105、勃発!スティードvsリリスの右腕
よし。特に何事もなく通過。途中で寄り道したくはなったけど、安全第一でスルーしたしね。今やだいぶ小さくなってしまったスティクス湖とかさ。
岩石エリアも通過し荒野エリアも通過すると、楽園は目の前だ。
見えた。およそ二ヶ月ぶりの楽園。特に問題はなさそうだが……
魔王の館、玄関前に着陸。両サイドにあるコーちゃんの銀湯船とカムイの小屋はもちろん健在だ。
「楽園にようこそ。まずは中でゆっくりしようか。」
「すごいわね……こんな魔境のど真ん中に……城壁もすごいし、もう訳が分からないわ……」
「サンドラちゃん、だってカースだもの。」
「そ、そうね。カース君だもんね……」
それで納得するんかい。
「それより僕は散歩に行きたいな。あの城壁の上を歩きたいよ。」
スティード君はアクティブだなぁ。着いたばっかなのに。
「あ、僕も行きたい。絶対いい景色だよね!」
セルジュ君もか。元気だなぁ。
「仕方ないわねぇ。それなら私も行くわよ。」
結局サンドラちゃんもかい。
「あ、それなら先にここの代官に紹介しておくからさ。それからにしようよ。」
「リリスさんだよね。一時期領都の屋敷にもいたよね。」
おっ、スティード君よく覚えてたね。では中に入ろうか。
「ようこそ魔王の、おおっ!? ま、魔王かよ! やっと戻ってきやがったかあ!」
いきなり出くわしたのはシュガーバ。二ヶ月前から楽園に預けてたんだよね。何やら荷物を運んでるっぽいな。
「ようシュガーバ。元気そうじゃないか。リリスはいるか?」
「あー、新館の方にいるぜえ。呼んでくるかあ?」
「いや、それならいいわ。今回は特別な客が三人ほど来てるから紹介しておきたくてな。お前もよく覚えとけよ。この三人だからな。」
「へいへーい。っかぁー、魔王のツレだけあってヤバそうな面子そろってんなあ?」
おっ、分かる? やるじゃん。
「一応紹介しておくね。こいつシュガーバって言うんだけど南の大陸から付いてきちゃった奴なんだよね。今はリリスの右腕にしてやろうと思ってここで修行させてんの。近距離ならスティード君の敵じゃないけど百メイルぐらい離れてると厄介な奴だよ。」
「ちっ、やっぱそういうタイプかよ。まあせいぜいゆっくりしていけやあ」
「それは気になるよカース君。彼がどんな手腕を持ってるかさぁ。カース君にそこまで言わせるなんて気になって夜も眠れないよ?」
おや? スティード君にしては珍しくむきになってない?
「ほぉーう、お客様よお? オレの腕前が気になるんですかぁい?」
「気になるとも。大した魔力を感じないのに百メイルも離れた所からどんな攻撃をするのか、ね。」
実際は五百メイル離れてても矢が届くんだよなぁ。えげつない威力の矢が……
「おーいどうすりゃいいんだあ魔王よお? こんな近距離じゃあ勝ち目ねえし。だからって離れちまったら殺しかねねえぜえ?」
うーむ、珍しくスティード君がむきになってるなぁ。
「じゃあ模擬戦でもやる? 場所は、そうだなぁ……城壁の上でどう?」
「面白そうだね。でも僕に有利すぎない?」
「おいおい、言ってくれるじゃねえか。こりゃあやるっかねえなあ?」
ルールも説明してないってのに、二人とも気が早いなぁ。
「距離は百メイル離れてもらうよ。で、シュガーバはかすり傷でも負わせたら勝ち。スティード君は十メイルまで近寄ったら勝ち、でどう?」
「面白そうだね。避ける場所の少ない城壁の上でその条件。燃えてくるよ。」
「それガチガチに守られたらどうすんだ? 矢が切れたらオレの負けだろお?」
「盾も鎧も使わないよ。そして一歩でも後ろに下がったら僕の負けでいいよ。」
スティード君たらマジでむきになってない? 剣士の血が騒いでるのか?
「じゃあそれでいこうか。では移動しようか。」
「オレは北東の角におろしてくれやあ。それ以外は任せるからよお」
ほう。シュガーバめ。何か計算でもあるのか?
到着。北東の角にシュガーバを降ろした。ん? 城壁に何やらポールみたいなのが突き立ててあるが……これが北東を選んだ理由か?
スティード君はそこから西に百メイル地点に降ろした。残る私達は上空から見物だ。流れ矢の心配は……しなくていいや。見たところ近くに誰もいないし。
おっ、シュガーバの奴いきなり撃ちやがった。なるほどね……あのポールは弓みたいなもんか。弦は自前のミスリルを使ってるわけね。
それにしても、夜ならともかく昼間だと矢なんて隠しようがないだろうに。スティード君に有利すぎたかな? さっきからあっさり叩き落としてるし。あの矢は結構な威力だと思うが……




