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星月夜に愛はある

「・・・・そう、ですね」

ノウス・オールドがさらにやつれた息を絞り出して。

「災厄━━━━もう私の口からは出すことすら恐ろしい程ですが・・・・・そうですね。悪魔五天王の頂点にして災厄。死又はXと呼ばれる化け物です・・・・!容姿は竜の赤子のような顔が浮き出た心臓型の悪魔ということと死又はXが『死んでしまえ』と口に出すか念じただけで死んで終う。それが大天使イヴ様のような神々ですらもう蘇る事はないのです。ですから災厄はとても話が聞く相手ではないのです。もし仮にも、災厄と出くわすことがあれば迷わず逃げて下さい。攻撃や死などという全ての行為が意味を成さないのです。━━━━只一つだけ、死又はXに対抗出来ることは災厄自身が眠りに就いている時だけ。その眠りこそが勝喜にして、人類の未来を掴むのですよ」

ノウス・オールドが熱く語り終えたのを気にミウはしどろもどろに手を挙げた。

「えっと、その。災厄は『いつ』眠りに就いているかしら?それとありとあらゆる概念が効かない上に念じただけで相手が死んで終う程の力を持っているならこの世界だって掌握出来そうだけど・・・・・何か訳があるのかな?」

「正直なところ、その点については我々魔教人も分かっておりません。ですが、死又はXが眠りに就く日は夜の星月夜が美しい日だと、魔教人童揺説にも記されています」


「星月夜・・・・」

「リンバラも気づいたか?」

「はい、ロック隊長。どうやら悪魔五天王は思った以上に親密に関わっているようです━━━━━それに」

「魔教人童揺説・・・・・」

「いくら何でもたった一冊の本にそこまでの情報が記されているとは・・・・最近町で流行っている童漫やファッションもだし、『未来』から来たものなら━━━━」

二人はミウに内緒で教会を後にした。



夜になると王都の街並みも黄金色に色づき、人々の活気やどこかで流れる音楽もキラキラしていて。

ミウは久々に騎士団隊長としてではなく一人の女の子として父と片を並べて歩いていた。

「久々だな・・・・王都の街並みもこの輝きも」

「父さん・・・・パパは久々なんだよね?こうして私と街に出かけるのも、その━━━━━」

「はあ、別に気にすることはない。父さんが好きでやったことだ。それに、現に今だってお前は一人じゃない。ミツのヤツも無愛想で何考えてるか知らないが良い母親しているし。ロックくんにリンバラちゃんだって大切な仲間だし・・・・・・いつだって俺やミウの心にはクイニーがいる。それを忘れるな」

「うん、ありがとうパパ・・・・」

ミウは父に愛撫されていることに猫のように顔を丸めてとても幸せそうだった。

そんなとき。

「え、ロックくんにリンバラちゃん?」

星月夜が輝き出す王都に顰めっ面の二人が路地裏にいた。



「ロックくんにリンバラちゃん?一体ここで何してるの?」

ミウの問いかけにロックとリンバラは血相を変えてミウとエターナルを路地裏に連れ出した。

「この光景が眼に入らないんですか!?ミウさん、お義父様!!」

「そう言われてもなあ・・・・」

何せそう言われても気にするような不審な点は見渡らない。

どこもかしこもがキラキラと賑わっていて。黄金色に美しく笑顔に溢れた星月夜の世界が広がるばかりで・・・・・・

「ううっ!?」

「!お父さん!!?」

突如として視界の景色がぐにゃりとかき混ぜられる。

朦朧としながらも脳は自己修正の元、再び視界がクリアになって行き街行く声もはっきりして━━━━━━

美しい星月夜の王都のまちは黄金色に色づくことも愉快な音楽も

活気、笑顔もない。赤黒く染められた街並みが静かに佇んでいた。

家々は血や酒、廃棄物が入り交じり。行き交う人も意識は朦朧としながらも実に楽しい夢を見ながら幾多の犯罪を犯していた。

その異様な眼差しをエターナルは驚かざる得なかった。

そして、ロックとリンバラは再びミウに問いかける。


星がキレイですね、と。


「・・・・は、そうか、私。何で気づかなかったの?これは間違いなく悪魔五天王。月将ムクの仕業だわ!だけど何で急に月将ムクはこんなことを?私達も月将に操られていたの?」

「見たいですね、ミウさん。最も星月夜について疑問すら持たなかったらもっと危ない目にあっていたかも知れません。その証拠に星々の代償があの天使達です。死ぬまではいかないでしょうけど、街の監視や魔力源を吸い取れちゃってますし・・・・下手に助けようも逆に私達が天使と入れ替わりで星々の源にされますし。お手上げです」

リンバラが長々とポニーテールを左右に揺らして溜息をつく。

その衝動で谷間が少し揺れるもミウは心の隅に煩悩を追い払ってから月将について議論した。

だが、その議論の最中エターナルとロックはある提案をした。

『月将を囮に災厄を倒さないか?』






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