168、解体解体また解体
さて、イグドラシルの北側へとやってきたぞ。戦闘は行われてないか。みんなで解体してんのね。
「あっ兄貴ぃー! 来てくれたんかー!」
「少し落ち着いたからさー! 欲しい魔物がいたら好きに解体していいぜー!」
「見張りしててくれてもいいんだぜー?」
おや、エルフ三人組ではないか。ここにいたのね。
「じゃあ遠慮なく貰うわ。」
といっても特に欲しいものなんてないけどさ。見慣れない魔物ばっかりだからさぁ。そりゃあ魔石は欲しいけど、その場合はガチで解体しないといけないんだもん。さすがにそれは面倒だ。
「セルジュ君よかったら貰っておけば? いい小遣い稼ぎになるかも。さっきいくらかは収納したとは思うけど。」
「そうだね。なら遠慮なくいただくね。なんだか上手いことカース君に動かされてる気がするけど。」
「あは、そう? まあいいよね。」
この際だから私は丸ごと収納しておこうかな。ギルドに丸ごと売るのも悪くないもんね。
あっ、よく見れば鹿系の魔物がいるじゃん。これはゲットだな。
ほう、刺裂角鹿か。いいねぇ。浄化してからゲット。
三匹だけにしておくか。エルフ三人組も多少は持って帰るだろうしね。
さて、そうなるとやや暇だな。解体は面倒だからしたくないし。
「アレク、そこら辺を散歩しない? 見回りがてらさ。」
「いい考えね。でもカース、魔法を使っちゃだめよ?」
「あはは、分かってるって。歩くだけだよ。」
今はせっかく魔物が落ち着いてるしね。下手に魔法を使うと呼び寄せることになっちゃうもんね。
セルジュ君は……一生懸命解体してるじゃん。美味しそうな魔物でもいたかな?
北側をぐるりと歩いてみるが、魔物の気配はない。近隣の奴らはもう全部集まってしまったってことか? それなら今しばらくは問題ないかな。今度は血の匂いに惹かれて来る奴らはいるだろうけどは。
「特に問題なさそうだね。戻ろっか。」
「ええ。きっとカースの威光に魔物達も恐れをなしてるんだわ。」
そんなわけあるかーい! アレクったらもう。
「そうかもね。でも、たぶんまた来るからさ。しっかり備えておこうね。」
「ええそうね。私としてはセルジュ君の戦い方が気になるもの。魔物には来て欲しくないけど来て欲しくもあるわね。」
おお、それは私も少し気になるな。セルジュ君て接近戦だと槍を使うんだけど魔法だけならスティード君より上だもんね。
解体を済ませたエルフ三人組やダークエルフに浄化をかけてやり、しばしの休憩。周辺も同じくきれいにしておいた。この程度の魔法なら寄ってくるとしても近隣の魔物ぐらいだろう。
「さっすが兄貴ぃー。すっかりきれーになったじゃん」
「解体って臭ぇーもんなー」
「まあその代わりうめぇ肉が食えるから文句ぁないんだけどさぁー」
「お前らこそ手際いいじゃん。相当やり慣れてんな。」
当たり前か。もう何十年とやり続けてきたことなんだろうからさ。
「へへっ、まあなぁ。どんなもんよぉ。」
「兄貴はそこらへんどうだい? 自信のほどは?」
「ちっと見てみてぇなー」
嫌だよ……
「自信なんかあるわけないだろ。人並み程度の腕しかないっての。」
何より面倒だし……今は解体なんて面倒なことやる気分じゃないの。
「またまたぁー。そんなこと言って本当はスパッと一瞬でやっちまうんだろぉ?」
「見てみてぇなー? 兄貴の早業をよー?」
「よーしそんならさぁ、次ぃ何か魔物が来たら兄貴やってくれよ。何ならとどめ刺す前に解体してくれてもいいし」
「できるわけないだろ……」
フェルナンド先生じゃあるまいし。
解体って大抵は魔物を吊るしてやるけどさぁ、あれがぶらぶら動くだけでもやりにくいんだぞ? 知ってるくせに。
だから私が解体する時は『浮身』で吊るすけど『金操』も併用して動かないようきっちり固定するからね。
「えー!? 兄貴なら絶対できるだろー?」
「そうそう。こーさぁ、スパッとさぁ」
「うちらの村長の耳もスパッと斬ったんだしぃ?」
一緒にするなよ……
「無理なもんは無理だって。そりゃあ後先考えずにただバラすだけならできるだろうけどさ。」
それ絶対解体じゃないよな。ただの虐殺だよ……もったいないお化けが出ても知らんぞ?
むっ、この感じは……
「大物の匂いかー?」
「どーれどれ……『魔力探査』……おっ、でけんじゃねぇ?」
「どうだい兄貴ぃ? やるかい?」
「やらねーって。疲れてんだからさぁ。お前らなら楽勝だろ?」
「仕方ねーなー。兄貴の戦いぶりが見たかったんだけどさぁ」
「まあいいや。俺らが勝てなかったら兄貴頼むぜー?」
「期待してるからよー」
行ってしまった。大物なのかもね。
なんというか、そのエリアのボス級の大物が現れる時ってザコ魔物は一切姿を見せないもんなぁ。さっきまでの魔物が全然いない感じ、大物登場前の雰囲気だったもんなぁ。
まっ、問題ないだろ。私は呑気にアレクやセルジュ君とお喋りをするだけだ。うーんいい天気だねぇ。




