?恐悦至極です!!』 

「あー、そうだった。お前ってそういうヤツだったよなー・・・・ははは」

「もう一度聞く。炎将レイ、俺たちと手を組まないか?」

「・・・・はあ、俺は━━━━━」

その時。突如として炎将レイの身体が炎に包まれたのだ。

それは炎将レイ自身がやったものではない拘束。言うなれば拉致に近かった。慌ててロックもリンバラも頭上を見上げて再び呆然とした。

『大天使エッグ・・・・・!!』

謎の天使エッグが炎将レイを炎の魔法を駆使して捕縛したのだ。

仮にも炎将レイもかなりの猛者だ。しかも炎の魔法という炎将の得意分野の魔法で・・・・・ただ者ではないことは確かだった。

「なにをするのですか・・・・!」

「悪いが今は彼は預からせて貰うよ?彼はまだ、剣になる素質がないから・・・・・・」

「素質・・・・?」

男か女か分からない声音でエッグが問うとエッグは何事もなかったかのように撤退しようとした。

それをスノーライトの剣を持ったリンバラはそれを見逃さなかった。

「いきますよぉ~!はあああ・・・・・!!」

「ん?」

『何!?』

スノーライトの剣の絶対的なまでの一撃を背中で受けたにも関わらず、大天使エッグはさも背中に虫けらが止まった感覚で反応した。これにはさすがのリンバラやロックも驚きを隠せない。

その間には既に大天使エッグは炎将レイを連れ去り、闇夜へと誘われていた。

「調べる必要があるな」

「はい、ロック隊長」

「ああ~、リンバラちゃん。もう剣を解いたの~?もっと使ってもいいんだよ?」

「一生塞いでろ、虫けら!」

「・・・・・リンバラ、苦労かけたな」

そしてまた日は昇る。


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三つの一つ、スノーライトの剣。

これも後に重要な鍵になります。その剣の一撃を無傷でいられるエッグも凄いですし。

何より、この作品のタイトルは『ムーンライトの剣』

・・・・・もうおわかりですよね?

勘のよろしい方は薄々分かったはずです。

なので、炎将は一旦お預け・・・・・次に進みます。

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