195、カムイのおねだり
着いた。おっ、みんな無傷か。いやーよかったよかった。思ったより早かったしね。
「おかえり。全員無事みたいだね。」
「ただいま。ねぇカース、カムイが、ね……」
「ん? カムイがどうかしたの?」
ミスリルボードの真ん中で偉そうに丸くなってやがる。こいつも無傷か。カカザン相手にすごいじゃん。
「ガウガウ」
は!? エルフの飲み薬? いや、そんなの私に言われても……
「ガウガウ」
ネクタールでも神酒の欠片でもいいって? そりゃネクタールならあるけどさ。どうしたってんだ? もう少し詳しく教えてくれよ……
「ガウガウ」
あらら、カカザンが老いぼれてたの? あれじゃあ戦えないから回復させたいって? 無茶言うなよ……
その症状にネクタールは効かんだろ。神酒の欠片でも無理だし。あれは体を無限に治癒するだけだろ。
「ガウガウ」
じゃあエルフの飲み薬にしろ? あれに若返りの効果なんてあるのか? まあ村長に聞くだけ聞いてやるけどさぁ……
「村長ぁ、実はカムイがさ…………」
村長に説明するついでにアレク達にも伝えておこう。どうもカムイがわがまま言ったっぽいし。
「ほぅ、カカザンがのぉ。わずか一年で老け込むほどのことがあったか、それとも元より限界だったのか。儂の知る限り彼奴の年齢は百を超えておる。おそらく百五十までは達しておらぬだろうがの」
「エンコウ猿の寿命ってどれぐらいなの?」
そもそも魔物の寿命なんて全然知らないなぁ。ゴブリンとか寿命が短そうなイメージだけど。
「知らぬなぁ。我らとて蟠桃目当てに彼の地へ行くことはあるが、基本的に族長としか接することもないしの。見分けがつくのもカカザンぐらいのものよ。あぁ、その前の族長もいたのぉ。」
「魔物にしてはえらく長いね。でかい魔物とか長生きっぽいけど、あの大きさの割にすごくない?」
わずか二メイル程度のサイズで百歳超えか。大きさと寿命の相関なんて知らないけどなんだかすごい気がする。
「そうさの。儂が知る限りでも長命の部類に入るだろうの。で、エルフの飲み薬が欲しいのだったな。あれを飲ませて効果があるかは分からぬぞ? 確かに元気になることは間違いないが、かつての力を取り戻せるかなど窺い知れぬわ。」
「ガウガウ」
カムイ……
「それでもいいから欲しいって。どうせ放っておいても死ぬんだから自分と戦ってから死なせてやるって。」
カムイもわがままだなぁ。相手の事情などお構いなしだね。まっ、そこが妙にかわいい気もするが。いてて、噛むなよお前。
「くくくっ、狼殿は苛烈な御仁だのう。で、どうする? あれを実らせるにはカース殿が魔力を込めるしかないぞ?」
「そりゃあ構わないけど、いいの? 前だって使わせてもらったのに。イグドラシルに負担だったりしない?」
だって魔力を流し込んで無理やり身を結せてるわけだし? 私がたっぷり魔力を流すとロクなことがない気がするし。
「構わんとも。何が負担なものか。それに今回は我らにも利があるゆえの。」
イグドラシルと繋がってる村長が言うならそうなんだろう。信じるぞ?
「そう? それなら甘えさせてもらうよ。カムイ、お前からもお礼言っとけよ。」
「ガウガウ」
村長に向けてぺこりと頭を下げる。素直なところもあるじゃん。
「ほほほ、なにをなにを。結局苦労するのはカース殿だけだしの。では、行くとするかの。」
やるか……たぶんだけど、意外とあと少しで実は生りそうな気がするんだよな。なんせここに来るたびにこつこつ魔力を込めてんだからさ。まぁ、村長ががんがん使ってたら分からないけどさ。
そういうのもある種の横領か? そうでもないか。好きに使えるものを好きに使って何が悪いって感じだよな。
さあ、イグドラシルの目の前まで来たぞ。相変わらずここの周辺は根がぼこぼこしてて歩きにくいよな。
では……いくぜ。ゆっくりと錬魔循環をして……
我が心すでに空なり……空なるがゆえに……無!
ふぅ……九割ちょい込めてやったぜ。
やったか?




