208、村長の予定変更
フレッグと朝飯を食って、しばらくは村の農園巡りをしていた。野菜に果物ゲットだぜ。
結局アレクが起きてきたのは昼過ぎだった。かなりよく寝たらしく超気分がいいとか言ってたな。
昼飯は村長と食べる約束だったのが少々遅れてしまったな。
「おお、遅かったではないか。もっともちょうどよかったのだがな。ほれ座れ座れ。座って食べるがええ。各自好きに掬っての。」
サンドラちゃん達も今来たばっかりらしい。やはりよく寝てたのね。私は一睡もしてないのに……
おお、村長の料理。これは大鍋にどーんと作ってあるな。まるで具沢山の豚汁か? この辺りでオークも出るんだっけな。美味そうな匂いさせてやがる。いただくぜ。
『水操』
もうすっかりお玉で掬うなんてことしなくなったんだよなぁ。人間楽を覚えるとそればっかりになっちゃうね。私とアレク、コーちゃんとカムイの分を一気に掬ったぞ。
『水操』
次でサンドラちゃん達とフレッグの分もだ。わざわざ私がやる必要はないんだけど、まあ一杯目だけのサービスってことで。
だって私は、二杯目はいきなりご飯の上にかけるつもりなんだから。正確にはこれ麦飯かな。嫌いじゃないよ。精米したばっかの新米にはとうてい勝てないけどね。こんなこと考えるとヒイズルに行きたくなってきたなぁ……今行っても新米ないんだろうけどさぁ。
私の魔力庫内にもまだ新米はあるけど、残り少ないんだよなぁ。味噌や醤油の補充もしたいし……
よし。ソルダーヌちゃんの結婚式が終わったらヒイズルに行こう。そして買いだめツアーといこうじゃないか。特級純米生原酒も欲しいし。
『水操』
さあ二杯目いくぜ、がばっと麦飯に豚汁かけて。うっめ。そのままでも美味しいのに麦飯にかけると美味さ倍増だね。貴族のマナーなんて知ったことじゃない。ワイルドにいこうじゃないの。
「ガウガウ」
おっ、カムイも欲しくなったか。正直でよいぞよいぞ。
『水操』
「カース、私にもお願いできる? やってみたくなっちゃった。」
「もちろんいいよ。」
『水操』
ふふふ、上級貴族令嬢のアレクまでこの食べ方をするとは。人に話しても誰も信じないだろうね。レアな場面だぜ。
結局全員この食べ方をした。やっぱ汁物はご飯にかけるのがジャスティスだよなぁ。
「美味しかったよ。ご馳走様。村長やるね。」
「ほっほっほ。一人暮らしも長いからの。ところでカース殿よ。少々予定を変更したいのだがよいか?」
「予定? 何かあったっけ? もちろんいいけど。」
「なに、大したことではない。人間の国に遊びに行くという話があったであろう? あれよ。アーダルプレヒトが降りてくるのを待ちきれなくての。今回カース殿が帰る時に乗せてもらえるかの?」
二十年の前倒しは少々の変更じゃねーよ……でも面白そうじゃん。
「いいよ。大歓迎だよ。宿と飯は気にしなくていいからね。」
「ほっほっほ。甘えさせてもらおうかの。」
「えええええええええ!? 村長様が!? ローランド王国にいらっしゃるんですか!? ちょ、ぜ、ぜひベクトリーキナー卿の所にもいらしてくださいよぉおおおお!」
サンドラちゃんが錯乱してる。ベクトリーキナー卿って覚えてるぞ。魔法工学博士だったな。会ったことはないけど。村長と話が合いそうだよな。
「ふむ? よく分からぬが遊びに来いと言われればもちろん行くとも。何せ遊びに行くのだからな。」
「ぜひぜひ! 絶対来てください! 粒元体理論の研究を助けてください!」
粒元体か。原子や分子の話だったな。この村長なら案外あっさり完成させたりしてね。つーか今ってどこまで行ってんだろ?
「りゅう、げんたい? よく分からぬが助けが必要ならば助力ぐらいはするとも。あくまで遊びのついでにだがの。」
「はい! はい! ありがとうございます! あっ、カース君、ゼマティス卿だって大喜びするんじゃないかしら!?」
「あぁそうだね。間違いないと思うよ。」
そうだよなぁ。伯父さんだって今も魔法研究所で偽死汚危神の解析とかしてるんだろうなぁ。それに少しは本物の死汚危神も手に入ってるんだし。忙しいんだろうなぁ。
「面白くなってきたわね。王宮の法服貴族相手にはエルフと明かさない方がいいんでしょうけど、村長にとっては些末なことですわね。カースはどう思う?」
そういやそうだな。王都の動乱の恨みを忘れてない者は多いだろうし。
「遊びに行くわけだし揉め事は少ない方がいいよね。つーか村長、変化の魔法使うよね?」
「うむ。別人になって思う存分遊ぶつもりゆえな。姿形は変えた方が面白かろうて。」
決まりだね。そうなるとだいたいの予定を話しておくかな。
それにしても、村長ったら不変や普遍を好むエルフの筆頭格なのに。思いっきり革新的じゃん。自由に動くマリーを見て羨ましくなったか?




