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水将はそれでも学ばない

ある日、水がなくなった。

勿論ペットボトルや水道が止まった訳ではない。

水と呼べる‘概念’そのものが朽ち果てたのだ。

人の70%は占める水分量が地球の水がありとあらゆる所に水分というものは存在するわけで・・・・・その日を持って。水将スーは遠い昔にこの世から水分を奪い去った。

彼は女性にかなりの隷属癖がある。その欲望が限界を迎えて、魔力が暴走し。みるみるうちに水将スーの身体はまるで大きなバルーンでも膨らますかのように膨張して・・・・・

ついに、この世から水が消えた。それでも水将スーは女性への隷属癖が止まらず。いよいよ惑星ごと飲み込みそうになった時である。


誰かがいた。誰かは小声で何か呟くと突如として水将スーの意識が呼び戻され落ち着きを取り戻した。そして仕上げと云わんばかりにその人物は大きな魔法陣を召還するとそこには大きな腕━━━━閻魔大王の巨大なる大いなる右腕が水将スーを叩き潰した。

あまりの衝撃、あまりのパワー。その力が水将スーを仕留めるには十分すぎるくらいだった。

閻魔大王の右腕があたかも鼠をぺしゃんこにするハンマーのように水将スーの体内に溜まりに溜まった水分が一気に解き放たれて。三日ほどにして、世界の理から水が息を成した。

「お前はバカだ。悪魔の中でも類を見ないバカだ。吾が貴様を飼い慣らしてやろう」

当時、別の隷属者の身体を使って。災厄は水将スーを仲間に引きずり込んだ。


それからしばらくして、永い永い時を得て。枯渇した世界から再び平和が戻って。

リンバラは一輪の薔薇を買っていた。

別にたいした理由はない。たまたま花屋の横を通りかかったら接客に声をかけられ、そのまま一輪買ってしまったのだ。

リンバラは自宅(正確には騎士団の寮だが)に着くと慣れない手つきで花瓶に水を注ぎ、一輪の薔薇を飾る。それだけでも実に有意義なことをした気持ちになり自然と鼻歌やら脚元が上機嫌に上がりぱっなしだ。

そこからの勢いで他人に聴かれたら恥ずかしい鼻歌を連発しかけて━━━━━

「リンバラ、いるか~」

「・・・・~ッ/////!?ロック隊長!開けるときはノックくらいしてください////!?」

「いや、お前は男だろ・・・・可愛いけど」

忘れがちだが、リンバラは正真正銘の男の娘である。

反応が可愛いので、ついつい弄り倒したくなるが。

そこはこらえてロックは緊急の依頼を気にリンバラを引っ張り出して急いで任務へと向かう。

その道中、ぽかぽかとリンバラに叩かれながら・・・・・


東西南北━━━━━各々が最恐にして絶対なる盾が騎士団には存在する。だが、その中で一つ。一人の隊長を除いては敵は存在しない・・・・南部隊隊長クイニー・ジャスティス・ミウ。

彼女は二十年前、人々の争いによって命を落とした存在だが。ミウ達の功績も相まって二十年後の未来も無事、幸せに生きている。それでもクイニーは少し複雑だった。何故ならば彼女には戦闘力と呼べるものが無い・・・・・正確に言えば、魔力もなければ魔法も使えないし。ウルフやミウ達のような特別な力もない。強いて言えば長年鍛えた剣術のみ。勿論、これは趣味の範囲内でやっていたものなので戦場ではお荷物になるだろう。

では何故、彼女は南部隊隊長をまかせられるのだろうか?過去改変による名誉か?義母ミッツのこねか?それとももっと特別な理由があるのか?否、全てがクイニーにはなく。クイニーの問いには適さない。


彼女はクイニーは寄り添う心があったのだ。


確かに皆のように優れたカリスマ性や才能、力こそない。それゆえに仲間と街人と同じ眼を持つことができる。誰かが困っている時、誰かが喧嘩をした時、誰かが泣いている時。クイニーは寄り添うことができる。

単純で誰にだってできるかもしれない。

だが、その言葉はクイニーにしか発せられない一言だ。だからこそ、新たなる要、隊長の座に相応しいことは街の者は口を揃えて言うだろう。

書類と向き合いながらクイニーはクイニーにしか出来ないことを全うしている。



「では、ウルフ隊長。我々はこれで・・・・」

「ああ、ご苦労━━━━はあ、疲れるな。いくらなんでも、サイのこと怖がり過ぎなんじゃ・・・・」

北部隊隊長ウルフ・ジャスティス・ミウはそんな一人言をさも誰かと話すかのように己の肉体に問いかけた。その瞬間、肉体の内側から全く別物の魂━━━━死又はX、災厄が内部通信にて応答する。

「仕方のないことだ。吾が思うことは事実そのもの・・・・・弱い種族からしてみれば脅威以外の何者でもない」

「そうかもしれないけど・・・・みんな、もっとサイ自身のことを見てほしいなって・・・・」

「ふ。そうか」

(ウルフは仕事柄、真面目で礼儀正しく。騎士としても十分に優秀と言えよう━━━━━だが。今のように時々純粋な少年の眼で言われると流石に困る)

「その気持ちだけで、十分だ」

「ふ。そうか」

最後、なぜかウルフが吾の真似をしたのはどうも気がかりであった。



話はまた水将スーへと戻される。水将は悪魔としても少しばかりたかが外れているというか、おかしいというか、浮いていて・・・・正直なところ孤立してたと断言してもいい。前々から水将スーには変態的な‘それ’があって。水将の部下達も全員が女の悪魔であった。欲望が枯渇しては吸い取り、どんどん身体を膨張させていき・・・・唯一、水将と関わりがあった炎将レイもそろそろ手に終えなくなった頃合いを見計らってか、水将スーが行方をくらましたのだ。

いくら変態と言えど。三将の一人、悪魔の戦力としてもかなりの深手となる。

部下達があわてふためいて捜索に陥る中、炎将レイだけが大きなため息を着いた。

「やっぱ、スーを止められるのは‘災厄様だけ’なんだよな~。御早い帰還、心より願っております・・・・・」

炎将はまた厄介な雑務が増えるのだった。


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