100、領都の発展
クタナツ南門まで馬車で送ってもらい、外へ出たらミスリルボードへ。
ここから領都へは西に四百キロルぐらいだっけ? 本気で飛ばせば三十分とかからないけど、もう気分は卒業旅行だからな。お喋りメインでのんびり飛ぼうじゃないの。
「あ、そういえばさ。昔スティード君がうちの壁にサインしたじゃない? 王国最強の騎士って。」
「う、うん……」
「あの家って今楽園にあるんだよね。だからクタナツの六等星クラスに結構見られてるっぽいよ。」
「えぇ……それは勘弁してほしいなぁ……」
「でも近衞騎士にはなれるんだし、似たようなもんだよね。すぐだよ、すぐ。」
「全然すぐじゃないよぉ……」
そりゃそうだ。
「あはは、でもきっとそのうちしれーっと王国一になってそうだよね。次の王国一武闘会だってもちろん出るよね?」
また五年後か。
「そうだね。まだ王都にいたら出たいよね。あっ! カース君こそ絶対出てよ!? 絶対だよ!?」
「あはは、僕も王都にいたらね。」
でも五年後となるとキアラが大人の部に参加してしまうんじゃない? 嫌すぎる……強く大きく成長したキアラとマジの対戦をするなんて。
まっ、さすがに心配しすぎか。来年の話をすると鬼が笑うというが、五年後の話をすると誰が笑うんだろうね?
「それはそうと領都って今すごく発展してるそうじゃない? 街がどんな風に変わったか楽しみだわ。」
「街の中はそんなに変わってないと思うよ。せいぜい新しい建物が増えたぐらいじゃないかな? あ、人口はかなり増えたっぽいね。」
店で扱ってる商品が質と量ともに増えてるような気もするけど、まだあんまり見てないからなぁ。
「あら、そうなのね。じゃあ着いてからのお楽しみね。領都には何日ぐらい滞在する?」
うーむ、さすがサンドラちゃん。鋭い質問だな。どうしようかな。旅行の日程が十日だとするとあまり長く領都に滞在するのもなぁ……そもそも旅行に必要なものを買いに来ただけでもあるしなぁ。
「とりあえず一泊だけにしておこうか。今日のところは各自が必要そうな物をあれこれ買い物するとして、それが終わったらうちでゆっくりしよう。で一泊して明日は適当に遊んでから出発ってとこでどう?」
「いいわね。私領都の演劇も見てみたいと思ってたの。アレックスちゃんも行かない?」
「そうね。私も見たいわ! 今日明日は何をやってるのか楽しみね!」
それなら私も行こうかな。演劇は嫌いじゃないし。
「あれ!? ねえカース君、あれって橋!?」
おっ、セルジュ君たらさては『遠見』を使ってたな? ノード川はまだ先なのにさ。
「うん、そうそう。あそこに橋をかけて大きな街道を作ろうとしてるみたいなんだよね。」
前回ちらっと見たけど、まだ半分ってとこなんだよね。川幅は狭いとこでも五百メイルぐらいだからよく作ってる方だよな。着工からまだ一年ちょいだよな? 辺境伯のおっさんやるよなぁ。
「へぇー、すごいね! あれだけの川に橋をかけるなんてさ。ムリーマ山脈トンネルの件もそうだけど今フランティアってほんっと熱いよね!」
「四月から官僚になるセルジュ君としては気になる所かな?」
「いやいや官僚じゃないし! 下っ端役人だし! でもすごいよね。国が動くってこういうことなんだろうね。魔境への進出が百年も停滞してたのが嘘みたいだよね!」
それは私もそう思う。動く時って一気に動くもんなのかねぇ。
「うわぁ、すごいわ! あんなに広い川なのに! もう半分ぐらい橋がかかってるじゃない! あれかなり太くない? 見たところ大型の馬車が四台は並走できそうね。」
肉眼で見えるところまで来た。ここまで来れば領都はもうすぐそこだな。それにしてもサンドラちゃんの目はシャープだね。
「川の中に柱を建てるのってどうやるんだろうね? 全然想像つかないよ。」
おっ、スティード君にしては珍しい質問だね。ならば答えてあげようではないか。
「実は僕とアレクね、あそこの一つ目の橋脚を建てる時ここに来てたんだよね。ちょうど辺境伯閣下もいてさ。だからバッチリ見てたよ。」
大まかに説明するぜ。深く掘ってからかなり大きな岩を埋めて固めたって感じだよね。水面より高く積み上がるまでは途中でやめられないのが辛いところだよね。私達は途中で帰ったけどさ。
「ふわぁ、そうなんだ。あんなにも大きな岩を埋め込んであるんだね。かなりすごいよね。やっぱり領都の魔法部隊も凄腕なんだね。」
スティード君は領都の戦力が気になったかな。さすがに宮廷魔導士には敵わないよなぁ。
「領都が見えたわ。何度か立ち寄りはしたけど中でゆっくりするのは久々ね。私も楽しみになってきたわ。」
だよねー。私もアレクも送迎とかでちょっと来ることはあっても自宅でゆっくりするのっていつぶりだろ? 下手すりゃ一年ぶりとかじゃない? 南の大陸に行く前なんだからさ。
さぁ、懐かしき領都が見えてきた。うわぁ、やっぱ城門付近はめちゃくちゃ混んでるじゃん。これで橋が完成したらどうなってしまうんだろうね?




