色彩を持った山田 つくると確かな戦略性を兼ね備えた佐藤 たもつ 〜〜2人はなかよし♡〜〜
「俺の名前は、山田 つくるだ」
「奇遇だな。俺の名前は、佐藤 たもつだ」
何が奇遇なのかは分からないが、こうして、二人の青年は運命的な邂逅を果たした。
創造の担い手と、平定せしめんとする者。
そんな意味合いの名前を持つ彼らが、ぶつかり合うのは必然かもしれなかった。
「常に新しいモノを作り上げ、世界を切り開いていく事こそが正義……!!」
「いや、先人が築き上げたモノを受け継ぎ、現行世界を維持していくことこそが重要……!!」
一触即発の事態は避けられない、かに見えた――そのときである!!
「これ、二人とも!!何を争っているのですか!」
「「あっ、政子先生!?」」
彼らの前に姿を現したのは、尼僧の格好をした一人の妙齢の女性であった。
彼女の名は、北条 政子。
鎌倉時代からこの現代社会に流れ着いた最強の女傑その人であった。
そんな政子が、衝突しようとしていた二人の青年に厳しい視線を向ける。
「これ、貴方達!"創造"と"維持"の役割を持つ名前の貴方達が、つまらない仲違いをしている場合ではありませんよ!」
政子の発言を受けて困惑するつくるとたもつ。
喧嘩をとめようとするだけならまだ分かるが、ここまであの豪胆な政子が慌てふためいているのは一体、どういう理由なのか……?
そんな戸惑いを隠しきれない二人に、政子が説明を続ける。
「……実は、"破壊の体現者"を名乗る壊須田 飛人君が、その名前の通り世界の全てを破壊し尽くそうとしているみたいなの。……この事態を止められるのは、名前に"創造"と"維持"の願いが編み込まれた貴方達しかいないわ!」
「えっ!?世界を破壊し尽くす……だって!!」
「くっそ〜、こうしちゃいられねぇ!!二人で協力して、壊須田の野望を絶対に阻止するぞ!」
こうして二人は、政子の要請を受けて自分達の連携を強固なモノにするために、学校帰りにマックやスタバに寄って女子高生みたいに一緒にキャピキャピ!する事にした。
「キャピ、キャピ?」
「キャピ〜!……キャピ♡」
そんな日々を送る彼らだったが、長い時間をともに過ごすうちに親密な間柄になるのも無理はなかった。
……ある日の夕暮れ、つくるがたもつに向けて告白する――!!
「俺達、付き合おうズェ……!!」
「良いズェ……!!」
けれど、つくるとたもつは『そういう事するんなら、ボーイズラブを名乗れ!!』とか他人に強制されたりするのが死んでも嫌だったので、二人は付き合って2秒で速攻破局を迎える事になった――次の瞬間!!
「「……?」」
突如空間に亀裂が入ったかと思うと、盛大な破砕音が鳴り響き、空間の裂け目から大量の人々が出現した――!!
困惑するつくるとたもつを尻目に、抑圧から解放された人々が歓喜の産声を上げる。
「やった〜〜〜!!これで堂々とちっちゃい女の子とランドセルを書きまくれるぞ〜!!」
「分かったネー!!楽しいネー!」
「フフッ……週末の夜に、義理の息子と妊活いたしますわ……」フフッ……
「こ、これで!おっかないお侍から逃れて、俺達は家に帰れるぞ〜〜〜!!」
「ギャンブル全部OK、賭け麻雀も相撲賭博も、アダルトも規制なし、大麻も全部おk!」
「暗黒街じゃねーか!」
つくるとたもつが僅かな時間を使って『それっぽい事を僅かでもしたら、問答無用で"ボーイズラブ"を名乗るべき!!』という堅苦しい風潮を打ち破った事によって、多くの人々を抑圧していた檻や枷といったモノが砕け散り、それに囚われていた者達が一気に解放されたのだ。
ロリ系専門のエロ漫画家やサンバのノリをしたレースクイーンのお姉さん、妖艶な義母や不老不死の人体実験のために江戸城に囚われていた町民達、ペットの相談を受けたにも関わらず競馬の話をし始めるほどのギャンブル狂とそれに突っ込む辛口芸人……etc.
圧政から解放された様々な人達が周囲に集まり、ワイワイと盛大な賑わいで世界を彩っていく――。
気がつけば、杓子定規な規約解釈と誰が言い出したのかも分からない道徳の上に胡座をかいている者には到底辿り着けない鮮やかな光景が、つくるとたもつの眼前に広がっていた。
「フフッ!……まさかここまでやるとは大したモノね、お二人さん!」
「あっ、政子先生!……と、お前は壊須田!?」
「ッ!?」
二人の前に姿を見せたのは、北条 政子と彼女に付き従うように傍らに佇む筋骨粒々とした巨漢の青年:壊須田 飛人だった。
警戒するつくるとたもつを前にして、飛人は尊大な態度ながらも二人を称賛する声を上げる。
「クハハハハッ!まさか、"破壊の体現者"たる俺を差し置いて、悪しき弊害を壊し尽くし、時代に革新をもたらすとはな!!……貴様ら、なかなかやるではないか!」
「己の"名"に囚われることなく定められた因果すら超越し、新たな可能性を紡いでいく確かな意思と力……まさに、お見事!というほかありませんね……!!」
飛人と政子の称賛に呼応するかのように、周囲の者達が盛大に拍手する。
それらの喝采の音は、いつまでも鳴り止む事はなかった……。
自分達を称賛する光景を目にしながら、つくるが傍らの相棒に話しかける。
「やれやれ、俺達はどうやら無意識に世界を変えちまったようだぜ?」
そんな軽快な相棒の声に、たもつが答える。
「まぁ、それも無理のない事だろう。……なんせ、俺達は"創造"と"平定"。そんな特別な名前を持つ二人の人間が運命的な出会いを果たした時点で、何が起きたとしてもおかしくはなかったんだ……!!」
頼れる相棒にして、いっときはそれすらも超えた関係である特別な二人。
こんな繋がりの形は全宇宙を探し歩いても、自分達しかいないはずだ――。
そんな熱くもくすぐったいような想いを胸に宿しながら、つくるがたもつへと強い頷きを返す――!!
「へっ!この先どんな事が起ころうとも、たもつ!お前となら余裕で乗り越えていけるぜ!!」
「あぁ、当然だ!……俺達二人が一緒なら、出来ない事など何もない!!」
二人は笑い合いながら、兜合わせのように互いの拳をコツン、と軽く突き合わせていた――。
こうして、つくるとたもつの二人によって解放された人々は、新たなる自由の息吹きを謳歌していく。
つくるとたもつの絆は特別なモノかもしれないが、それでも、彼らの行為自体は決して特別なモノなどではなかった。
例えつくるやたもつのような選ばれた存在でなかったとしても、人々が自身の意思と力で一歩を踏み出せたのなら。
――新しい風は、いつもその場所に吹いている――。
〜〜fin〜〜