177、村長の仕事
うーん……朝なのかな……アレクはまだ寝てる……
コーちゃんとカムイも……寝てるな。
『消音』
『浮身』
外に出てみよう。
うっわぁ寒ぅ。
もう春だけどさすがに早朝は寒いな。Tシャツとパンツのみでは。
『換装』
遠くの山がうっすら明るくなっている。私にしては珍しいレベルの早起きだな。
こんな時間の山って空気が静謐で澄んでそうなもんだけど……
全然そんなことないじゃん。血やら獣臭がそこら中から漂ってくるじゃん……
ちょっと歩いてみるか。
「おはよ。一晩中戦ってたの?」
疲れ切ったダークエルフを発見した。座り込んでいる。
「お、おお、魔王さん。そうなんだよ……助けに来てくれたのかい? ありがたい……特段厄介な魔物こそ来なかったけど、ちょこちょこ来てなぁ……あんまり休めなくて……」
違うけど、違うとは言いにくいじゃないか……
「まあ、そんな感じ。とりあえずポーション飲む?」
怪我はないけどバテバテみたいだからね。ちなみにこれは魔力ポーションの方。
「おお、これはすまない。人間のポーションはちょっと興味があったんだよ。いただくよ。どれどれ……」
へぇ、くっそまずいだろうに平気な顔して飲んでるじゃないの。ダークエルフの魔力ポーションはもっとまずいのか?
「ふぅ。ありがとう。なかなかよく回復するじゃない。人間もやるもんだねえ」
「それはよかった。ところでやっぱまだ魔物は来そうかな?」
「ああ、たぶんねえ。おそらくは村長のあれが終わるまでは来るんじゃないかな。イグドラシルの魔力は魔物にとっても魅力的なんだろうし」
「ふーん……」
結界を張って蠢く闇を滅するためのイグドラシルが魔物を惹き寄せるってのも皮肉な話だが、来るもんは仕方ないわな。
「でもさ、またここに戻ってこれたのは嬉しいな。昔の面影なんて全然残ってないけどさ」
「あー。故郷っていいもんだよな。」
ふるさとの山はもう言うことがない。ただただありがたい。みたいな詩があった気もするねぇ。ここはもう山の中だけど、それでも遠くに別の山は見えるしね。
「分かるかい。そこら辺は人間も同じなんだな」
「そりゃあそうだろ。いつまでも虫扱いしてんなよ?」
「はははっ、してないしてない。魔王さんがいるってのにするわけないだろ。人間みんなトモダーチ、ナカーマ」
急にカタコトになりやがった。ダークエルフジョークなのか?
「まあいいや。他の所もちょっとまわってくるわ。」
「おお。頼りにしてるよ」
ダークエルフほど魔法が達者なら全然問題ないだろうに。体力はエルフより低めなんだったかな。
うーん、いい日の出だね。遠くの山々の隙間から昇り出る朝日。なんか久々に見たかも。たまには早起きもいいもんだねぇ。
ぐるっと一周してみたけど、問題ないね。ダークエルフ達が疲れ切ってるぐらいかな。後で風呂に入れてやろうか。
ん!?
何か今……空気が変わった……ぴぃんと魔力が走った感じがしたが……イグドラシルの方からか?
おっ、村長が立ってる。終わったの?
「やあ村長おはよう。がんばったみたいだね。上手くいった?」
「おおカース殿。どうにかな。どうにか簡易的な結界を張るところまでは到達した。続きはまた明日だな。」
ほほう。結界とな。
「ちなみにイグドラシルと繋がるって聞いたけど、そっちはまだ?」
「いやいや、それは何の冗談か。そんなことできるはずがないだろう。エーデルトラウトヤンフェリックス様じゃあるまいし。」
あらら。つまりクライフトさんの冗談だったってことか。
「じゃあそのうちまたってことだね。がーんば。」
「くっ、精進するとも。だが、カース殿のおかげで安全は確保できた。これからは腰を据えて元のソンブレア村へと復興もできるだろう。本当に助かった。」
「どういたしまして。それなら昼ぐらいから宴会しない? アースドラゴンの肉があるよ。」
「なんと! カース殿が狩ったのか!? 久しく食べておらんぞ。それは楽しみだ。酒がないのが悔やまれるが。」
「少しなら出すよ。一人一杯ぐらいなら何とかなるかな。」
王都でたっぷり買ったけどすぐなくなるんだよなぁ。せめて卒業旅行の間ぐらいは持って欲しいところだが。
「おお、さすがはカース殿。何から何まですまんな。では昼まで休ませてもらうぞ。いささか疲れたのでな。」
「うん、おやすみ。あ、村長んち借りたよ。あの三人が寝てる。」
「おおそうか。もちろん構わんとも。では、後ほど。」
足元ふらふらじゃん。寝る前に風呂に入れてやるべきだったか?
さて、そうなると……昼までにアースドラゴンの解体を終わらせないとな。
まあ、朝飯食ってからでいっか。アレクが起きてから考えよっと。




