103、メイド長マーリンお袋の味
結局狼ごっこはマーリンが来るまで続いた。正確には玄関を通るマーリンの気配に気づいたコーちゃんがゲームをやめるまで。
なお、勝率もコーちゃんが圧倒的だった。いくら広くても建物に遠慮して動く私達では勝負にならないよね。面白かったからいいけどさ。
「んまぁ旦那様! お嬢様も! お帰りなさいませ! んまぁああご立派になられて! よくぞご無事で! お待ちしておりましたよ!」
んぷっ、マーリンの豊満な腹に抱きしめられた。温かいねぇ。
「ただいま。今日の昼と夜、マーリンの料理を楽しみにしてるよ。」
「ただいま。マーリンが元気そうで何よりだわ。」
「任せてください! たっぷりとご用意いたしますからね!」
いや、量はそんなにいらないんだけど……でもまあいっか。
「あとマーリンもダムートンも一緒に食べようよ。久しぶりなんだしさ。」
「ええ、ええ。かしこまりました! 今日は楽しくなりそうですね! 今から作りますからね!」
ふふ。マーリンが嬉しそうで何よりだよ。
それからもう少しだけ狼ごっこをしていたら、スティード君達が戻ってきた。
軽く室内に風を通し、それから『浄化』をかけたらいよいよ昼食だ。
大皿がいくつも運ばれてきた。何かの煮物かな。こっちはサラダか。おお、肉じゃがっぽいのまであるじゃん。変形ポトフか?
そしてたっぷりの麦飯。貴族の食卓に出すようなもんじゃないけど、私結構好きなんだよね。
「美味しそうだね。じゃあみんな食べようか。いただきます。」
みんなも口々に食前のいただきますをして、思い思いにフォークをのばす。私は箸を使うけどね。化け物ハイエルフ村長に作ってもらったエルダーエボニーエンツォ製の箸。これだけで危険な武器にできるよね。
うん、うまい。調理時間は二時間もなかったと思うが、よく味が染みてるよなぁ。サラダはパリッとしてるしドレッシングも程よくスパイシーで美味しい。
そしてお待ちかね麦飯。こいつに肉じゃが風ポトフをかけて……うっま! ちょっと下品だけど知ったことではない。超うまいんだから。
ほら、セルジュ君も真似してるし。スティード君も。ねっ? 美味しいよね?
サンドラちゃんからは変な目で見られたけど、私は気にしないとも。アレクからはそんな目で見られなかったし。でもアレクは真似しなかったけど……
「ガウガウ」
おおカムイ! お前なら分かってくれるよな! この美味さが。よーしよし。すぐに用意してやるからな。
「ガウガウ」
しっかり混ぜろだとこの野郎? 贅沢な奴め。まったくもう。まあ確かにこの方が美味いかもね。
ふぅ。腹いっぱい。ちょっと限界近くまで食べてしまったな。だって美味しすぎるんだもん。
「ご馳走様。最高だったよ。もう何も入らない。だから食後のお茶はなくていいよ。僕はね。」
「僕も、入りません……」
「僕もだよ……すっごい美味しかった……」
スティード君もセルジュ君も満腹だね。あー苦しい……
「じゃあ私とサンドラちゃんだけちょうだいな。」
「ええ、かしこまりました。ここまでたくさん食べていただいて光栄ですわ。」
コーちゃんは昼から酒飲んでるしカムイはあんまりお茶飲まないもんな。それにしてもうぅー、腹が苦しい……マジで食いすぎた……麦飯ポトフがするすると入ってしまったんだもん……
「ところで昼からは買い物に行こうと思うんだけど、別行動するよね? 僕とアレクはそんなに買う物ないからさ。」
「あらカース、私はあるわよ? というかサンドラちゃんと二人で行きたい所があるんだけど?」
「あら、そうなの? じゃあ僕らは三人で動こうか。もう少し休憩してからで……」
「賛成……ちょっとしばらくは動けそうにないよ……」
いかんなスティード君。近衞騎士になろうという者がそんな様では。
「僕も……むしろ庭でごろんと転がってたいよ……」
おお、セルジュ君名案。
「それいいね。そうしようよ……日向ぼっこしながらごろ寝しよ……」
「じゃあ私達は先に出るわね。」
「うん。気をつけてね。」
カムイ、頼むぜ。
「ガウガウ」
何ぃ!? お前も昼寝したいんか! くっ、ならばコーちゃん。頼めるかい?
「ピュイピュイ」
おっ、ありがとね。するっとアレクの首に巻きついた。ボディーガードという点ならカムイもコーちゃんも変わらない気がするんだけど、抑止力って目で見るとやっぱカムイなんだよなぁ。でも危険予知の面からするとコーちゃんだろうか。二人とも頼りになる相棒だよねぇ。
「あら、カムイはお昼寝かしら? じゃあコーちゃんよろしくね? サンドラちゃん行こっ。」
「ええ。じゃあカース君、また後でね?」
「行ってらっしゃーい……」
「後でね……」
「気をつけてね……」
絶対ナンパされまくりだろうけど、まあアレクなら大丈夫だろう。
よし、では庭に出ようか。どこか横になるのにちょうどいい場所はあるかな?




