149、流光の太刀
鍔迫り合いは拮抗している。私より身長の高いスティード君が押さえつけてくる圧力は……抵抗するだけで精一杯なんだけど……
スティード君らしくもない、機を伺ってるんだろうか? いつでも仕留められるって余裕こいてるわけじゃあるまいし。
私の方は打つ手なし、と言いたいところだがあるにはある。定番のあれが……
「スティード君……サンドラちゃんのあの秘密知ってる?」
「えっ!? どの秘密!?」
ふふ、泥酔してるはずなのに声がマジだ。この距離なのに顔は見えないが少しは効果ありか。
「いつだったか王都でたまたまサンドラちゃんと飲んだ時に話してくれたんだけどね? 聞いてない?」
「えっ!? い、いや知らないよ!?」
そりゃあそうだろ。そんな覚えはないんだからさ。大昔にサンドラちゃんと二人でお茶したことぐらいはあるけど、王都で二人で飲んだことはないねぇ。
「あー、聞いてないんなら言いにくいなぁ。いや、それが実はさぁ……」
「じ、実は?」
隙あり! わずかに剣が緩んだ!
くらえ!
ぐうう……マジかよ……めちゃくちゃ痛ぇぞ……
顎に強烈な一撃を食らったのか? 歯が折れたらどうするんだ……
だが、私の方も手応えはあったぞ?
「げっほ、げほ……うげぇ……はぁはあっ、はぁ……ふぅ……参ったよ。さすがカース君……とっさに膝で迎撃したけど、たぶん顎に当たったよね? 膝も痛いんだけど……」
「痛くて喋れないからここまでにしようよ……反省は傷を治してもらってからで……」
『闇雲解除』
まあ解除しても薄暗いんだけどね。あー痛い……唇も切れてんな……
ふぅ。やれやれ。舎弟エルフに治してもらった。歯も特に問題なかったし。
「参ったよ。たぶんあれって無尽流『流光の太刀』だよね? 嫌なことしてくるなぁ。」
スティード君とは身長差があるからね。木刀や剣の尻の部分、柄頭を突き入れる流光の太刀はやりやすいんだよね。押さえつけてくる力を上手く流すと柄頭が上がるからね。
あれで顎を跳ね上げてもいいんだけど身長差があるしね。だから鳩尾を狙ったんだが、どうやらきっちり入ったらしい。
「でもスティード君だってよくあそこから反撃したよね? 流光の太刀だから顔を狙うには正面下からしかないのは分かるけどさ。」
木刀を振り上げたような態勢で柄頭を突き入れるわけだからな。胴体は無防備だし。よく顎なんてピンポイントで狙えたもんだわ……
「さすがに偶然だよぉ……とにかく反撃しないとって思ってさ。とっさに右膝を出しただけだもん。」
「ちょいちょい兄貴ぃー! 二人だけで納得してねぇで俺らにも教えてくれよ! 大体の動きは分かるけど正確に見えたわけじゃねぇんだからさぁ!」
むしろなんで大体分かってんだよ……腐ってもエルフか。
「じゃあスティード君、反省も兼ねてもう一回ゆっくりやってみようか。同じ流れでさ。」
「いいね! 勉強になるよね!」
ほう……前半のスティード君はそう動いていたのか。やっぱすげえな……
で、後半。ここから鍔迫り合いに入ったわけだ。
「不思議なんだけど、どうしてスティード君はここで待ちに入ったの? 吹っ飛ばすなりもっと押さえつけるなりすればよかったのに。」
「いやぁ……何をしてもカース君に返されそうな気がしてさぁ。つい慎重になっちゃったんだよねぇ……」
それはないぜ。技も力もスティード君の方が上なんだからさぁ……
「僕としては打つ手なしだったからさ。口車でも使うしかなかったよ。」
「そうなの!? カース君っていつも余裕じゃん!? さっきだってサンドラちゃんの話するぐらいだし……」
それが口車だよ……
「そうだったの!? 僕もまだまだだなぁ……」
「むしろあの隙をついても勝てない僕がまだまだだよ。」
そりゃスティード君相手に引き分けなら上等すぎるけどさ。
よし、反復終わり。なかなか興味深い動きだったね。
「ほぇー、そんな動きしてたんかぁ。兄貴も人間もすげえなぁ」
その言い方だと私が人間じゃないみたいだが……
「それにしてもさぁ。カース君の流光の太刀って鋭いよね。普通あれって突進からの打ち下ろしを防がれた流れで打ち込むものだよね? それを止まった状態から突き入れてあんなに威力が出るなんてさ。かなり強くなってない?」
おっ、そう? えらく嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
「そう? 普段から両手足に重いのを装備してるからかも。」
今は全部外してるからね。全身がすっごく軽い。それでようやく引き分けなんだからなぁ……
「えっ!? 何それ!? 見せて見せて! どんなの!?」
あれ? 話したことなかったっけ?
ならば見せるだけでなく……




