176、卒業旅行とは……
結局タンは一人一切れとなった。食べてみて美味しいと納得してもらったのは収穫かな。そうなると明日はアースドラゴンのタンにも挑戦できるしね。
おっ、ようやくダークエルフも集まってきたか。クライフトさんもいる。もうとっくに日は暮れてるよ。
「お疲れ。村長はまだ動けないっぽい?」
「んあー。ありゃあたぶん朝までかかるんじゃねー? それよりいい匂いさせてんじゃーん。まだ焼いてくれんだろー? 肉はたっぷりあるしよー。」
仕方ないなぁ。私はそろそろ腹いっぱいなんだけど。風呂でも入ってアレクとイチャイチャしてから寝たい気分なんだけど……
「いいよ。どんどん乗せてよ。ボア肉もまだまだあるからさ。」
「んあー、よーしみんな食おうぜ。わりーなカース。」
「大したことないって。まだ魔物の警戒するんだよね? がんばってね。」
「おー、たぶんなー。そのうち村長がどうにかしてくれるとは思うけどなー」
あー、今何かやってるもんな。イグドラシルと繋がるとかって言ってたか。化け物ハイエルフ村長状態になるんだろうか? あれって難しいんじゃなかったっけ?
まいっか。村長がんばれ。私はがんがん焼こう。
ダークエルフ達は交代で食事を終え、こんな時間から再び警戒体制へと戻った。食事中はちょっとしか来なかったみたいだけど、今からがまた大変なところだろうなぁ。夜に動く奴らとかいるし。頑張って欲しいね。
「ねぇねぇカース君。夜はどうする?」
スティード君が話しかけてくる。えらくワクワク顔じゃないか……
「僕は寝るよ。かなり疲れたからね。心眼の稽古はしないよ?」
「そっかー……」
えらくしゅーんとするじゃないか。スティード君だってかなり疲れてるくせに。どんだけ稽古したいんだよ……
「あらカース君たらえらく薄情じゃなーい? この村の危機なんじゃないのー?」
今度はサンドラちゃんか。とりあえず煽ってみようって顔してんなぁ……
「ダークエルフは一人一人が宮廷魔導士みたいなもんだからね。全然問題ないよ。何かあったら呼ばれるだろうけどね。」
「それもそうかしら。ところで今夜はどこで寝る?」
「あー、サンドラちゃん達は村長の家がいいんじゃない? 広そうだし。たぶん村長帰ってこないだろうし。僕とアレクは外で寝るよ。」
もちろんピラミッドシェルターにね。
「あら、それはいいわね。なら遠慮なくそうさせてもらおうかしら。村長様に一言ご挨拶したいところだけど、無理そうね。」
「それはまあ仕方ないね。僕からクライフトさんにでも言っておくからさ、気にせず使っちゃおうよ。」
勝手知らない村長んちだけどね。
「悪いわね。あっそうそう。悪いついでにお風呂入りたいわ。お願いしていい?」
おっ、サンドラちゃんたら贅沢だね。ふふふ、さては毎日風呂に入らないと耐えられない体になったかい?
「もちろんいいよ。あっちに出しておくから先に入っていいよ。」
「ありがとう。カース君とこのお風呂って最高じゃない? 王都に帰りたくないぐらいだわ。」
「なんせマギトレントだからね。あっ、そうだ。もしサンドラちゃん達がクタナツで大きな家を建てたらお祝いにマギトレントの湯船をプレゼントするね。」
先の話とは思うけど……
「あら。それは最高ね。楽しみにしてるわ。でも、家を建てるのはクタナツじゃなくてエデンかも知れないわよ?」
「どっちでもいいよ。どっちの場合でもプレゼントするって。」
「そう。楽しみにしてるわ。すっごくね?」
「はは、もちろんいいよ。」
ほほう。サンドラちゃんの中では楽園に就職するのもアリってことになってるのね。スティード君達にしてもクタナツで代官に仕えるなら下っ端からやり直しだけど、楽園に来たらいきなりリリスの直属、つまりナンバースリーになれるしね。三人のナンバースリー。なんか縁起がいいかも。
「カース君お先。いいお湯だったよ。ありがとう!」
「ふぃー、外であの湯船っていいね。最高だったよ。サンドラちゃんはもう少し入ってるって。」
スティード君とセルジュ君が上がってきた。
「それはよかった。村長の家はあそこの真ん中のやつね。ちょっと大きいから分かるよね。ダークエルフには言っておいたから。」
「うん。ありがとう。せっかく暗くなったから稽古したいところだけど……」
「もう寝ようよぉー。カース君だって今からお風呂なんだからさー。」
「はは、そうそう。明日に備えてしっかり休むのも稽古のうちだよ。おやすみ。」
「それもそうだけ。じゃあお先に。おやすみ。」
「おやすみー。お風呂ありがとうねー。」
せっかく暗くなったら稽古って。意味分かんないよねぇ。まったくスティード君は。卒業旅行を何だと思ってるんだい。
もっと遊ぼうぜ? うーむ、遊びに来てるはずなんだけど……これは魔境あるあるか? それとも私あるある? そりゃあ山岳地帯まで来てるだから魔物だらけでもおかしくないんだけどさぁ……
「カース、お風呂入りましょ?」
「あ、うん。そうだね。入ろう入ろう。」
どうかヤバい魔物が来ませんように……




