169、翠土龍
「兄貴ぃ! 助けてくれ! やべぇんだ!」
おろ? 自称舎弟エルフの一人が飛んで帰ってきた。まだ五分も経ってないのに。
「おう。どうした?」
「やべぇよあれ! アースドラゴンだぁ! ぜってぇやべぇって!」
マジかよ……困ったな。とりあえず行くしかないな。ここにいるダークエルフが全員でかかれば勝てるだろうけどさ。
「カース、私が指揮をするって話だったわね。だから言うわよ。カース、好きに動いて。私とセルジュ君は邪魔にならないよう遠くから援護するから。何かあれば伝言をちょうだい。」
「ええっ!? 僕も行くの!?」
いつの間にやらセルジュ君も近くに来てた。
「分かった。音には気をつけてね。」
「ええ。行ってらっしゃい。」
そしていつものように頬へチュッと。やる気が湧いてくるぜ。
行くよコーちゃん。
「ピュイピュイ」
『浮身』
『風操』
北へ。あっち方面は森が深いんだよな。
いた。イグドラシルから北にわずか二、三キロルってとこか。
外皮は濃い緑色。四つ足歩行だが前脚がやけに細い、その代わりなのか後脚はやたら太い。あれで踏まれたら即死だな。
背びれなんかはないけど、どことなくトリケラトプスっぽくもあるな。角はオーガのように二本だけか。あれで剣なんか作ったら最高だろうなぁ。
『消音』
こいつの魔声が危険なのは知ってる。いつぞやなんか魔声一発で百匹のワイバーンを落としてたもんな。
舎弟エルフの二人が魔法を撃ちまくってる。あれは……『爆裂球』と『豪炎斬』とかだっけ? 派手にやってるが……
『兄貴ぃ! 来てくれたんかぁ!』
『こいつ堅すぎんよぉ!』
『狙撃』
挨拶代わりに撃ち込んでみたけど、やっぱ無傷か。アースドラゴンといえばドラゴンの中でも防御力最高クラスらしいからな。
ぐほっ、早速魔声を使いやがったな? 音は聞こえないけど空気がびりびり震えやがるじゃないの。
『もうすぐアレク達も来るから一緒に陽動や援護を頼むわ。』
『よっしゃあ!』
『分かったぜ兄貴ぃ!』
『狙撃』
ほぅ……やるなぁ。今のは目を狙ったんだが、タイミングよく瞬きして防ぎやがった。たぶん偶然じゃないんだろうな。
正直なところ勝ち筋は見えている。接近できればほぼ勝ちだ。
勝ちなんだけど、どんな隠し玉があるか分からないもんだからさぁ。迂闊に近寄れないんだよな。
だが、一つ分かったことがある。
こいつは他のドラゴンと違って体表付近に魔力無効空間がないな? 目を狙ってちゃんと目に当たったんだからさ。
くっ、懲りずにまた魔声かよ。消音を使ってるから効かないけど、衝撃だけは来るんだよな。
となると、こいつの正面には回らないように気をつけないと……カムイもよく使う収束タイプの魔声は危険だからな。
そしてドラゴンを相手にする時、最も警戒しなければならないのが……
ほらきた!
『氷壁』
やっぱブレスだよな。数キロル離れてる時は魔声を警戒し、数百メイル圏内に入ればブレスを警戒する。
龍の息吹ことブレス。お前達人間が使う魔法なんて数が多いだけで小賢しい。俺達ドラゴンはこれ一発だけで全てを終わらせてられるんだぜ? とでも言わんばかりの馬鹿げた威力……
今のはただの全方位ブレスだから避けることは不可能でも氷壁なんかで防ぐことはできる。自動防御は張ってるけどさ。
これが収束ブレスともなると、まず防御は不可能だろう。ジュダのアンチマテリアルライフルとやらよりえげつない威力してんだろうさ。
だから顔の正面に回るのはまずい。横か後ろから回り込まないとな。
数百メイル圏内に入ればブレスを警戒する……
では数十メイルまで近寄れたら?
おっと、危ない。音が聞こえないから反応が少し遅れちゃうんだよ……
凶悪な尻尾の一撃がさ。いくら私の自動防御でも一発で叩き壊されるだろうな……
顔の正面付近はブレスがやばい。
後ろは広範囲に渡って尻尾がやばい。
となると、横か真上だな。
てことは狙うなら横、つまりバイタルゾーンだな。
奴に何か隠し玉があったとしても、使わせないほど速攻で仕留めればいい。
そうなると……アレクのあれが欲しいな。でかい魔物ほどアレクのあれはよく効くからな。
そろそろ近くに来る頃だが……




