175、黒角猪の舌と頬
黒角猪のモモ肉を食べ、ヒレも食べ、背ロース、肩ロースを食べている最中にエルフ三人組の一人がやってきた。
「うぉーい兄貴ぃ! えらくいい匂いさせてるじゃん! これボアだろ!? アースドラゴン食わねぇの!?」
「もちろん食うさ。で、今夜の分ぐらい解体できたのか?」
「いや、すまねー兄貴。ようやく左の後脚を外せたところでな。まだしばらくかかりそうだわ。いい匂いがしたもんで先に言っとこうと思ってな」
ほほう。やっぱアースドラゴンともなると解体も一筋縄ではいかないか。
「それなら解体は明日にしてお前らの食うか? ちなみにお前らのうち誰かの魔力庫にちゃんと収納できるよな?」
「おお! 悪いなぁ兄貴! そうさせてもらうわぁ。収納は問題ないさ。傷むこともねー! そんじゃちっと行ってくるわ」
「おう。まあ慌てなくていいからな。」
ボアの肉は三人増えたぐらいじゃあ関係ないぐらいたくさんあるし。あいつらも昼から働きっぱなしで疲れてるんだろうしね。
こりゃ明日は私達も解体に参加した方がよさそうだな。今後アースドラゴンと戦う時の参考にもなりそうだし。
「アレク残念。アースドラゴンは明日になりそうだよ。」
「ええ、残念ね。でも目の前の黒角猪も食べきれないほどあるし、何より美味しいし。全然問題ないわね。」
「それもそうだね。あ、そうた。首とかスネの肉で何か煮込み系の料理作ってくれない? シチューとかカレーとかさ。」
「それいいわね。美味しそうだわ。今から作る?」
「いやいや明日でいいって。今は目の前の肉を食べようよ。」
「うふっ、それもそうね。うぅーん、これも美味しいわ!」
おっ、それはバラ肉だね。脂身が分厚いねぇ。焼肉のタレで食べたいところだがそんなもんないからなぁ。やはりミックス塩胡椒だな。あ、角煮にしてもいいかも。やり方知らないけど……
さて、それでは私がこっそりゲットしておいたタンを焼くとしようかね。ついでにホホ肉も。ちょっと端っこの方でトリミングしてから……
うーむ、ホホ肉は固いかな。薄めに切ろう……タンと同じぐらいに。
よし。ではいただきます。
おお……いいね。これは美味しい。私のミックス塩胡椒との相性もバッチリじゃん。他の部位より獣っぽさを感じるなぁ。魔物のくせに。ホホ肉いいね。
では次はタンを。
タン元は厚めに、タン先は薄めに切ってみたぞ。まずはタン先から……おほっ、こりゃ美味い! ちょっと固い気もするけど、程よい歯応えでもある。うーん味わい深いねぇ。リモンは欲しいなぁ。ドワーフから何個か貰っておけばよかったよ。
では次、タン元いこう。おっほ、これもたまらんね。ジューシーで柔らかい。歯応えがありつつ柔らかいとはね。同じ舌でこんなに違うとは。これは大当たりだわ。独り占めして正解だったかも。
だってみんなタンを見て嫌そうな顔してんだもん……アレクは食べられるけど好んで食べたくはないって感じだったしね。
「カース、どうだった?」
「いやぁ、すっごく美味しかったよ! まだ少しあるけど食べる?」
聞かれたからには一応勧めておかないとね。
「うーん、じゃあ一切れだけいただくわね。」
はは、気を遣わせてしまったか。ではタン元を。これを半分ずつ食べようね。
ミックス塩胡椒ふりふり、っと。
さあ焼けたかな。半分に切ろう。
「はいお待たせ。半分ずつ食べようね。」
「ええ、ありがとうカース。いただくわね。」
おほっ、やっぱ美味いっ。先に食べておくべきだった気もするが、後からタンでもまあ悪くないよね。ヒレやロースだってまだ残ってるし。
「あっ、美味しい……」
「ねっ、美味しいよね。」
アレクはブラックブラッドブルのタンだって食べたことあるんだからさ。そりゃあこのタンだって美味しく感じるだろうよ。
「えっ、アレックスちゃんそれ美味しいの!?」
ふふ、好奇心旺盛なサンドラちゃんがようやく食いついてきたか。私が美味しそうに食べてるのを見ても無反応だったくせに……
「ええ、歯応えはあるの一度歯を入れるとサクッと切れてジュワッと旨みが溢れてくるわ。残りわずかみたいだけどサンドラちゃん達もどう?」
「食べるわ!」
「ぼ、僕も!」
「じゃあ僕も。」
結局みんな食うんかい。さては私の舌を信用してなかったんだろ。
アレクの舌が信用できるのは間違いないけどさぁ。まったくもう……




